卒業して井戸を出る
……ええっと、なんでこの子は私に怒ってんだっけ?
ああ、そうそうそれこそ「あの子は〜」ってこの子のことを話したのが気に入らなかったらしい。
「私は22才だし、成人式だって終わってます!」とか言われてもなあ。
あなた、今年大学卒業してウチで働きだしたから社会人一年生なのよ。で、例えば高卒で働いてる21才の青山さんは社会人三年生なの。分かる? あなたよりよっぽどしっかりしてんのよ。あなたは「年下の先輩」ってのも気に入らないみたいだけど。圧倒的な差がそこにはあるの。
あなたがサークルだ、合コンだとはしゃいでた頃、既にここにいたんだから。あなたが自分のことを「自分の名前」で呼んでいた頃に。
時々うっかり漏れてるわよ。「歩美、今日は残業出来ないんです」とか。気持ち悪いんだけど。
でもまあ、この場でこういうことを説明したって……。
パワハラだなんだと喚く。
鬱になったとかであっさり辞める。
「私の若さに嫉妬してる」とかとんでもない勘違いをする。
こんな感じか。「自分の過ちを認め、頑張る」ってパターンが全く見えないのがつらいわ。
めんどくさ。でもこういうのも私の仕事だしね。
このタイプには、ええっと……。
「上原さん、私は『上原さんには上原さんの素晴らしいところがある』と思っています。期待してますよ」
自分の席に帰っちゃった。スキップしそうな足取りで。
そんなんだから「あの子」って言われるのよ。お子様。
ああ……、なんかバカみたいに砂糖とミルクが入ったコーヒー飲みたいな。
最後までお付き合い下さり、ありがとうございます。