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第三話 サーザク先生の条件

 だからリンザール王子からすれば、まったく好きでもない相手、しかも自分を好きでもない相手に子供の頃とはいえ初キスを奪われただけでなく、まったく好きでもない相手、しかも自分を好きでもない相手をそのせいで自分の婚約者にされてしまったということになる。彼にとってなんて側から迷惑な話なんだろう。いや、そもそもは私の間違いが原因なんですけどね。


 これだけ説明すれば感の良い方はお気づきでしょう。

 そう、私はリンザール王子に嫌われている。

 嫌われているどころか、もう存在を認めないほど、「ない」ものとして扱われているのよ。


「......生徒会の集計ノートの件だ。読んでくれたか?」


 ほら、今もセンセがすすめた私の隣の椅子には座らず、私の存在をガン無視で扉近くから話しだした。

 そんなに私の隣に座るのが嫌かしら。はぁ、でも嫌だよね、やっぱり。

 嫌そうな彼の顔を見るのが怖くて、私は後ろを振り向けないでいたら、私のその様子を見ていたサーザク先生が眉を上げたあと、またリンザール王子のほうへと顔を向けた。


「学園祭で、この研究室横の温室を会場に使いたいという要望の件ですね。生徒からの要望が観劇をしながらのカフェもしくはランチをしたいとの。」


 さっき目を通していたノートを再び開いてサーザク先生が王子に確認をとる。

 どうやら来月末に開かれる学園祭でサーザク先生達が管理している大温室を使いたいとの話のようだ。リンザール王子はこの学園の生徒会長をしているから、先生の許可をとるためこの研究室にきたのだろう。


「そうだ。可能か?

 講堂は飲食禁止、体育館はスポーツ系のクラブがクラブ体験で使用するため大温室が候補に上がった。」


「温室を使用することには問題ありません。

 私から温室管理者の先生達に話を通しておきましょう。

 中央に講演用にも使われる舞台がありますからそこを使えば良いでしょう。しかし、カフェ程度なら良いですが、ランチは難しいですね。温室内では調理火を使えません。スプリンクラーが発動してしまいますね。」


 たしかに、草花が沢山植えてある大温室で火なんて使って火事になったら大変だ。カフェなら保冷保温機に入れた飲み物やケーキをそのままだすだけで調理火は使わないですむ。


「わかった。ではカフェで...」


 リンザール王子が了解したという返事をする途中で、サーザク先生がピシッと人差し指を一本顔前で立てた。


「ただ、温室利用には1つ条件があります。」


「条件?」


 少し訝しげな王子の声が背後でする。

 サーザク先生はにこりと笑った。


「ええ、私のゼミに入りたいという生徒がいるのですが、あいにくゼミを立ち上げるには学園の規定で2人以上の生徒が必要でしてね。

 リンザール第一王子、温室利用を許可する条件として、あなたには私のゼミに入っていただきます。」



 .........は?



 センセ、そのゼミに入りたいという生徒とはもしかして、もしかしなくても私のことですよね?

 

「ちょっ!センセ!殿下はゼミには入りません!

殿下はダメです!2人以上必要なら私が他の生徒を誘いますから!」


 思わず立ち上がって先生に抗議しようとすると、私の後ろから、今まで聞いたことがないような冷たい声が聞こえた。


「いいだろう。ゼミに入れば温室使用許可はおりるのだな?」


 え?今いいだろうって言った?

 私がいるのに?


「もちろん。」


サーザク先生が両方の口角を綺麗にあげる。


「わかった。俺は大温室の状態を見てくる。サーザク講師、他の温室管理者に話を通してくれ。」


「はい、殿下。ゼミは毎週この曜日の7時間目にいたしましょう。たしか生徒会もない曜日ですね。」


 リンザール王子とサーザク先生はお互いに確認をしあうと、王子は背を向けた私とは一言も話さずに研究室から出て行ったのだった。


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