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ロードオブハイネス  作者: 宮野 徹
第三章 陰謀渦巻く貴族社会
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帝国議会

帝国議会への出席を命じられたのは、そのあとすぐだった。単なる公爵令嬢で、しかも今は、他所の客卿とされている状況で、帝国議会に入る権利を与えられるとは思っていなかった。それくらい帝国の人員不足ということだろうか。戦力はともかく、文官たちはこの王領に腐るほどいるだろうに。


「どうして私が?」

「こうも状況が緊迫した状態では、猫の手も借りたいものです。あなたは一時王妃のための教育を施されたものです。議会の一角を担うには十分な知識と判断力があると思っています。私の隣で、一議員として、陛下のためにその力をふるってください。」


フィリアオールからそうお達しがあり、どうやらややこしい立場になってしまったようだ。だが、王領には、私も反逆の容疑を駆けられようとしていたことは、周知されていない。なぜ公爵令嬢が王領にいるのかと疑問に思われることはあっても、ジエトとフィリアオールの側にいれば、大した問題ではないだろう。


帝国議会は、その名の通り、帝国の政を決めるための議会だ。ジエトをはじめとした各大臣はもちろん、その下につく文官たちも数多く参加している。よりよい帝国のために、日夜多くの政策について話し合われているが、ここ数日に話し合われていることは、そういった類のものじゃない。


北部戦線への物資の供給状況。他領からの支援。戦時にあたっての臣民たちの不満の種の解消。そんなどれも面倒くさい内容の話ばかりだろう。それに、オーネット領の問題についても・・・。


「先日、オーネット領へ派兵した騎士団は、元々王領騎士団の代わりに王領を守護するべく派遣された騎士団です。正確に言えば、その中のオーネット領から派遣された騎士団を、自領へ戻らせたことになります。」


議会では、宰相のクリスハイトが現況の確認をしてくれていた。


「オーネット領城および、その城下街ピスケスが制圧されたと方が届いたのが、ちょうど2日前のこと。現在は、その真偽は定かではありませんが、異常な事態であること自体は変わりありません。」


帝国1300年の歴史を振り返っても、領城が占拠されたなんていう話は、聞いたことがない。そもそも帝国に仇名す敵対勢力など、そうはいないのだ。広大な帝国領土、安定した食料自給力。なにより、魔法やあらゆる戦力を持つ帝国に戦争を挑む国など、今まで存在しなかったのだ。異常事態というのは間違いないだろう。


「では、この議会に何の意味がある?」


突っかかる文官はいつだっている。ただでさえ忙しいのだから、無駄な時間を過ごしたくないのだろう。


「オーネット領の状況がわからないのであれば、ここでただだべっていることに意味はない。」

「意味ならあります。状況を予測し、先手を打たなければなりません。」

「予測?でっち上げで帝国の指針を決めるとおっしゃるか。宰相殿、いくら何でもそれは・・・。」

「崇高なる帝国の議会が、意味のあるものにするのは、我々の使命です。やる気がないのであれば、今すぐここから立ち去りなさい。」


クリスハイトは、いかに文官な風貌の男だけど、長年ジエトと帝国を支えてきただけはある。文官の中でも覇気が違う。


「・・・現在我々は後手に回りつつけています。どこかで先手を打ち、状況をひっくり返さなければ、この先もずっとこのままになります。」

「クリスハイトの言う通りだ。ウンウォルよ、そなたの領城を占拠している戦力に心当たりはないのか。」


同じく議会に参加していたウンウォルは、既に狼狽していた。気が気でならないのだろう。ジエトからの言葉に、息を詰まらせていた。


「はっ、なにせ、王妃様に召喚を命じられてすぐにのことだったので。私には何がないやら。」


タイミング的にも、オーネット公爵が自領を経ってすぐに、謎の勢力は領城を占拠し、城下街をも制圧したのだろう。となると、オーネット公爵が自領を離れるタイミングがわかっていたかのようにも思える。もしくはそういった事態を待っていたか・・・。


しかし、仮にそうだったとしても、オーネット領城を狙う理由にはならないだろう。なんせ、王領の守護のために騎士団を派遣しているとはいえ、半数の5万近くの騎士団が領城にいたはずだ。それらを経った数日で占拠することなど、ありえない。


「ロウ。」

「は、はい。」

「先の、シルビア公爵令嬢確保の任。ご苦労であった。オーネット領に向かって、何か不審な点はなかったか?」


議会に参加している者たちが一斉に視線を向けてくる。別に臆したりはしないが、なかなか面白いものだ。公爵令嬢とは言え、子供が議会に参加していることを不満に思っていたり、興味津々で私の話を聞こうとしている者たち、さまざまだ。


「私が向かったのは、オーネット公爵様が助言をくださった、ミレニアフォストの森です。そこでシルビア嬢を発見できたのは、正しく幸運と呼ぶしかありません。移動の際は、空を飛んでいましたので、地上の様子は確認できませんでした。」


ヘラクレスについては、まだ黙っていることにした。あれは、・・・直感だが、別件のように思えたのだ。なぜ帝国領土にあんな魔物がいたのかはわからないけど、少なくとも領城付近には近づいていないため、下手なことを口走って議会を混乱させるわけにはいかない。


「うむ。先日向けた騎士団から報告を待っている暇はない。誤報でもなんでも、オーネットへはさらに戦力を向けねばなるまい。」


頭を抱えるジエトに、クリスハイトは苦言を呈した。


「しかし陛下。これ以上王領の騎士団を減らすわけにはいきません。」

「なにも騎士団ばかりが帝国の戦力ではあるまい。アーステイル家の総力を挙げて、この事態を終息せねばならん。すぐに、王領の全都市へ使いをよこし、可能な限り戦力を集めよ。ウンウォル、そなたには悪いが、それらと同行してもらうぞ。」

「はっ。」


彼も、行ったり来たり大変なものだ。


「陛下、オーネット公爵の娘の嫌疑はいかがいたすのです?そもそもオーネット公爵が、ここにいるのも、帝国反逆の嫌疑を駆けれらているからではありませんか?この事態もオーネット家の陰謀である可能性も・・・。」


文官の言うことは確かにそうだ。冷静に考えれば、全てオーネット家が画策したと考えるのが妥当だが、シルビアのあの様子を見てしまった私には、そうは思えない。ただ、それをここで言うべきか正直微妙なところだ。


仮にオーネット家に反逆の意があり、この状況も全て彼らの計画だ通りだとしたら、下手に口を出さず、オーネット領へ戦力を差し向けるべきだろう。けど、シルビアが何者かに操られていたという情報一つで、また別の勢力がこの問題に介入しているという事実を議題に持ち込んでしまう。そうなればまた後手に回ることになる。


こうして私が考えている間にも、オーネット公爵を責め立てる声は大きくなっている。これだから誇り無き政治家は・・・。ウンウォルとて、好きでここにいるわけじゃない。それでも自分の立場を悪くしないために、あえて黙っているというのに。好き放題言って、いったい何が楽しいのだろうか。


「陛下!」


場を鎮めるため、また私の中での結論が出たため、あえて野次を遮って議会の中心へ出た。


「シルビア嬢を確保する際、一つ、不審な点がございました。」

「不審な点?」

「はい。私がシルビア嬢を発見したのは、オーネット家が所有する、ミレニアフォストの森にある別荘でした。彼女はそこで何者かに襲われた可能性があります。両肩を槍のようなもので貫かれた形跡があり、別荘の中で眠らされていました。さらに、建物に火を放たれ、まさに暗殺されようとしていた最中でした。」

「暗殺だと!?・・・はじめは、そなたが狙われているものだと思っていたが、オーネット家も狙われているということか?」


さすがは帝国の国王、話が早くて助かる。今言ったことは半分ほど嘘っぱちだけど、シルビア自身も、何者かに狙われているのではないかと私は考えているのだ。


まず初めに、北部戦線にて、ヴァンレムの部隊を率いていたはずのシルビアは、なぜか部隊を放棄し、ヴァンレムを使って自領まで最速で戻ってきていた。彼女のことは嫌というほど知っているから、ある程度その理由は想像がつく。


冷静な彼女が何の理由もなく戦線を離れるとは思えない。少なからず理由があったはずだ。そして、シルビアとて人間。時には感情的になることもある。彼女が何よりも大切にしているもの、それに危険が及んだ時だ。


「暗殺とは言うが、ロウ殿。シルビア令嬢は、つい先日まで北部戦線にいましたのですぞ?それが、何の理由があって自領へ戻ったのかは知りませんが、それを予測できるものなどいないのではないでしょうか?」


物事に対して、常に否定から入るのはいいことだ。特に議論においてはそうだ。ぽっとでの小娘令嬢が言うことなど、世迷言と思う連中もいるのも当然。けれど私は、決して思い付きで話をしているつもりはない。


「シルビア嬢は、次期オーネット公爵位を継ぐお人です。年若くも、その才覚は誰もが認めるもの。そんな方が、自身の部隊を放棄してしまう理由を考えたことはありますか?」

「ふん。そんなあってはならないことを考える理由こそ、必要のないものでしょう。」

「あってはならないこと。確かにそうですが、では言い方を変えましょう。起きてしまったことの理由を考えるのが、今は先決だと私は思っています。シルビア嬢が、戦線を離れてまでしたかったことを。」



こういう陰謀とか、事件の真相を暴くみたいな内容、考えるのすっごい大変(*´Д`)。

ちゃんと辻褄合うように書けるかな・・・。

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