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投手リレーのこと


『秋の初戦には必ず間に合わせる』


 夏の甲子園が終わって三年生が引退してから、秋の地区大会は本当にあっという間にやってきます。

 それまでにどの高校も新しいチームを組み立てなければなりません。

 これは本当に、簡単なことではない。

 それを、絶対に間に合わせるから強豪校なのでしょうな。


 八木橋くん、服部くん、中村くんたちが最上級生となった、後に『服部中村世代』と呼ばれるチームですが、

 これが非常にうまく行ったそうです。


 神林くんという絶対的捕手が抜けた穴を、八木橋くんは頑張って埋めていましたし、投手リレーが上手く機能していました。

 百三十キロくらいでテンポ良く、打者に狙い球を絞らせない投球をする服部くん。そして間に一年生石川くんを挟んで、頑張ってアウトを一つでも取ってもらいます。

 そして相手打者が百三十キロぐらいの球に目が慣れてきた頃に、百五十キロ豪速球の中村くんが継投するんです。打者からしてみればこの二十キロの差を攻略するのは困難なはずです。

 そして服部くんはサウスポーで、中村くんは本格右腕。


 服部くん、石川くん、中村くんの投手リレーで、今年も順調に地区大会を勝ち進んでいきました。


 彼らの活躍を支えた人間はもう一人いました。

 ショートの山下毅くんの守備です。

 彼も、三年生引退と共にレギュラーになり、ショートの座を譲り受けた選手ですが、レギュラー定着と共に攻守ともに大活躍する選手になったそうです。

 とにかく守備範囲が広く、投手の右脇をすり抜けていくヒット性の打球もヒョイと飛び出て捌いてしまいます。

 打撃も、半速球に特に強く、よってきたカーブは飛びついてでも打ち込むそうです。


 凄まじいのは、それらをさも、簡単そうにやってのけることでした。

 もちろん私は、外から練習を眺めるだけだったのですが、素人の私から見ると、山下くんがそんなにすごいなんて気がつかないほどで、

周りの反応からとんでもない実力を持った子なのだとわかったほどです。

 山下くんという味方がいたことが、服部くん、中村くんの活躍の支えになったことは明らかでした。


 そんな山下くんのことについて、北澤さんから聞いた話があります。


「あいつもな、中村、八木橋と同郷だよ」


 それを聞いてびっくりしました。

 彼が、中村くんや八木橋くんと仲良さそうに喋ってるところなんて見たことがなかったからです。

 

「仲が悪いんですか?」


 私が聞くと、


「さあねえ」


 などと言います。もともと、人付き合いが苦手なタイプなのかな? とも思いましたが、

山下くんは後輩への面倒見もよく、一匹狼といった感じの生徒ではありませんでした。


 過去に大きい喧嘩でもしたのか、気になるところでもありますが、一介の用務員である私などでは、わかるよしもありませんでした。




 ……事件が起きたのは、後一勝すれば、春野甲子園出場が確定する試合での出来事でした。

 服部くんがデッドボールを受け、緊急搬送。左目を失明してしまったのです。


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