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ロードオブハイネス  作者: 宮野 徹
第三章 陰謀渦巻く貴族社会
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アダマンテの価値

帝国は今、戦時中だ。敵は魔物だけど、国の存亡がかかっている大きな戦。


そんな最中でもあるのに、私は狙われてしまっている。敵はこの機を狙ていたのかは定かではないが、下手に動きを見せてくれたおかげで、こっちも動きやすいのだ。


テレジア家長のフロストが、王妃と公爵家令嬢の護衛として、魔法師団を動かしたことは、あえて大々的に広めた。敵の黒幕がどこから見ているかはわからないが、こちら側の勢力をチラつかせて牽制するというフィリアオールの策だ。アーステイル分家のテレジアが、実質私たちに協力する姿勢を見せて、敵に危機感を与えているのだ。もっとも、ここまでやってしまったのだから、こちらの牽制に臆して行動を鈍らせたところで、意味はないだろう。フィリアオールは本気でこの件に、終結に至らせるつもりなのだ。手を止めても、既に手遅れだ。


「で、俺たちも行くのか。」

「ええ。狙われているのは、どういうわけか私みたいだから、このまま放置しておくことも出来ないわ。」

「魔獣はいいのか?」

「そんなすぐには見つからないわよ。今はたぶん、帝国全土に情報を発信している頃でしょうから。」


それに、仮にハンターたちだけで魔獣を討伐できてしまったのであれば、それはそれでしっかりとした報酬を払うだけのことだ。


「ごめんなさい。あなたの役目を後回しにしてしまって。」

「・・・いいさ。ついていくといったのは俺の方だ。別に、急いでいるわけでもないしな。」

「本当に不服だったら言ってね?」

「いいって。お互い、気楽にいこうぜ。」


無邪気で浮世離れした人ではあるけれど、連れとしてはとてもありがたい存在だった。たぶん、長く生きているからか、普段から感情の起伏がないのだろう。怒ったり、悲しんだり、そういうことになれてしまったのか、あるいは、初めからそんな感情を持ち合わせていないのか。変に気を使わないで済むから、とてもありがたい。そんな彼と絆を結ぶというのは、なかなか難しいかもしれないけど。


魔法師団に囲まれながら、グランドレイブの山道を上る道のりは、退屈なものではあるけど、私の頭の中は今後の戦いに備えての策でいっぱいだった。戦いというのは、もちろん黒幕をあぶりだすという戦いだ。敵の狙いを見定め、黒幕を処断する。これ以上被害が出る前に、見つけ出す。被害を出そうというのなら、全力で抗って見せる。私も、腹黒い貴族社会は好きではないけれど、矛先を向けてくる相手に、黙って座すつもりはないのだから。




グランドレイブ頂上の王城へたどり着き、私とエルザとアレンは、とりあえずフィリアオールの客人として迎え入れられた。しばらく滞在することになるだろうから、部屋も与えられ、王城の側仕えも割り振られた。


「あんまりうろちょろしないでね。」

「わかってるよ。にしてもすごいところに、城が経ってるな。」


帝国の最高度に存在するこの王城も、魔法による技術があってこその建築物だ。ヘイローズほどではないにせよ、この城にも魔法道具等がちらほら置いてある。さすがにテレジアの城のように領域魔法までは施されていないが、それでも十分すぎる機能だ。


フィリアオールと共に私は、審問会の準備を行っていた。司法省を訪ね、陪審員らを集めたりした。フィリアオールの使いは、優秀ですでにオーネット公爵、およびシルビアを、連行する準備が整っているという。オーネット領の公爵、ウンウォル・オーネット・アルバトロス。彼は、年が明けると同時に公爵位を娘のシルビアに譲渡することにしていて、実権はほとんどシルビアが持っているが、現状のオーネット領公はウンウォルだ。親子どちらかが陰謀を企てているかわからない以上、どちらも招集するしかない。もちろん、彼らが主犯だと決まったわけではない。だか、ヘイローズの離宮を襲った騎士たちが彼らの名前を口にした以上、取り調べをするほかない。


ウンウォルはともかく、シルビアの方は到着までにかなりの時間を要するだろう。何せ、帝国北部の最前線で、自ら戦闘指揮をとって戦っているのだから。なので、先に到着するウンウォルの告白を聞くことになった。


今回の審問会は、王妃自ら開いたということもあり、王城ではかなり大きな噂になっていた。当然、帝政のために奮闘しているジエトの耳にも入っており、彼の仕事を増やさないためにも、私たちが手早く事態を収拾させなければならないのだ。


オーネット公爵を待つ間、私はフィリアオールの元で雑務を手伝っていた。王妃の雑務はとは、国王が処理しきれなかった書類や細かな部分の整理だ。こうやって、彼女の元で仕事を手伝うのも、なんだか懐かしいものだった。


「ロウ。あなたはどう考えてる?」

「どう、とは?」

「狙われる理由に、何か心当たりはあって?」


それに関しては、本当に見当もつかない。私を反逆者に仕立て上げようとしていた、オーネット領の騎士たちが、あれで芝居をうっていたとも考えられない。おそらくは、私を捕まえて何かをしようとしていた。それくらいしか思い浮かぶことはない。


「私には何も、戦場でのことは聞いていますか?」

「ええ。あなたが、彼、アレンと共に反逆の罪に問われそうになったのは知っているわ。でも、それとは関係がないと思うわ。」

「はい。それに、関係あるかはわからないのですけど、先月の貴族会議で、エクシアから縁談話がありまして・・・。」


私はそのことについても、事細かに説明した。


「ロイオの使いじゃないかもしれない、と言いたいのね。」

「はい。エクシアからの使いとは聞いていたのですが、当のロイオ様は、そのこと自体知らない様子でしたから。今回のことも含めて、私から何かを得ようとしているのは間違いないと思います。」


それが単に竜使い(ドラグーン)の血統なのか、私の命なのかはわからない。けど、どちらにしてもやり方が粗雑すぎる。命を狙っているのなら、もっとたくさんの暗殺者を送ってくればいいだけの話だ。こっちが貴族であることはわかっているのだから、それなりの手練れを送り込んできてもおかしくはないはずだ。


「アダマンテの血が欲しいと考える輩は、いくらでもいるでしょうね。あなたは王妃候補されるほどの逸材だもの。例え身分違いでも、婚姻を結びたい家は五万といるはず。」

「私も、少し、傲慢さが過ぎたかもしれませんが、この世界では特に可笑しなことでもないと思っています。むしろ、よりよい血統を求めるのは、アダマンテも同じです。」


正面から縁談を申し込んでも断られるのをわかっているから、こんな卑劣な手段に及んだのだとしたら、救いようのない阿呆だけど、・・・どうにも嫌な気持ち悪さが残ってしまう。そんなことをする者らが、この帝国にいるとは思えなかった。自惚れているわけじゃなくだ。


「歴史的に見ても、血筋を求めて戦争が起きた例は、この帝国にはありません。よい血筋を持つ家系は、それだけで強いですから。戦争を起こしても勝てるはずがない。」

「にもかかわらず、アダマンテという名家を狙い、今一触即発の事態を引き起こしている。理性的とは言えないわね。」


アダマンテは、公爵の中では一番勢力が小さな家だと言われている。それは、帝国の北部という、地理的に恵まれた土地ではないからだ。寒さによって食物の育ちが悪く、年中魔物の侵攻などが起きていれば当然だ。だからこそ、アダマンテは弱者の戦い方をしてきたのだ。他者を頼り、友人を作り、そして、協力し合う。間違っても、敵を作るようなやり方はしてこなかった。


しかし、そんなアダマンテ家でも、帝国が誇る公爵家の一つだ。8万もの帝国騎士団を従える、帝国の一角を担う勢力であることには間違いない。


「公爵家と対立することがどれだけ無謀なことがわからない人間か、あるいは、本気で戦う気がある相手、ということでしょうか?」

「・・・相手が大馬鹿者なら、そうかもしれませんが、むしろ、対立を煽っているようにも感じます。」

「それを狙ってやっているのだとしたら、大したものですが・・・。」


まだオーネット家が黒幕と決まったわけではないから、まだ何とも言えない。テムザの街で襲ってきた刺客の情報も、いずれハイゼンから届くだろう。


「嫌な予感がしています、私・・・。」

「奇遇ね、ロウ。私もよ。」



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