陰謀の影
ライラを含めた数人のメイドたちと共に、私はしばらくエクシア家に留まることとなった。
「とりあえず、お前にはうちの者から監視を付ける。活動範囲も限定するが、悪く思うなよ。」
「わかっています。」
ロイオ指定した活動範囲は、思っていたよりも広かった。といっても、どうあがいても、外の情報を仕入れるには、難しい広さだ。戦況や、他の勢力から陰口を出し入れさせないための処置なのだろうが、これでは文字通り箱入り娘になってしまうようだ。
「それと、アレンと言ったか?あいつの元へ行くときは、監視のものだけを同行させろ。兄者もそう遠くへアレンを置くことはしないだろうが、念のためだ。」
「はい。」
こういったところは、兄弟揃ってしっかりしていると思う。帝国王族としての威厳はある。けど、本人が言うように、帝国王族のなかでのエクシアの立ち位置はそれほど良くはない。ロイオの息子である、エルドリック。次期家長となる彼の未来は、そう明るくないと言われている。
エクシア家は、アーステイルの分家ということもあって、大きな権力と、確かな実力を有した名家だ。しかし、昨今の実力主義に流れは、大きくなる一方で、その中でのエクシアの魔が落ちは、帝国王族内に大きな激震を産んだのだ。
エルドリックは、アーステイルの、強いてはエクシアの血筋が持つ力を、ほとんど遺伝していないのだそうだ。要するに、魔法特性は平凡で、突出した力ではないということ。国を導いてきたアーステイル家にとっても、世紀の損失と言われている、失敗作だ。
エクシア固有の能力については知らないが、アーステイル一族の魔法特性は、大地の記憶。地面を隆起させたりすることが出来る魔法だ。その力を使って、帝国王族は、偉大なる霊峰、グランドレイブを開拓し、今では山脈そのものを帝国の中心地としているのだ。
しかし、アーステイルの分家は全部で8つ。その血統を受け継ぐものは、もはや珍しいものではないのだ。つまり、それだけしか取り柄のない人物の価値は、無いに等しい。エルドリックの立場は、エクシア家の没落にも繋がる、悲しい現実に躓いているのだ。
そんな中で、エクシアが私との縁談を申し込もうとしたというのは、打算ありきの話としか思えない。そうでなくとも、自家の勢力を大きくするための政略結婚が、そこら中で行われているのだから。
あれ以降、事態が事態だし、まったく動きがなかったのだが、実際のところロイオはどう思っているのだろう。
「以上だ、何か聞きたいことはあるか?」
「・・・あの、ロイオ様。」
「なんだ?」
「・・・もし、答えたくないことであれば、何も、聞かなかったことにしていただいて構いません。ですが、ロイオ様の真意を知っておきたくて?」
「ん?なんだ、改まって。」
「以前、我が家、アダマンテとの縁談話、ロイオ様は、どのくらい本気で考えていらっしゃいますか?」
「なに?縁談?」
やはりこの人は知らないようだ。ロイオの知らないところで、事が運ばれていたというのは、それは、・・・あまり面白くないことだ。
「先月の貴族会議で、私と父のもとに、エクシア家の使いの者が、私との縁談を申し込んでまいりました。」
「・・・面白くない冗談だな。」
「私も、そう思っております。最初は、単なるロイオ様のお戯れと思っていたのですが、あなたが何も知らないというのであれば、事の大きさは戯れで済む話ではありません。」
「バロックスに聞けば、その時のことを聞けるか?」
「はい。父も一緒でしたので。」
「・・・わかった。監視には、俺が信頼に足る人物を置く。それでも警戒するなら、好きにしてくれ。こっちで調べてみよう。」
そういって、ロイオは足早に去っていった。今のところロイオ本人に悪意があるようには見えないけれど、警戒をするに越したことはないのだが、正直それを考える余裕はない。今は、自分のことで精一杯なのだから。




