繰り返すこと
服部くんの事故からあっという間に数ヶ月が経ちました。
天布山も厳しい冬を乗り切りました。
我々も一度、恒例の大掃除をしてから、生徒たちと一緒に一度山を降り、慌ただしい各々の年末年始を過ごした後で山に戻り……
陽が昇るのが早くなってきたな。などと感じてよく耳をすませば、ぴつぴつぴつなどとミソサザイの鳴き声が聞こえて参りまして。
ああ、ようやく春が来たんだなあ、などと思っていたらもう、新入生が山にやってくる時期です。
私が体験する、二度目の山での春です。
実家がコーヒー農家の石川くんも、一年も経てばだいぶ背が伸びて、だいぶ頼もしくなりました。
こうやって子供は育つんだなあと、子供のいない身としては感じます。
天布山では、子供たちはまばらにやってきまして、その度にスカウトの箕輪さんもやってきます。
「今年はね、ちょっとすごいんですよ」
嬉しそうに箕輪さんが話しかけてきてくれました。
「凄い子が入ってくるんですか?」
私が聞くと……
「それもそうですけれど、今年はなんだかキャラがたってる新一年生達なんです。
経験上、キャラがたってる学年はいい結果を残すんです」
箕輪さんは誇らしげでした。
あまりにも箕輪さんが聞いてほしそうな顔だったので、私は、
「どういう子が来るんです?」と聴いてみたんです。
「まず、Prayから一人投手を引っ張って来れたんです!」
流石に二年も山にいれば、強い中学校やシニアクラブの団体名などは覚えますが、Prayなどというところは存じ上げませんでした。
ただ……その響きには何やら聞き覚えがあったと思います。
私がパッとしないでいると……
「Prayは中高一貫の学校なんです。だいたいがPray西大阪高校にエスカレーターで入っちゃうんですけど、そこから一人凄い投手を呼んで来れたんです!」
話題にはプレイ、プレイと何度も出てくるので、プレイってなんだろう? と思っていたのですが、『Pray』つまり信仰の学校という意味だと気がついた時、もう一つ気がつくことがありました。
「その投手、サイドスローですか?」
「え……どうしてわかったんですか!? そんなに有名な子なんだ!」
ええ。わかってました。わかってしまってゾッとしました。
内藤さんがいつか見せてきたメモには、こう書いてあったものですから。
「一年目:コーヒーピッチャー(球種がまっすぐ、スライダー、フォーク、カーブ)
二年目:信仰系ピッチャー(フォームが決まってサイドスロー)
三年目:自然系キャッチャー、
四年目:???」
……ああ、そういうことか。と、この頃にはどこか、不思議に思うというか、頭が『そう言うものだ』と理解するようになっていました。




