死ぬこと
どうしてこんなことになったのだろう。何がいけなかったのだろう。
貴族社会を生きてきて、志を同じくする者から裏切りをされることは日常茶飯事だと、往々にして学んでいた。お互いの利益の元に同盟はあり、利がないと知れれば、平気で縁を切る。所詮うわべだけの協力関係を、貴族は幾度となく結んできた。
私とアレンの関係も、そんな浅薄なものだったというのだろうか。仮にそうだったとして、私の腕を食い千切った理由は何なのだろうか?私を殺したいほど憎んでいたのか。はじめからこうする気だったのか。
こうなってしまった以上、もう確かめられないだろうけど。
目を開けると、私は仰向けに倒れていた。空へ向かって右腕を伸ばしていた。
はじめは魔獣の背中に倒れているのだと思ったけど、どうやら地上に落ちていたようだった。いったいどうやって着地したのかはわからないけど、不思議なことに体は無事だった。左腕の方は、二の腕あたりからなくなっていたけど。
空を見やると、あれほど上空を覆いつくしていた鱗粉がきれいさっぱり無くなっていた。それどころか、魔獣の姿すら見当たらない。周囲は広大な木々に覆われていて、どうやらピスケスからかなり離れた位置に落ちたようだった。戦いの喧騒さえも聞こえてこない。
戻らないと。そう思っても、体が自由に動かせない。どれだけ時間が経ったかもわからない。今一度戻ったところで、何ができるわけでもない。今私の体は、死に向かっているのだろうから。
意識が遠のいていく感覚。蝶化した人々に囲まれた時とは違い、既に恐怖心はなかった。恐怖を感じるほど精神力も、足搔こうとする体力も無くなっていたのだ。きっと、このまま目を閉じてしまえば、私はもう二度と目を覚ますことはないだろう。
それなのに、天へと伸ばした右腕をおもむろに降ろし、重力に任せるがままに地面へと叩きつけると、体の感覚が急に戻ってきた。食い千切られた痛み、全身を駆け巡る血の循環、心に突き刺さった裏切りの刃。それらが一瞬にして私の体に襲い掛かってくる。
左腕がなくなったせいか、体の重心がずれてふらつきながら立ち上がる羽目になった。止血をしようにも片手ではどうにもできない。今できることは、どこかへ助けを求めることだけ。人に会えれば助かる見込みはあるけれど、ここがどこだかもわからないのだから、望みは薄い。
「ここは・・・?どこだろう・・・。」
鈍い意識を懸命に働かせて、森の中を歩き続けた。足を進める度に、体が冷たくなっていくのを感じる。こんな状態でまだ歩く気力があることに、自分で驚くほどだ。
時間の流れすらわからないまま、ただひたすらに歩き続けて、どこへ向かっているかもわからないまま、日が沈み始めていた。
とうとう私の足が動かなくなり、唐突に膝をついてしまった。
あぁ、ここで死ぬのか。そういう思いが薄れゆく意識に芽生え始めた。どうあがいてもたすからない。そう思った時だ。倒れそうになる私の腕を誰かが掴んで無理やり起こさせようとした。力強いその腕の主は、何も言わずに私を抱え上げ、その背中に背負わせていた。
「だ・・・・れ・・・?」
言葉になっていない私の問いに答えず、その男はゆっくりと歩き始めた。
体調を崩すと何にもできなくなってしまいますね。
精神的にも肉体的にも限界はある。
けど少しずつでもいいから書いていくぞぉ。/(。-`ω-)U




