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ロードオブハイネス  作者: 宮野 徹
第三章 陰謀渦巻く貴族社会
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和解

半焼したオーネット家の別荘で、私とシルビアは、アレンの魔法によって血止めを行っていた。


「ほんと、龍族ってなんでもできるのね。」

「言うほど万能じゃない。あくまで一時的な止血だけだ。無理はするなよ。すぐに開く。」

「ええ。ありがとう。」


彼の言う通り、左肩も、右の足首も、血は止まったけど、痛みは変わらずだった。いったいどんな魔法なのか興味があるけど、異性化の住人の魔法だから、私が知る原理とは異なるものなのかもしれない。


シルビアにも止血を施したアレンは、怪我をした個所に包帯を巻くのを手伝ってくれた。


「正直意外だったよ。」

「何が?」

「あんた、武闘派だったんだな。」

「いや、ああしないと、この人に勝てないから。他に選択肢がなかったのよ。命を取るわけにはいかないし、それでも正気の彼女だったら、もしかしたら小細工を見破られてたかもしれないわ。」


大魔法を囮にして、目くらましにするという考えは、一種の賭けでもあった。正気を失っているとはいえ、彼女の戦い方を知っているからこそ取れた策だ。力づくで正面からの戦闘、決して後退しない誇りの高さを利用した小細工に過ぎないのだ。


「この世界の人間は、魔法でここまでの戦いを繰り広げるんだな。」

「・・・龍族からしたら、退屈なものだったんじゃない?」

「いや、正直驚いているよ。俺のいた世界じゃ、そもそも魔法自体が人間の間では普及してないからな。」


それは、なんというか、つまらなそうな世界だと思った。この世界に転生して、少なからず私は魔法というものに魅了されたし、それだけで人生を楽しむことが出来るだろう。


「あんたに、魔獣の討伐を任せて正解だったかもな。」

「まだ一体も倒してないじゃない。」

「いや、協力関係とはいっても、結局は俺自身が手を下すんだろうなって、思ってたから。」

「・・・あの、アレン。」

「ん?」


こうして時間が少しできたことだから、王城でのことを謝りたかった。ただ、どう言葉にすればいいかがわからない。アレンとは、対等な関係でありたい。最初は訳の分からない不思議な縁から始まった私たちの関係が、あの時確かにすれ違ってしまったような気がするから。


「私のこと、傲慢だって言ったよえね?」

「・・・・・・・ああ。そうだな。」

「はぁ、正直なこと言うとね、あなたのこと見くびってた。人の姿でありながら、人間じゃないから。人間の世に振り回されるのは嫌なんだろうって。それこそ、陛下に対して、私と同じような態度を取ったり、帝国の法なんて気にも留めない、異種族なんだって思ってた。」


だからこそ、私は彼の龍の姿を世間に晒しても何ら問題ないと思った。事実民衆たちにとっては、彼が龍なのか翼竜なのかはどうだっていいことだ。彼らに目に映るのは、正体不明の魔物であることには変わりない。でも、アレン自身がどう感じるかを考えていなかったのだ。


「あんたの言うことは事実さ。俺は龍族だ。人間のやり方に従う理由はない。だから、気にしなくていいぞ?」

「ううん。あなたは傲慢だって言ってくれた。そんな行いはしたくないって、伝えてくれた。本当は、まず最初にあなたと話し合うべきだったのに。筋を通さずに、私の独断でことを進めてしまった。・・・あなたの言う通り、傲慢な行いだわ。」

「・・・・・・。」

「私、貴方とは対等な関係でいたい。あなたは私に話せないことや、隠していることがあると思うの。それもあって当然だと思う。でも、まず最初に私から言わせて?私は、貴方に隠し事をしないと約束するわ。」


他人に名を訪ねるときは、まずは自分から名乗る。相手の懐に入りたければ、まずは自分の懐を開かねばならない。相手の思惑を知りたければ、自身の思惑を共有すべきだ。


そういうやり方は、権力を持つ者の間では、非効率的とされる。可能なのであれば、力ずくで奪ってしまえばいい。それが出来るなら、許されているなら、そうすべきだと、貴族は考える。人はそれを傲慢と呼ぶけれど、そうでもしなければ、国は成り立たない。綺麗ごとだけで世の中は回らないからだ。


けれど、私とアレンの関係は違う。少なくとも私が彼と共に望む関係とは、友達と呼べるものだ。それを作り上げるために、私は宣言しなければならなかったのだ。


「時間がある時でいい。少しずつあなたのことを知れたらいいと思ってる。」

「・・・それは、龍化の本能に看過されたものじゃなくてか?」

「ふふ。変な誤解しないでね。私は、本当にあなたと友達になれたらいいと思っているの。・・・それだけよ。」


それだけ告げて、私はシルビアの容態を確認することにした。それ以降、アレンはそれについて何も言ってこなかったが、今はそれでいい。彼がこの先、心を閉ざしてしまっても、その時はその時。いやむしろ、その時こそ、傲慢に彼にすり寄っていくのも悪くないだろう。


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