力の源
その後私は、ジエトから直々に呼ばれ、今後の帝国の本格的な指針を決める小会議に参加することになった。小会議に参加するのは、ジエト、クリスハイト、フィリアオール、総務大臣を務めるアニスフィアに、緊急でミスリアル領から呼び出された、フレン・ミスリアル公爵。そこへ当事者であるオーネット公爵と、何の因果かこのそうそうたる面子に片足を突っ込んでしまった私の7人だ。
「フレン。よく来てくれた。長旅ところ済まぬが、そなたにも一仕事してもらうぞ。」
フレン・ミスリアル公爵。南部領ミスリアルを統治する人で、別名食の番人と呼ばれる、帝国の食料源を担っている重要人物だ。その性格は、とても穏やかで、戦いを好まぬ温厚な人物だと言われている。それは姿を見るだけでわかるほど、伝わってくるのだが、あまりにものほほーんとし過ぎていて、少し不安になるくらいだ。
「はい陛下。長旅とはいえ、のんびり馬車に揺られてきただけですので、さほど疲れてはおりませんよ?」
「そうか。ならばよい。そなたと総務大臣で連携し、食料配達の効率化を図ってほしい。」
現在、北部戦線への兵糧は滞りなく配達されているはずだが、さらに戦場が一つ増えてしまうとなれば、話は別だ。
「ピスケスに向かわせるテレジアの魔導師団の数は約4000。それに加え、オーネット領へ戻った騎士たちの分も含めて、さらなる兵糧を確保せよ。」
「陛下~?あまり無茶をおっしゃらないでください。我々も無尽蔵に食料を生み出せる訳ではないのですよ?」
「わかっている。だがそなた意外に頼れるわけもない。どうかよろしく頼む。」
あの間延びしたような話し方は、女性っぽさも感じることがあるが、ミスリアル公爵は男だ。ちょっと気持ち悪さを感じることもあるけど、実際ミスリアル領の食料がなければ、この広大な帝国の食料を賄うことなどできはしない。
「アニスフィア、細かい人事はそなたに任せる。人員は惜しみなく使ってくれ。」
「お任せください。」
総務大臣のアニスフィアは、とても38歳には見えない容姿を持つ見目麗しい女性だ。成人しているかすら危うい見た目だが、それでも3人も子供がいるというのだから、人間とは面白い生き物だ。
「さて、ロウよ。先ほどのそなたの話を詰めさせてもらうぞ?帝国王族に、敵がいるという話を。」
帝国王族は、基本的にはアーステイル家と血を分け合った家のことを言うが、それが全てアーステイルを名乗っているわけではない。貴族が、アーステイル家の本家、分家に嫁げば当然アーステイルの名を頂くことになるが、その逆も当然起こりうる。その場合、本家、分家とは親戚関係にあるだけの帝国王族が誕生する。防衛大臣のノブナ・コーアなどがいい例だ。彼は帝国王族ではあるものの、アーステイルの名は付いておらず、アーステイルの親戚に過ぎない。そういう家が、アーステイル家とは別に無数に存在しているのが、帝国王族の実態だ。その数は幾たびもの婚姻を経て膨大に膨れ上がっているが、実権がある家はそう多くないのが実状だ。
「帝国王族とはいっても、アーステイル家で9つもあり、家系図は時代を経て膨大に膨れ上がっています。」
少しでも多く血を分け合おうと、結婚を繰り返してきた結果がそれだ。血統さえ手に入れれば、大地の記憶の力は手に入る。魔法特性を手に入れれば、あとは実力で成り上がればいい。
「ですが、その数が大きくなりすぎたせいで、身の内を証明が出来ぬものが生まれてしまうことも多々あるでしょう。アーステイルの血を引いていながら、まったくの無名の一族が、多く存在することは、皆さんも気づいていらっしゃると思います。」
「それが、そなたを襲撃した者だと言いたいのか?」
実力主義の帝国において、真の実力とは、名前の認知度も含まれてくる。優れた人材であろうとも、その名が周知されなければ、ないのと同じということだ。
「こちらをご覧ください。」
私が取り出したのは、襲撃者が持っていたペンダントだ。それを小会議に参加している者らに見せたところ、誰もそれについて知らなかったのだ。
「これは?」
「襲撃者が所持していたものです。この紋様。フォルゾの街での間者も持っていました。帝国を代表する皆様方が見ても、誰もこれについては知りえていない。これが誰の家で、どこの家紋なのか。それがわからないくらい帝国王族は、血を分け合ってしまっている。だから、暗殺者でありながら、魔法が使え、あまつさえ大地の記憶の使い手さえも出てきたのだと思います。」
「つまりそれが、帝国王族に敵がいる、という話になるわけか。」
無名であろうと、帝国王族であることには変わりない。だが、無名だからこそ、脅威には足りえないと考えるのが普通だ。本当に力があるのであれば、実力で下剋上を起こせばいいだけのこと。それが出来ないとなれば、わざわざ帝国議会で持ち出すことでもないだろう。しかし、私はここまで旅を経て、新たな見解を見出してきた。それを使えば、帝国王族でなくとも、帝国王族になりうるかもしれないと考えたのだ。
「まず初めに、先ほどの議会での話に偽りを口にしたことを謝罪いたします。」
私がそういうと、フィリアオールが頭を抱えて渋い顔をした。
「そうでしょうね。ロウ?私たちはあなたを信じてはいますが、擁護するのにも限界というのがあるのですよ?」
「ふふ。本当に申し訳ないと思っています。」
「はぁ。それで、実際シルビア嬢とはどう出会ったの?」
それに関しては、オーネット公爵がいる手前でもあったから、言いずらかったが、ここまで引き延ばしたらもう、黙っているほうが酷というものだろう。
「シルビアは、精神侵食魔法を受けていたのは確かです。ですが、シルビアは私を敵と認識していて、実際に交戦いたしました。」
「・・・そんな、・・・シルビアが、あの子がそんな。」
酷く狼狽えるウンウォルの気持ちはよくわかるが、この様子だと本当に冷静な判断は下せないだろう。
「どうにか殺めずに、戦闘不能に追い込みましたが、おかげで彼女から話を聞くことはできませんでした。」
「では、シルビア嬢が暗殺されようとしていたというのがウソなのか?」
「はい。ですが、彼女を狙っていたというのは間違いないと思います。それも、私が狙われた理由と同じ理由でです。」
「あなた、自分が狙われた理由はわからないって言ってたじゃない。」
「そうですね。だから、これも私の憶測に過ぎません。おそらくですが、私もシルビア嬢も、血を狙われてのだと思います。」
「・・・?」
全員が顔を見合わせて、何を言っているんだという空気になってしまった。
「血、ですか?」
「はい。」
「つまり、そなたらを捕え、無理やり子を産まそうとしたのか?そなたらの血統を手にするために。」
彼らの見解もあながち間違いではない。要は彼らは、さらなる力を求めているのだ。けど、子に受け継がせるというやり方では、即効性がない。時間がかかるし、運も必要になってくる。けれど、それを解決する方法があるとしたら。
「いいえ。彼らにアダマンテやオーネットの力を欲しているのは間違いないと思います。ですがそれは、何度も失敗してきています。少なくとも私は、アルハイゼン殿下が逝去された後は、あらゆる縁談を断っております。」
「待て!縁談だと?そんな話が関わってくるのか?」
「彼らはとっくに動き出していたのでしょう。私も前回の貴族会議での縁談が来ていなければ、怪しむことはなかったと思います。」
全ては、あの縁談から始まっていたのだ。
「敵の目的は、より強い血統を手にすること、反逆を成すための力が欲しいのです。そのために、彼らは血を求めるのでしょう。血こそが、力の源だと気づいたのです。」
自分で書いててわからんくなってきました。
都合のいい展開でゴリ押すしかないと思ったので、内容全くわからんと思います。
私もわかんない。




