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第四話 なんでいるの?



◇◇


「とうとうゼミの日がやってきてしまいました。1週間たつのが早すぎますよ...。」


 げんなりとした表情で研究室へ続く道を歩く私に、何故か周りの皆さんが海が割れるかのように左右に私を避けて行く。

 『キスまち令嬢』としていつもなんとなく避けられているので、いつものことと気にはならないのだけど、今日は避ける人数も多ければ、なんだか皆さんの表情もひきつっている。


「あのう?」


「ひっ!?」


 どうしたのですか?と1番近くにいた人に聞いてみるとその人は焦ったように目を瞑って首をぶんぶんと振った。


「しゃ!喋っていません!!僕は断じて殿下の彼の方とは喋ってません!!僕は木!そう木です!!木は喋りません!ぜひ素通りしてくださあああいっ!!」


「は?木?...一体どうし...」


 反対側に振り向いて、そちら側にいた女子生徒に話しかけようとすると慌てて目を逸らされた。


「み、見ておりませんわっ!わたくしは今日は目が悪くなったようで!何も見ておりませんわ!!決して、殿下の彼の方を殿下より長く見ることなんていたしておりませんわっ!!ああ!いまこの瞬間わたくしの視力は0.01にも満たなくなりましたっ!!」


「は、はぁ......?」


 なんだかよくわからないけども、殿下という言葉が聞こえたから、私と仲良くすると私のことが嫌いなリンザール王子の気分を害してしまうとかそんな理由で極端に避けられていたりするのだろうか?


 そんなことを立ち止まって考えているうちに、周りにいた生徒達は蜘蛛の子を散らすかのように一瞬でいなくなってしまった。


「今日はなんだか一段と避けられていた気がするわ。なんでかしら。慣れたとはいえ、やっぱりなんだか寂しいものよね。」


 ふうとため息をつき、再び研究所への小道を歩く。

 右側前方には先週リンザール王子がサーザク先生に話していた大温室が見えてきた。

 大温室はその名の通り、貴族学院で1番大きな総ガラス張りが綺麗な温室で、たまに音楽部がミニコンサートを開催したり、植物学者たちが講演会を開いたりしている建物だ。中では沢山の植物が栽培されており、外から見るとまるで緑の貴石をとじこめた透明なガラスの宝石箱のように見える。


 あの中で観劇ができるカフェかぁ。素敵ね。

 リンザール王子をはじめ優秀な生徒会メンバーの考えることはやっぱりすごいな。


 研究棟のエントランスに着くと、学生証をカードスキャナーにあてる。そうすると扉が開く前に傍にあった植木鉢からズボッとマンドラゴラが顔を出した。


「キ......」


「セレスティナ・サラガス。サザーク先生のゼミにきました。」


 マンドラゴラが金切り声を上げる前に自身の名を伝えるとマンドラゴラは「ちっ。」と舌打ちをしてまた植木鉢に潜っていった。このマンドラゴラは改良されて栽培されている警備用マンドラゴラで名前と用件を伝えないと金切り声をあげ、その声を聞いた相手は気絶してしまう。


 すーっと目の前のエントランスの扉が開いた。

 重い足取りでサーザク先生の研究室の扉に向かう

 ここまでくるのに足取りは重かったが、私から先生に頼み込んで開いてもらったゼミだ。6時間目が終わってすぐに足を運んだから、授業が本棟である先生はまだ来てないだろうし、リンザール殿下は私のことが嫌いだからきっと7時間目がはじまるギリギリにくるかもしれない。いや、もしかしたら、やはり私とゼミなんて冗談じゃないと初回から欠席かもしれない。


「先生が来るまで、作りたいものの資料集めでもしておこうか......な??ってえええええっ!?」


 1階にあるサーザク先生の研究室の扉を開けると、こちらには目も合わせない金髪の美形がすでに席について顎に手を当て1人たたずんでいたのだった。

 


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