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新戦力のこと


 月日が経つのは早いものだと、この年齢になれば嫌でも理解することですが、

今や語り草になった『岸の入山事件』からもう一年が経つのですから、恐ろしくもなります。

 山の時間には緩急というものがないのか、淡々と緩やかに過ぎていくので尚更、時計の針が速くなるのだと思います。


 天布山のあたりにも珍しく豪雪となった影響で、入山してくる生徒のバスが一部遅れました。

 

 今年の一年生の第注目選手は、なんといってもキャッチャーの中原海嗣くん。

 プロ顔負けのリードと強肩を持っているとは監督からの評でして、早くもレギュラーの座を勝ち取りました。 

 この辺りの事も四年に一度は経験している事なので、我々にしてみれば『よくある事』なわけでして。

 一年にレギュラーを取られた三年生の気持ちになると、可哀相には思いますけれどね。


 そして、学年No.1スラッガーと噂されている東亮太くん。

 しかし送球に難ありという事で、主将の田島くんが引退した後にはファーストへのコンバートが予定されているとのことです。

 松ヶ谷はここしばらく、甲子園とはご無沙汰ですので頑張ってほしいと思いますが、切に望むのは本当に、怪我なく三年間頑張ってほしいということです。

 そのために私たちができることなら、手間も惜しみません。


 中原くんと東くんの二人は同じバスに乗ってやってきたそうです。

 元々同じ県で知り合い同士だったみたいですね。


 実際シートバッティングをさせてみると、二人とも打球が飛ぶこと飛ぶこと。

 もう全然、上級生に混じってレギュラー陣に加わっても遜色ありませんでした。


 いやあ、そう考えてみると、怪我から復帰した川崎くん。

 全予選で五割打者のショート中村圭介くん。

 主将のブンブン丸、田島くん。

 左打ちに変えてから打力が急上昇した岸くん。

 そして、中原くんと東くん。


 投手陣は、石川くんに、阿久津くんに、ここのところ急成長して期待されている二年生の岩崎くん。

 今年は、盤石じゃないのかな? と思ってしまいますね。


 そして、はい。もちろん、『彼』の事も忘れちゃいけません。

 『彼』を初めて見たのもこの日でした。

 中原くんと東くんと、同じバスに乗っていたというのだから、不思議なものですね。

 

 いいキャッチャーが入ってくる年というのは、いい投手が来ない年であるというジンクスがあるのが天布山なのでして、

今年も投手は注目するべき人材は現状、特にいないとされていたのですが、

それでも『彼』の投球を初めて見た時、野球は素人に毛が生えた程度の私でも固まってしまいました。


 百三十五キロの、カーブ。

 逆に真っ直ぐが、遅い。

 謎かけみたいですよね。そんな投手が入ってきたんです。

 はい。それが沖田朝陽くんでした。

 

 今年は面白いことが起きそうですが、何度も言うようですが私としては怪我なく、三年間過ごしてほしいです。


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