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ロードオブハイネス  作者: 宮野 徹
第二章 龍との契り
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これからの身の振り方

フォルゾの街の宿や、空き家となっている建物は、そのほとんどがリンクスとエクシアの勢力によって、貸し切りとなっていた。この街に納める貴族も自治会も存在しないため、管理人との交渉次第で、そういうことも可能なのだろう。国王と王弟に対して、断る帝国臣民などいないだろうが。宿屋は国から金を払ってもらえるし、空き家の管理人も、埃だらけの建物を掃除して使えるようにしてくれるのであれば、喜んで貸してくれるだろう。


そんな中でも、一際大きな宿の一室を、ロイオは私に貸し出してくれた。広いといっても、アダマンテの別邸の私室には遠く及ばない、いわゆる一般的な個室だ。フォルゾの仲であれば出歩く自由は与えられているが、随分と狭い箱庭に閉じ込められたものだ。


部屋の名かも、必要最低限の物資しか置いておらず、退屈しのぎに魔導書を読み耽ったりはできなさそうだ。


「ごめんねライラ。こんなことに巻き込んでしまって。」

「お嬢様が謝られることではありません。主が、たとえ罪人になろうとも、私共は主についていくだけでございます。」

「・・・ありがとう。」


私につけらた従士は、ライラを含め3人。一人は、以前からライラと共に身の回りの世話をしてくれていたシルキィ。もう一人は新人メイドのルージュ。そしてエクシアから、監視役として、エルザという元騎士だという人がついた。


「これから、よろしくお願いします。」

「当主様より、話は聞いております。監視という名目ではありますが、護衛やそのほかの任も兼任していますので、御用があればいつでもお申し出ください。」


彼女の立ち居振る舞いは、騎士らしい凛とした佇まいで、鎧こそ身にまとっていないものの、腰には、女が扱うようなものではない、幅広の剣が吊るされていた。元騎士だということから、相当腕もたつのだろう。


さて、これからについてだけど、帝国は魔物との大きな戦のさなかにあるが、今回の件で、私は蚊帳の外にされてしまった。変に話をややこしくさせないために、こうやって隔離されてしまったのだが、私は、ジエトに何らかの思惑があると考えている。わざわざ自分と実弟であるロイオを使ってまで、こんなことをしたのだから、おそらく私とアレンに何かをさせるつもりなのかもしれない。


今ジエトは、最前線のエレオノールの拠点にいるらしいが、密書でもなんでも送って、やりくりするつもりだろう。


それはいいとして、今はエクシアだ。


「エルザ、すこし、聞きたいことがあるのだけれど。」

「何でございましょう?」

「ロイオ様から、なにか言伝を預かってたりはしませんか?」

「いえ、特にそのようなことは。・・・例の、縁談の話でしたら、私も警戒するよう言い渡されています。」

「やっぱりロイオ様も、そのようなおつもりはなかったのですね?」

「我らがエクシアに、そのようなことを企む輩がいるというのは、残念なことです。」

「・・・。」


主の威光を借りての行動だとしたら、確かに良くないことだが、実際エクシアとしては、アダマンテとの縁談が決まれば、それはそれは、大いに喜ぶのではないだろうか。エルドリックと私が結ばれれば、必然的に竜使い(ドラグーン)の力を秘めた後継ぎが現れる。100パーセントではいけれど、強大な戦力と、帝国防衛の要を任される重要な立ち位置につける。なにせ、現在竜使い(ドラグーン)を扱えるのは私だけなのだから。


「エルザは、市井の出の方ですか?」

「はい。剣の腕を買われ、ロイオ様の私有軍に入れていただいたのです。エクシアのような大きな家で働けることは、何よりの誉です。」


となると、エルザはそれほど貴族社会に明るいわけではなさそうだ。むろん、彼女に対しても警戒せねばならないが、まだ出会って間もない相手に結論を出すのは早すぎる。


可能であれば、彼女の人となりを知って、こちら側に引き込めればいいのだが。


「その、ロウお嬢様は、どのようにお考えですか?」

「何がでしょう?」

「エクシアと、アダマンテの縁談についてです。こういっては何ですが、ロイオ様は、エクシアの先行きは芳しくないと思っています。若様のお力が、凡庸であることを懸念しているのだと思います。」

「・・・私は、エクシアの魔法特性については、よく知りませんが、今のエクシアの状況は、客観的に見てもよいものではありません。ロイオ様が、私とご子息を結ばせようと考えても不思議ではないと思います。」

「・・・そう、なのですか?」

「ええ。ただ、その。私、こう見えても結構やんちゃでして。特に理由も作らず、きっぱりと断ってしまいました。」

「お噂は聞いておりましたが、本当のことだったようですね。」


いったいどんなうわさが流れているかは知らないが、聞かないでおくのが身のためだろう。


「でも、ロイオ様になんの思惑がないと気づいてからは、どうにも嫌な予感がしているのですよ。」


彼は、今でこそジエトに忠実な臣下としているが、初戦は王族貴族の人種。何も考えていないということはないと思うのだが。何か決定的な証拠が見つかれば、そこから足取りを探っていけるのだけど、今の状態では無理があるだろう。


「私は所詮、一介の従士でしかありません。エクシアに未来がないというのは、悲しい話ではありますが。主の思惑が何であれ、私は務めを果たすだけです。」


まっすぐな瞳だ。彼女を使って、いろいろと探りを入れたかったけど、どうやらそれは難しいようだ。


問題なのは、単にアダマンテの血統が欲しいから、あのような行動に出た、というものではなく、エクシアと、アダマンテを仲たがいさせようとしているんじゃないのか、ということだ。それをして、いったい誰が得をするのかと言われると、ピンとこないけど、表面的なことばかりで、何か別の意図を見逃しているんじゃないかと思っている。それゆえに、今のエクシアを信用するのは危険だ。ロイオ自身に自覚がないのならなおさら。


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