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NB伝

【NB 伝】



 春のセンバツ予選。

 今年は一つの高校が注目を集めている。

 それが、この地区唯一のインターナショナル校、『NB国際高校』である。

 

 小学校から大学まで網羅しているエスカレーター校で、インターナショナル校ならではの最大の特徴は、

メジャーリーグさながらの外国人選手を抱えていることである。


 流石に海外の選手でチームを作られると、日本の『野球』の尊厳を遵守できないのではないかという高野連の判断で、

NB国際は『外国人枠』が三名まで許されるという異例のルールが適応された。


 ちなみに、誰も『NB』がなんの略なのか、NB国際の生徒以外に答えられる人間は少ない。 


 とにかく、スポーツの上で肌の色や目の色髪の色を差別するのは良くないということではあるし、

長身の黒人選手が現れれば会場は湧き上がるだろう。


 そのまさに典型の選手が、ファーストを守っていた。

 

 NB高校野球部一年、テキサス州出身のジェームス・アタッカー君である。

 高校一年生にして身長は百八十八センチの白人。縦にも、横にもとにかくデカく、

普通の高校生が横に並んだら白い壁に見えただろう。


 青い瞳に、豊かなブロンドの髪。

 堂々たる体躯は、神話の登場人物を連想させる。


 こんなのが対戦相手にいたら、普通は、びびる。


 そして注目される、ジェームスの初打席。

 彼は六番を担当した。


 ボディービルダーのような彼がバッドを構えると、バッドが小さく見えた。

 そのくらいの迫力である。


 相手校の投手はすっかり、萎縮している。何せ十数メートル離れたところに、神話の登場人物、もしくはアニメで見るようなキャラクターがいるのだ。

 内野も外野も、当然長打を警戒して後の方にシフトをひく。


 

 まさに神に石を投げる行為だが、対戦相手の投手はジェームスに一球を投げた。

 ……実際に、生きているキリストに石を投げるというのは、こういうことだったのかと実感したかもしれない。

 ジェームスはその球を、渾身の一振りで弾き返した……。


 カーン……乾いた音がして、誰もが空を見上げた。

 彼のはなった球は高く高く上がり…… ……


 内野と外野の中間あたりにポト……と落ちた。

 まさかのポテンヒットというやつである。


 しかしジェームスは、威風堂々と一塁に走っていった。堂々たる姿だった。クラシック音楽が後でかかっていそうだった。


 

 二打席目。

 変化球は何を投げても弾き返される気がするので、直球勝負にでた。

 

 ガーン!!!

 さっきよりも大きい音だ。誰もが再び空を見た。

 ジェームスの弾き返した打球は…… ……

 

 内野と外野の中間あたりにポト……と落ちた。

 またもやポテンヒットである。


 三打席目もポテンヒット。

 いかにも長打を打ってきそうに見せかけて、渋いバッティングをする。


 皆、あっけに取られてしまった。


 ポテンヒットを打った後、悠々と一塁に走っていくジェームスを見て、誰かがつぶやいた。


「テキサスヒットだ」


「何?」


「ポテンヒットのこと、テキサスヒットっていうだろ! あれがそうだ!

 あいつの特技は、テキサスヒットだったんだ!!」


 この予選で、ジェームスは結局ホームランは一度もなく、出塁は全て意表をついたテキサスヒットだった。

 ジェームスはこの大会で、『ミスター・テキサス』の二つ名がついた……。


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