龍と共に
シルビアを狙った刺客を、王領を守護する騎士団に突き出して、すぐに帝国議会へ、このことを報告した。夜だったため、多くは集まらなかったが、クリスハイトがこのことを処理してくれて、その日のうちに、王城内の警戒態勢が敷かれた。最善の策ではあるが、ある意味地獄のような状態になってしまった。
城の中に敵が潜んでいるというのであれば、だれがそれをやってもおかしくないという不安から、互いに疑心暗鬼になり、荒廃した場所になっていくだろう。ただ、その状況になったおかげで、次に騒ぎが起これば、問答無用で裁かれる。過剰な正当防衛が許され、たとえ殺しを犯しても、敵性勢力を裁いたということになり、殺人に咎めはなくなるのだ。
「かなり危うい策ですが、敵が城内にいるのであれば、やむをえません。とくに陛下には厳重な警護つけさせます。ロウ殿、貴方も無理はなさらないように。できれば、ここを離れたほうがよろしいのですが。」
クリスハイトの助言は最もだ。現に場内で、幻影の帯ににかかり、いつ暗殺されてもおかしくない状況だった。今は護衛もつけていないから、自力でどうにかしないといけない。
「もう敵の矛先は、すぐそこまで迫っていると思います、クリスハイト様。この状況では、帝国の内部がこの状態では、北部戦線も危険になります。一刻も早く事態を収拾しないと、取り返しのつかないことになる。」
このまま黒幕に振り回され続けたら、帝国は内部から崩壊するだろう。
「クリスハイト様。私はもう、自分が信じるもの以外は、全て敵とみなします。その上で、貴方が帝国への真なる忠誠心を持つお方と信じて、伝えたいことがございます。」
「・・・お聞きいたしましょう。」
彼は聡い人だ。あえてこんな言い方をする私が、心の奥底では全てを疑っていることくらいわかっているのだろう。誰が敵でもおかしくない状況だから。
クリスハイトに伝えたのは、シルビアを自由にしたことと、これから私が帝国中へ飛び回って、問題を解決して回るということだ。城にいては何もかも後手になってしまうからこその作戦だ。これはたとえ、誰かに知られても誰にも止められないことだから、あえて伝えたのだ。
「承知いたしました。ロウ殿。陛下にもこのことはお伝えいたします。」
「お願いします。次会う時、また同じ立場の者として会えることを祈っています。」
クリスハイトにそう言い残して、私はアレンの元へ向かった。
「いいんだな?」
「ええ。もう、これしかないと思う。」
「・・・そうだな。でも、・・・あんたらしくていいんじゃないか?」
飛びたくなったらいつでも言ってくれと、彼は言っていた。アレンとの間にどれくらい溝があるのかわからないけど、私はもう彼に遠慮するつもりはない。魔獣に関して、まったく進展がない分、申し訳なさはあるけれど、彼の瞳は、まっすぐ私に向けられていて、笑っているように見えた。
「できることからやろう。」
「どこから行くんだ?」
「まずはアダマンテへ戻りましょう。ハイゼンとエルザが、刺客について何か情報得ているかもしれないから。」
本当はオーネット領へ行って様子を見に行きたいが、あっちは既に裏で手を打ってあるから、それにかけるしかないだろう。
私とアレンは、ここへ来た時の旅服へ着替え、すぐに王城の見張り台へと向かった。
彼が先に飛び降り、輝きを放ちながら空中で龍の姿へ変化した。私もアレンに続いて見張り台から飛び降りて、今回はアレンに尻尾で捕まえてもらわずに背中の翼を一生懸命動かして、彼の背中へと滑空した。
「―――うまくなったじゃないか。ーーー
「まぁね。それじゃあアダマンテまで、よろしくね。」
「ーーーあぁ。ーーー」
眩い星々が煌めく空を、私たちは駆けていった。
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