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第21話 兄妹お出かけデート②

 とある週末。気がつけば、俺は美優の水着を選ぶためにショッピングモールに来ていた。


 ショッピングモールの一角に設けられた水着のコーナーで、俺は並ぶ水着を見ながら、美優に似合いそうな水着を選んでいた。


 男の水着売り場と違って、形状や色が豊富にある景色を呆然と見ていると、普通の水着の中にたまに際どいのがあったりした。


 普通の競泳水着のような形をしていながら、胸元とお腹付近を大きくくり抜いたような形の物や、布面積が極端に小さい物、ほとんど線だけのようなものまでもが置かれていた。


 すごいな、こんなの着る人がいるのか。


「お、お兄ちゃん、私にそれ着させたいの?」


 感心と驚愕とが混じり合って、ついそれらの水着に熱視線を送っていると、いつの間にかこちらに振り向いていた美優がジトっとした目を向けていた。


 なんでも着てくれると言われて、責めすぎた際どい水着を選ぶとか下心しかないだろ、それは。


「え? 違う違う! ただ見てただけだから!」


 俺が慌てて否定したのが良くなかったのか、反応がガチっぽくなってしまった。


 美優は黙って頬を赤くさせながら、俺が見ていたふざけたくらいの布面積しかない水着を手に取ると、再びこちらに視線を向けてきた。


「お兄ちゃんの理想の妹は、こういう水着を着るんですか?」


「着ない! 妹が着る奴はもっとおしとやかであるべきだ!」


「……また、変な所に熱量持ってるんだから」


 

美優は俺の本気の熱量を感じ取ったのか、呆れるように小さくため息を漏らすと、手に持った水着を元の場所に戻した。


 どうやら、本気の熱量というのはどんな状況でも人に伝わるものらしい。


「妹に来て欲しい、水着か」


 美優にそう言われて、俺は顎に手を置いて脳をフルで回転させて考えることにした。


 二次元コンテンツで必ずあると言われている、水着回。その水着回では各ヒロインが満を持して水着を披露する大事な回であり、大事なシーンだ。


 そう、大事な描写なのだ。


王道のビキニスタイル、フリル付きの可愛い水着、パレオを巻いたスタイル、スクール水着等々。


世の中にある多くの水着の中で、妹に着て欲しい水着とはどれか。


 俺は数多く並んでいる水着の中から、頭の中で思い描いた形に最も近い水着を見つけ、それを手に取った。


 淡い空色をした上下に分かれている水着。形状はビキニのそれなのだが、上下それぞれに小さなフリルが拵えてある。


「こういうのが好きなの?」


 俺がその水着を手にして、小さく頷いていると、隣からひょこっと顔を覗かせた美優の姿があった。


「……ふむ。やはり、妹が下着か水着を身に着けるとなると、淡い桃色、空色、黄色のどれかの色が好ましい。ああ、もちろん純白も捨てがたいけどな。また、その中でもフリルをつけることによって、少しの幼さを強調することで、より妹感を演出することが可能だ。スクール水着も捨てがたいが、それは学校のプールという状況下で本来の力を発揮すると思われる。そう考えたとき、今回は大き過ぎないフリルが拵えていて、体のラインを見せつつも可愛らしさが共存しているこの水着がーーげふん、げふんっ。いや、なんかぱっと見た感じ、これがいいかなって思ってな」


「いや、めちゃくちゃこだわり語ってたじゃん」


 女性の水着について熱く語るのはどうかと思い、俺は語り初めだけで言葉を収めることにした。


 危ない危ない、これ以上語っていたら、変にこだわりの強い人だと思われてしまったかもしれないな。


 美優は俺の隣で、俺が手にした水着を静かにじっと見ていた。


 もしかしたら、美優のタイプではないのかもしれない。そんなことを思って、何か言葉を紡ごうとしていると、美優は小さく頷いた。


「うん。じゃあ、これ着てくるから試着室の前で待ってて」


「し、試着室の前で?」


「だって、実際に着てみないと分からないし、試着してカーテン開けて誰もいなかったら恥ずかしいし」


「少し離れて待ってた方がいいだろ。他のお客さんもいるかもーーいや、いないか」


 他のお客さんに迷惑だからというとしたが、俺たち以外にお客さんがいなかった。


 いやいや、そうだとしても、試着室前で待機なんかしたら、いよいよ通報されてしまうんじゃないだろうか?


 真面目にそんな心配をしてしまう俺の反応を見て、美優は少し悩んだ後に近くにいた店員の元に小走りで向かっていた。


「すみません、お兄ちゃんに水着見てもらいたいので、少しだけ試着室の前で待機させてていいですか?」


「ちょ、ちょいっ!」


「ええ、大丈夫ですよ。ごゆっくり、どうぞ」


「だってさ。それじゃあ、そこで待っててね」


 なんだこの妹ルートにありそうなセリフと状況は? ていうか美優よ、人見知りスキルはどこに置いてきたんだ?


 こうして、俺は店員さんに微笑ましいものを見るかのような笑みを向けられながら、試着室の前まで連れていかれて、その場から動けなくなったのだった。



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