アレンのお家
リンクスの使いの者が私も元へやってきた。最初は、ジエトからの伝言か何かがあると思っていたのだけど、どうやらアレンの隠しどころへ案内してくれるそうだ。
連れていかれたのは、フォルゾの街の端っこだった。そこに不可解な岩山があって、中が空洞のようになっている。どうやらジエトは、アーステイル家の力を使って、即席の洞穴を生み出してしまったらしい。洞穴の入り口には、当然のようにリンクス家の使いの者が見張りをしていて、住民が間違って入らないようにしていた。
なんとも豪快な解決策。もっと他にやりようはなかったのだろうか。まぁ、龍の姿のアレンを隠しておくのに、これほど便利なものはないだろうが。エルザと、そしてライラにも同行してもらって、アレンの元へやってきた。どうやら洞穴は地下に向かって伸びているようで、ご丁寧にその道のりは階段状になっていて、短時間でこんなことをやってのける大地の記憶という力に心底驚かされた。
地下は篝火が焚かれていて、水が流れる音が聞こえる。いったいどこから水を流しているのだろうか。まさか地下水脈を引き当てたとかではないだろうが、それなりの大きさの池がある。その傍に、龍の姿のアレンがとぐろを巻くように居座っていた。
「これが、あの青年なのですね?」
初めて姿を見るライラは、恐る恐る聞いてきた。エルザも、言葉にはしなかったが、心底驚愕している様子だった。
「うん。怖いよね。でも、安心して、彼、襲ってきたりはしないから。」
龍の姿でいれば、体は大きいけど、なかなか愛嬌のある姿をしている。私にとっては翼竜を相手にするのと同じ感覚だ。
「アレン?起きてる?」
――― ロウ キタノカ イイダロウ ココ ―――
「いや、くつろぎすぎでしょう・・・。私たち、一応軟禁されている身なんだから。」
――― ソウイワレテモナ ―――
彼はそういうと、全身から眩い光を放ち始めた。光は徐々に収縮していき、やがていつもの青年の姿へと変わった。
「もともとこういう巣穴で暮らしていたんだ。なかなか話の分かる国王様だな。」
「あのねぇ・・・。」
緊張感がないというか。まぁ、彼の性分なのだろうけど。私の心境とは大違いだ。
「食べ物とかは大丈夫なの?」
「5日に一回外へ出ていいって言われてる。」
「そんなんで平気なの?」
「あぁ。龍族は人間なんかよりも頑丈な生き物だからな。水があれば餓死することもない。龍の姿でいればなおさらだ。」
それはまぁ、なんというコスパのいい生き物だ。確かに洞穴の中には水場と彼が寝床としている干し草しかない。匂いも何もしないため、用を足すこともないのか・・・。本当に生物なのだろうか。
「じゃあ、意外と快適なのね。」
「おう。それで、何か用か?」
「ううん。別に。あなたがどうしているか様子を見に来ただけ。あと、一応補充もね。」
私がそういうと、彼は意図を察してまた龍の姿へと変異してく。干し草の上でくるくる回ってから好みの姿勢になって落ち着いた。こうやって見ていると、意外と翼竜と似ている部分がある。愛くるしい生き物にも見えてきた。
とりあえず私は、前足の甲殻に噛みつかせてもらい、魔力の補充を行った。発作が起きていたわけじゃないから、満足感などはなかったが、体の中へなだれ込むように魔力が移る感覚が、以前よりも鮮明に感じ取れた。これは、もしかしたら龍化が進んでいるということだろうか?でも、翼も変異した腕も、あれから全く変わり映えはしない。翼に至っては羽が抜けすぎて、もはや到底飛べそうもないものになっている。こんな異形な姿に変わってしまったことは、もう仕方がないとしても、せめてもう少しいい見てくれになってはくれないだろうか。




