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ロードオブハイネス  作者: 宮野 徹
閑章
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アルの無茶振り、その2

「あなたという人は、どうしてこう、一言の相談も無しに話を進めるのですか!?あなたに付き合わされるこちらの身にもなってください!」

「いて、いててて。わ、わるかったって。しょうがないだろう。遅かれ早かれ、起きていたことだ。」

「んんー!ん?・・・どういう意味ですか?」

彼の頬から手を離し、彼はしばらくそこいたわるように撫でていたが、やはり面倒くさそうな顔で話し出した。

「考えてもみろ。お前が俺の妃となることは、いずれ公表されることだ。前の縁談と時間を空けて、王家がじっくりと考えたとしても、納得しない貴族はいるだろう。」

いや、そもそも、この男の我が儘で内密にことが進んでいることの方が発端だと思うのだが、それは今更言ったところでしょうがないだろう。

「そうなったとき、お前が本当に俺の妃にふさわしいか、確かめなければならないだろう?」

「・・・つまり、いずれ起きていたこと故に、隠す必要はないと?」

「あぁ。仮にお前が俺の妃に選ばれていなくとも、誰であろうと、この事態は起こっていたさ。帝国の王妃たるもの、最良の人物でなければならないからなぁ。」

ようするに、彼の我が儘で、誰が王子をアルと呼んでいたとしても、こうして真にふさわしい人物かどうかを確かめる場が設けられ、そして、そこで彼の隣に立つ権利を得られるのは・・・。

「たとえどれだけの名が立候補しようとも、その全てをお前が蹴散らすはずだ。」

「・・・。」

「俺は、その過程をすっ飛ばしたに過ぎない。まぁ、一言も相談しなかったのは、本当に悪いと思っているが、お前からしても、大したことじゃないと思ったんだよ。」

大したことない、わけない。場合によっては、もっと大騒ぎになっていてもおかしくない状況だ。大会場の向こうでは、いまだ議会が開かれているから、ジエトが駆けつけてくることは期待できそうにない。どのみち、私たちで解決しなければならないのは間違いない。

けど、蹴散らすっていったって、全てに私が優っているかどうかなんて、やってみなければわからないだろうに。

やるからには当然全力で挑む。だけど、私とてまだ13の子供だ。前世の記憶があるとはいえ、精神的に落ち着いているだけで、この世界での研鑽はまだまだ足りないだろう。それに、誰がふさわしいか、ということを決めるのは、単純に何かに優れていればいいわけではない。万人を納得させるだけの証拠を、知らしめなければならないのだ。

「もし私が、貴方のために、自らを誇示する気はないと言ったら、どうするつもりだったのですか?」

「え!?そ、それは、大変困るなぁ。その考えは、まったくなかった。」

そんなつもりは毛頭ないけど、人を信用し過ぎるのも考え物だ。

「まぁいいですけど。どうなっても知りませんからね?あなたの私に対する評価が、間違いではないことを祈りますよ。」

私がそう言うと、彼はぱっと笑顔になって、勢いよく立ち上がった。



大会場は、大騒ぎだった。

大騒ぎ、といっても、一応は貴族の者たち。騒ぎ方にも品があるというか腹黒さがあるというか。ねちっこい態度の者たちばかりだ。そんな中へ入っていくのはためらわれるため、そういうのはアルに任せることにした。私は、然るべき時に出ていけばいい。

というわけで会場の端っこにあるカーテンの後ろから、アルが貴族らをなだめている様子を眺めているのだけど、彼らの表情を見る限り、どうやら苦戦しているようだが、逆にアルの表情は余裕癪癪というった所だ。

後から騒ぎを聞きつけてやってきた、フィリアオールも交じって、事態は収拾がつかなそうに見えるが・・・。アルがこちらを向いて、手招きしてきた。その表情は、随分得意だった。いったいどこまで人のことを買いかぶっているのか。

私は大きく息を吐いて、気持ちを完璧な令嬢へと切り替えた。身なりは社交界にはまったくもってふさわしくないものだけど、そんなものは関係ない。

必要なのは、中身が本物かどうかだ。真に光を放つ金剛石は、どんな宝石たちよりも価値のあるものだ。

「貴殿の自慢の令嬢たちが、彼女より私の妃にふさわしいと思うのなら、直接確かめてみろ。紹介しよう。帝国の次期王妃となる真なる令嬢。ロウ・アダマンテ・スプリング。」

その宣言は、ある意味、私の進路決まってしまったようなものだ。逃げ場もなく、周囲は敵だらけ。味方はただ一人。これが戦争だとしたら、私は真っ先に命を落としていただろう。

しかし、そうはならない。この押し付けられた面倒事は、大したことじゃないのだ。彼がそういったのだ。少なくとも、私は確信はできない。けれど、他でもないアルが言うのだ。私の夫となる人がそういうのだ。

「・・・お初にお目に掛かります。帝国が誇る貴族のお方々。私こそが、殿下の隣立つに選ばれた、帝国の次期王妃となる者。ロウ・アダマンテ・スプリングです。不服を申し立てるのであれば話は聞きますが、これは覆らない事実です。即刻お引き取り願います。」

私は、正直権力には興味がない。王妃という肩書きなんて欲しいとは思わない。それでも、私にも引きたくない理由がある。大した理由ではないけれど、私はアルのためにも、この座を譲るわけにはいかないのだ。

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