魔法決闘
魔法決闘。貴族間で行われる、正式な決闘行為。賭けるものも当然存在し、勝った方はそれを得ることが出来る。合法的に。負けたほうは、何も得ることが出来ず、場合によっては奪われることもある。そして、なにより自家の名を背負って決闘を行うため、貴族としてのプライドもズタボロとなるのだ。
合法的とは言うが、決闘という血生臭い行為に手を突っ込んだ罰だ。それくらいリスクが大きく、またリターンも大きい、正真正銘の博打だ。
今回私は申し込まれた側だ。賭けるものによらず、断りを入れることも可能だ。もちろんそれはそれで腰抜けの烙印を押されることもある。生憎そんなプライドは持ち合わせていないから、私は気にも留めないけど。
そんなくだらないプライドは置いておいて、それでも私はこの決闘を受けることにした。理由はもちろん事態を収拾するためだが、ここらで一度圧倒的にわからせてやらないといけない、そう思ったからだ。
結局のところ、貴族たちがこうも殺気立って、我こそはと名乗りを上げるのは、私では相応しくないと思っているからだ。貴族は10歳にもなれば立派に結婚対象。とはいえ、僅か13の生娘が、帝国の王子殿下に選ばれる道理が、彼らには納得いかないのだ。ましてや実力主義のこの国においては、特にだ。奇跡の申し子、だなんて呼ばれているけれど、それも実際に目にしたわけではないだろうから。
だからこそ、見せつける必要がある。決闘を申し込んできた令嬢らと、私の絶対的な差を。
目の前には、12人のドレスに身を包んだ女たちが、私を睨みつけていた。彼女らはそれぞれ己が得意とする属性の宝石を有した触媒を身に着けていた。私と同じように指輪だったり、耳飾りだったり、さまざま憑りつけているが、どれも一人に対して1色の触媒だ。魔法の基本属性は全部で6つ。火、氷、風、雷、光、闇。魔導士は必ずどれかの属性の適正があり、適正外の魔法は、うまく発動しないか、そもそも扱うことすらできない。彼女らの中には、いくつかの属性を扱える者もいるだろうが、それでも、一つの属性に特化して訓練したほうが、合理的なのだ。
ただ、その合理性に当てはまらなかったのが、私というわけだ。
「以上、12家の貴族令嬢より、アダマンテ公爵家令嬢、ロウ・アダマンテ・スプリングへの魔法決闘の申し出を受理します。これは、帝国が決めた魔法決闘法に基づき、厳粛に行われることとします。」
ジエト、フィリアオールを含めた議会上で、私たちは形式的な開会式を行っていた。周囲にはクリスハイトや帝国議会に参加している各省の大臣らが、それを見守っていた。大臣らにとってもこれは茶番にしか見えないだろうけど、次期王妃を決める大事な選定だ。無視するわけにもいかないのだろう。
「挑戦者は全て、対戦者ロウが順次選ぶことが出来ることとします。よろしいですね?」
フィリアオールの言葉に、12人の令嬢たちは頷いた。
「決闘は明日から行います。ロウ、今この場で明日の挑戦者を選びなさい。」
一斉にこの場にいる全員の視線が私に集まった。12人の令嬢は、今か今かと自分が選ばれるのではないかと緊張した面持ちだったけど、生憎、私の心は既に決まっていた。
「・・・・・・12人全員、明日、同時にお相手します。」




