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イップスのこと


 イップスとは、我々とは縁が遠いものと思わせて置いて実は単純で、我々の近くに存在しているのです。

 今まで、惰性や無意識でやれていたことを、突然意識し始めることによってそれは起きます。

 要は、神経の誤作動のようなものです。

 

 イップスは簡単に発生させられます。例えば、あなたの呼吸を、心臓の鼓動に合わせてみてください。

 心臓が二回なるまでに息を吸って、二回鳴ったら吐く。

 それを繰り返したら、そこに瞬きも入れてみてください。

 息を吐きながら瞬きを二回。吸いながら二回。

 すると、十秒としないうちにとても息苦しい感覚になると思います。

 極端に言うとこれもイップスです。

 

 要は神経の誤作動ですので、ある日突然起こります。

 

 川崎くんのは、次の日から顕著なものとなりました。

 

 送球エラーなんて、高校生だし誰でも一回はやりそうなものですが、『川崎くん』がやってしまうと、これはもしや……?

 という空気になってしまうのです。


 そんな空気も、川崎くんのプライドを傷つけたそうです。

 

 二年生の中で自分が一番野球がうまい。そんな驕りも、あったのかも知れない。と、後に川崎くんは回想してます。

 送球エラーが目立つようになり、それを気にし出すと今度は守備の動きが悪くなり、その次は打席で集中できなくなりました。

 今までは、活躍した時に注目されるのが、逆になり、「次はいつミスをするだろう?」と観察される対象になってしまうわけですから。

 三年の引退ももうすぐで、次こそ陽の目がやってくると言うプレッシャーも相まって、川崎くんにとっては辛い時期だったのだと思います。

 

 そして、その日はやってきました。


 ある日の練習中のことでした。

 ノックを受けている川崎くんが突然転倒。

 足を抑えてそのまま動けなくなってしまいました。

 そのまま病院に行くと、帰ってきた時には非情な現実と一緒でした。


 診断は、足関節靱帯損傷+骨挫傷。

 骨には異常は見つかりませんでしたが、MRIで微細損傷が見つかりました。

 全治には、十週間かかります。


 この時期に、足の怪我。夏の予選には、間に合いそうにありませんでした。


 


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