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ロードオブハイネス  作者: 宮野 徹
第三章 陰謀渦巻く貴族社会
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性格悪悪女

北部戦線に向かっていた、フィリアオールの使いが戻ってきたのは、深夜のことだった。


王城の側仕えにたたき起こされたかと思ったら、事態は予想以上に渦巻いているようだった。


「行方不明!?」

「はっ、シルビア公爵令嬢は現在、戦線より姿を消しており、その所在はつかめておりません。」

「・・・とにかく、詳しい話は、応接間で聞きます。準備をするので、先にいっててください。」


使いが知らせてきたのは、あの性格悪悪女が行方不明だということだった。本当であれば、今頃彼女の神妙な面持ちを見ながら、いろいろと問い詰めていたところなのに。


ともかく、冷静にならなければ。行方不明となっているのなら、エレオノールでも騒ぎになっているはずだ。ヴァンレムを指揮する彼女がいなくとも、部隊そのものは機能するが、指揮官不在は、士気に大きく関わるし、なにより、彼女単体での戦力ダウンは、大きな痛手になるだろう。


眠気を押し殺しながら、上にローブを羽織って応接間に向かうと、既にフィリアオールも来ていた。彼女も随分な起こされ方をしたようだ。


「フィリアオール様。」

「シルビア嬢が、行方不明だそうですね。」

「はい。まだ子細はまだ聞いておりませんが・・・。」


彼女は口元に手を当てて、眉根を寄せていた。しばらくして、オーネット公爵もやってきて、とりあえず話を煮詰めることになった。


「娘が、行方不明というのは、本当ですか?」

「私の使いの者からの情報です。入ってきなさい。」


応接間の外で待機していた使いが入ってきた。


「はっ、報告いたします。北部戦線のアダマンテ公爵様より、オーネット家シルビア様の捜索願が出されております。現在、シルビア様が指揮されていたヴァンレムの部隊は、アダマンテ公爵に指揮を仰いでいて、戦線での以上はないとのことです。」

「ですが、指揮官が突然いなくなるというのは、あってはならないことです。シルビアが故意に戦線を離れたのだとしたら、部隊を放棄した挙句、現状の彼女への容疑を深める要因となってしまいます。」

「ま、待ってください。王妃様。娘は、何の理由もなくそのようなことをする者ではありません。きっと、何かに巻き込まれているはずです。」


オーネット公爵は必死だった。自分の娘が、自分の預かり知らぬところで予想外の行動を取っていることに、彼自身も動揺しているのだろう。


「そうかもしれませんが、容疑に駆けられている現状では、事実のみが判断材料です。とにかく今は、シルビアの捜索を行います。」


捜索とは言うが、現在王領騎士団は、ほとんど北部戦線に出払っている。捜索に動かせる人員は、かなり少ない。ただでさえ、戦時で何もかもが忙しいというのに。


「フィリアオール様、ロウ殿。どうか、温情を。娘は、・・・きっと何かの間違いです。」

「・・・使いの方。シルビア嬢が行方不明になってから、どれくらい経ちますか?」

「はっ、詳しい日数まではわかりませんが、捜索願が出されたのは、ロウ様がフォルゾを経った翌日だということです。」


そんなに前から!?だとしたら、私が北部戦線からアダマンテ領城へ戻ろとしたときには、既に行方をくらましていたということだろうか。


「シルビア嬢に、私をどうこうする意思があったとして、私がフォルゾの街を出たのと同時に動き始めれば、いろいろと話がつながってきます。移動にヴァンレムを使えば、一日もたたずにオーネット領城へ帰還し、そこからアダマンテの領城へ間者を向かわせれば、テムザの街で、私を襲撃をすること自体は可能です。」

「オーネット領の私設部隊にも関わらず、わざわざ出兵して北部戦線へと向かい、ロウの動きを把握しようとしていた、とも考えられますね。」

「・・・ですが、全部憶測にすぎません。彼女のほかに、行方をくらましたものはおりませんか?」

「それについてですが、シルビア嬢の副官である、ヒヨリ部隊長も同時に姿を消しているそうです。」


シルビアの護衛として、ついていったのだろうか。あの女に護衛が必要とは思えないけど、副官としてついていかないわけにはいかないだろうから、その線はありえない話じゃない。


「部隊を預かる指揮官が二人も同時にいなくなるなんて。はぁ、悩ましい限りですね。オーネット公爵?」

「は、はい。」

「今はシルビアの安否を確かめることだけを考えなさい。容疑はあくまで容疑。詳しい話は、本人から直接聞くしかありません。」


この様子だと、オーネット公爵はまともな判断はできないだろう。公爵家としてではなく、父親としての心配が大きくなり過ぎた。私情を交えて話を詰めるのは、合理的ではない。


「ですが、フィリアオール様。捜索と言いましても、動かせる人員はそれほどいません。向こうが本当にヴァンレムを使っているのだとすれば、たとえ発見しても捕えることは困難です。」

「王領騎士団がいないだけで、使える人員がいないわけではありません。それに、シルビアにやましいことがなければ、抵抗することもないでしょう。」


つまりそれは、もし本当にシルビアが主犯だという疑いがあれば、問答無用で断罪していいということだろう。


「今帝国が向き合うべきは、北部戦線の維持です。そんなさなか、このような事件にいつまでも付き合っている場合ではありません。早期解決のためにも、皆、最善の選択をしてください。オーネット公爵、よろしいですね?」

「は、ははぁ。」


なんだかんだ言って、フィリアオールに逆らうことなどできはしない。ヘイローズに引きこもっていようと、その威厳ぶりは全く衰えていない。王を支えるものとしての覚悟ある人だ。全ては帝国のためという大義を全うしているのだろう。


「フィリアオール様、シルビア嬢捜索に関してなのですが、私に策がございます。」

「ふむ、策、ですか?」

「はい。私は今、ジエト陛下よりの特命を受けて、魔獣の討伐を請け負っております。現状そちらに関しては、ハンターズギルドに依頼をしていたところです。」

「なるほど、市井の武装組織を使うということですね。」

「はい。彼らの戦闘力は、騎士団ほど安定したものではありませんが、情報収集力に関して言えば、私たちの比ではありません。」

「・・・確かに、それぞれのギルドに配置されたハンターの数は少なくとも、彼らには横のつながりが大きいですからね。いいでしょう、王領のハンターズギルドに要請をしましょう。シルビアが移動にヴァンレムを使っていれば、帝国内部でその情報を得られないということはないでしょうからね。今はとにかく、一刻もはやくシルビア嬢の身柄の確保を優先します。」


フィリアオールの言葉をもって、応接間に集められた者たちは、それぞれ自分のいるべき場所へ戻っていった。私もこのまま部屋に戻って仮眠を取りたい気分だったが、この状況では、そうもいっていられないだろう。


「フィリアオール様、私もシルビアの捜索に加わります。」

「ろう、陛下からの特命はいいのですか?」

「どの道魔獣退治は、時間を要するものですし、父の友人にいろいろと任せているので、今は大丈夫でしょう。それよりも、私は空からの捜索を行おうと思います。」

「空?まさか、ロウ。その翼で飛ぶつもり?」


彼女の驚いた表情には首を振って否定しておいた。残念だが、完全に形成された翼でも、空を飛ぶにはまだ時間がかかりそうだったのだ。しかし、翼竜がいなくとも、もう一つの方法がある。


「アレンに、協力を仰ごうと思っております。」




前話では、面白く書けているかわからない、などと言ってしまって、申し訳ありませんでした。

もともと面白く書けているかわからないでした。

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