某日 ネット新聞の記事 三
【松ヶ谷高校野球部に関する調査が始まる】
試合中に三年生投手、石川繭二郎が倒れたことで、学校側の生徒達に関する管理運営の仕方に問題があったのではないかとして、
八月十七日、県警が天布山に入山。調査を開始した。
この際、野球部宿舎に勤務しているスタッフが調査を妨害したために数人が逮捕された。
天布山。その名の通り、山で行われている松ヶ谷高校野球部の活動は、長きにわたる間、厚いベールに包まれていた。
しかし今回の調査によって一部ではあるが、俄には信じられない暴行事件の数々が明らかになったのである。
彼らの部活動の実態とは……
生徒達は日常的に、教員や先輩はもちろん、一部関係者からも暴行を受けており、痛みと恐怖によって徹底した管理下に置いて理性を失わさせ、
野球以外のことを考えさせないよう洗脳に近い管理をしていたことがわかった。
現在、これらの行為が卒業生含む生徒達の、怪我の多さや、脳梗塞といった症状と関係どう関係するか、調査が進められている。
生徒達は厳しい管理下に置かれ、脱走しようとするもの、内部告発しようとするものには、『スタッフ』と呼ばれる従業員が、
刺股と催涙スプレーで鎮圧するような行為が日常的に行われていたとされる。
以前この山で従業員をしていたとされる男性は我々の取材に応じ、
「『クマよけ』と評された刺股とスプレーは、人間に使われていた」と話していた。
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天布山で練習を行っていた松ヶ谷野球部のしきたりは、独特で厳格であり、
一学年に一人が選抜され、特に厳しい訓練と洗脳教育を受けさせられていたことがわかった。
具体的な洗脳方法などは不明だが、選抜された投手には、とある選手(具体名は不明)をモデルに、
その選手になりきるよう強度の強い洗脳教育と訓練が施された。
その半分が投手。時々、キャッチャーが選抜される時もあったという。
関係者の話によると四年に一度、選手は選抜されない年もあったらしいのだがこの年が一番最悪で、この年はスタッフの選抜が行われていたという。
その男は必ず、身寄りのない中年男性が選ばれ、該当する人間が見つかったら山に連れて来られる。
そこで『教習』という名の洗脳が施され、自らを『古谷』と名乗るまで山奥の独房から出されなかったという。
洗脳が完了した男は独房を出され、強面の用務員『古谷』として宿舎のスタッフとなり、生徒達を監視する役割が与えられ、体罰、粛清係を中心に行い、
二十四時間、三百六十五日休みなく業務を行わせていたとされる。
この『古谷』への『教習』は想像絶する物のようで、選抜された男が独房から出てきた時には総白髪になっていたとされる。
古谷の数は、全体で五人になるよう常に調整され、肉体的に弱くなってきた古谷は処分されたとされるが、
処分された古谷の行き先は未だ不明である。
現在警察は、『古谷』に対する取り調べを進めているが、彼は自身の容疑、山の上で行われていたとされる事態の全てを否認している。
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追記。
重要、機密事項により、情報の扱いには厳重注意されたし。
現在勾留中の『古谷(仮称)』が、点呼の時間に現れなかった事により、脱獄の可能性があるとのこと。
現在警察は、動員体制が甲号の調査を進めている。
追記 二
古谷の独房から、大量の原稿用紙が見つかった。
警官の話によると勾留流の古谷は必死に何かを描き続けており、卒業生の名前が一部一致することか ら、山の上での出来事の美化された想像の思い出を書きつづり、
それで自身を洗脳し続けているのではないかとのことである。




