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ロードオブハイネス  作者: 宮野 徹
第二章 龍との契り
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作戦会議

アダマンテ領城へ、私たちは無事にたどり着いた。


ついて早々、領城の管理を任せていたハイゼンに事の事情を話し、彼には引き続き領城の管理を任せると同時に、ここを私たちの魔獣探索の中心地とすることにした。まだ何も動き出してはいないから、とりあえず、別邸で少し休憩をすることになったのだが、


「・・・一応私の私室なんだけど。」

「・・・お邪魔しています。」


流れで一緒に入ってきたけど、この部屋に男をあげるのはもしかしたら初めてのことだったかもしれない。アレンは人間ではないから、その手の恥じらいはほとんどないのだろうけど、私の気も少しは察してほしいものだ。


エルザは、一応他家の従士だから、別邸のフロントで待機してもらっている。まぁ、アレンも置いて来ても良かったのだが、別に彼には何を話しても構わないだろう。


「お嬢様の暮らしは、思っていたほど優雅なものじゃなさそうだな。」

「私に何を期待しているかは知らないけど、人間の暮らしなんて、そう変わり映えはしないわよ。」


普段であれば、ライラにお茶を入れてもらって、のんびりテラスに座りながらおしゃべりに興じて居たいところだけど、今はその時間さえも惜しい。


「それで、どこから探し始めればいいの?」

「どこって言われてもな。この国にいるかどうかさえ分からないんだから、くまなく探し続けるしかないだろうな。

「それって、帝国中を探して、いなかったら領土外を探すってこと?そんな効率の悪いことしてたら何年経っても見つけられないじゃない。」

「そう言われてもな。」


アレンは、思っていた以上に役に立たないようだ。実際、異世界の住人が、他の世界になじむのは無理な話だろうが、もう少し論理的に会話が出来ないものか。


「じゃあ、魔獣の特徴ってのを教えてよ。何かないの?」

「特徴・・・ね。初めて俺と会ったとき、龍の姿の頭に異質な角があったの覚えてるか?」

「ええ。あなたが折ってくれって頼んだあれね。」


かすかな声を頼りに、魔法で砕いたのを覚えている。もしかすると、あれが魔獣の特徴なのだろうか。


「あれは、邪龍が俺につけた、服従の証だ。あれのせいで、俺は、今のあんたみたいに不自由な意識と体になってしまった。」

「邪龍によって操られていたのね?」

「正確には、自由を奪われたといった方がいいだろう。実際には邪龍はこの世界へは来ていないんだからな。」


あのまま、アレンを暴れさせていたら、もっと取り返しのつかないことになっていたかもしれない。そう思うと、やはり、全ての根源は、邪龍にあるのだと思う。しかし、邪龍の目的はいったい何なのだろうか。もともと彼のいた世界にいる邪龍が、いったい何のために魔獣を送り込んだのだろうか。


「おそらくだが、送り込まれた魔獣にも、同じように服従の証がつけられていると思う。」

「なるほどね。それが魔獣の証になるなら、探しようがあるかもしれない。」

「本当か?」

「ええ。すこし、面倒なやり方だけどね。この国には、騎士団とは関係ない私兵がいるんだけどね。彼らに協力を仰いで、魔獣討伐をしようと思うの。」

「私兵?」

「ハンターよ。魔物を狩って、お金にする人たち。魔物の被害は、基本的に帝国国境付近で起こるから、領土内じゃあまり見かけないけど、国境線沿いにある街々にはハンターズギルドがたくさんあるの。」

「それだと、領土内の探索はできないんじゃないか?」

「いいえ。彼らの目的は、国境を守ることじゃないもの。魔物いるところにハンターありってね。帝国内部でも、時折魔物の被害は出るものよ。有翼型が空から侵入したりとか、人目を避けるように国境を超える狡賢い魔物もいる。そういう魔物たちに対して、騎士団だけで対処できない場合、ハンターズギルドに、帝国が依頼として要請することがあるの。」


ただ、今回の場合、いるかどうかもわからない魔物捜索を依頼するというのは、いささか無理があるだろう。報酬を支払うとはいえ、彼らも無駄に働かされるのはごめんだろう。


「ハンターズギルドね。魔獣討伐が出来るくらいの強者もいるのか?」

「傭兵みたいなものだから、腕はピンきりよ。でも、ハンターズギルド独自の情報網を利用すれば、捜索は私たちだけで行うよりはぐっと楽になるわ。」

「なるほどな。」


アダマンテ領城の城下街にも、ハンターズギルドの支部は存在する。まずはそこから当たってみるのが良いだろう。その支部には、公爵家が好意にしているハンターもいるのだ。とりあえず話を通せば、道筋が見えるかもしれない。


「ハンターね。どうやら龍の姿に成ってる暇はなさそうだな。」

「いや、ならないでよ。人の姿でいるの嫌なの?」

「俺は別にいいんだが、あんたはいいのか?」

「私?」

「また発作が起きたら、人の姿だと、口移しだぞ?」

「・・・。」


そうだった。その問題があった。いや、口づけをすることを嫌悪しているわけじゃなくて、そういう行為を、人前でやらなければならないことが、よくないと思っているだけで。私は別に・・・。


「・・・この際プライドとかは気にしない。我慢するわよ。」


好きでもない男と我慢してキスするのもどうかと思うが。こっちは、半分命がけのようなものだ。別に発作を無視しても死にはしないだろうけど、どうしようもない苦痛を軽減させるためだ。背に腹は代えられない。


「龍化に関しても、ちょっと調べないとね。いつまでも口づけで済ませたくないし。」

「・・・。なぁ、体に異変とかはないか?」

「へ?」

「見た目からして、龍化って言ったけど、翼は散ってるし、腕の模様もそんなに広がらないだろう?もしかしたら、逆なんじゃないかと思ってな。」

「逆。元の姿に戻ろうとしてるってこと?」

「あぁ。でも、それなのにお前の体は俺の魔力を求めてしまう。どうしてだろうな。」


その流れでどうしてと言われても、実害を受けている私としては、どうにかしてほしいものなのだが。アレンの言うことが的を得ているとして、龍化ではなく、一時の龍化、から元に戻ろうとしているのなら、魔力を摂取することは意味のないことなのだろうか。むしろ、阻害してしまっている可能性だってある。もっとも、あの発作を抑える術は今のところ他にない。


「はぁ。私の体、どうなっちゃうんだろう・・・。」


発作さえなければ、別に翼が生えようが、腕が異形化しようが、気にはしない。まぁ、人としての尊厳をある程度捨てないといけないかもしれないけど。アルハイゼン亡き今、誰かと結ばれたいとも思わないし。本当に、発作さえなければ・・・。


「それに関しては俺もわからん。経過観察して、おいおい見極めるしかないな。」

「そう、ね。」


自分の体も心配だけど、今はとにかくジエトから受けた名をこなすことが大事だ。


「じゃあ、準備して城下のハンターズギルドに行きましょう。」

「あぁ。できれば私兵として雇えたらいいな。エルザだけじゃ心もとない。」

「行ってから、考えましょう。ライラ、いる?」


部屋の扉の向こうにいるであろうライラに声をかけると、彼女はすっと静かに入ってきた。


「はい。お嬢様。」

「ハンターズギルドに行くから、旅支度をお願い。それとアレンにも、旅の装備一式を用意してあげて。」

「かしこまりました。」


ライラに促されたアレンだが、どうやら意味が分かっていないらしく、首をかしげていた。


「アレンさん?」

「ん?なんだ?どういうことだ?」

「はぁ。着替えるから、出てって。」


一日さぼってしまった。

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