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ロードオブハイネス  作者: 宮野 徹
第一章 魔物の大侵攻
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アンノウンの正体と、情欲

青年の姿に変わったアンノウンは、一人雪の上に座り込んで、遠くに見える門と、魔物の群れを見つめていた。私も、彼に倣って隣へ座ると、なぜか嫌な顔をされて、少し距離を取られてしまった。そんなに密着した距離に座ったつもりはないのだけど、何がいやだったのだろうか?


「あまり近寄らない方がいい。あんたにとっても、俺にとっても。」

「どういうこと?」


そういえば、エレオノールの屋敷を飛び出した時、私はどうしてか彼の元へ行かなければならない、という使命感に囚われていた気がする。それと関係があるのだろうか。


「ロウよ。」

「ん?」

「私の名前。ロウ・アダマンテ...スプリング。」

「・・・スプリング・・・。」


他人を知るにはまずは自分から名乗るのが近道だ。自分のことも話さない者には、誰も心を開いてはくれない。貴族となって身に着けた、人生の教訓の一つだ。


「あなたの名前は?」

「・・・アレン。」

「アレン。いい名前ね。」

「本名じゃないけどな。」

「そうなの?」


なぜわざわざ偽名を名乗るのかは不明だが、今は良しとしておこう。いきなり深く内側へ入り込むと、心を閉ざすような人は多くいる。それに、彼が知っていることを知りたいのは、こちらなのだから、無理に聞き出すようなことはしない方がいいだろう。


「アレンは、その、・・・なんていうか。」

「言っておくが、俺は獣じゃないぞ?あんな奴らと一緒にしないでくれ。」


獣・・・。それはわかるのだが、彼は竜使い(ドラグーン)で意思疎通が取れ、その上翼竜の姿に、いや、この際隠すことはないだろう。龍の姿に変身することが出来る。もしくは、人の姿に化けることが出来るといった方が正しいのか。


「あなたは、何者なの?」

「そうだな。あんたにわかりやすく説明すると。俺は、龍の姿になることが出来る人ってところだな。」

「・・・そんな人間がいると思ってるの?」

「人間じゃない。俺は、・・・俺たちは龍族と呼ばれる種族だ。人間とは違う。」

「でもあなた、今人って・・・。」

「この世界にも、人間のような姿をした亜人種はいるだろう?それと同じだ。」


亜人種。確かに帝国の南方の地域には、半獣族という、獣の特徴を持つ人の姿をした人々が暮らしている。私は実際に目にしたことはないが、要するに人の頭に耳が生えていたり、尾てい骨から尻尾が生えている種族だ。からだの体毛の多く、四肢はほとんど獣のそれとほぼ差異は無いと言われている。でも、それと彼を比べるのはいささか違うんじゃないだろうか。だって、アレンの姿は、まったくもって人間と同じだ。服も来ているし、特別際立った特徴もない。どこからどう見ても人間だ。それに彼は、妙な言い方をしていた。この世界にも・・・と。


「龍族と人間の違いは、簡単だ。龍族は、龍に成ることが出来る力を持っており、人間よりも遥かに多い魔力を有しているということだけだ。もっともこの世界の人間は、個々により差はあるが、とんでもない魔力量を持っているようだがな。」

「ねぇ待って。この世界はってどういうこと?まるでここ以外の世界があるみたいな言い方して。」

「あぁ。その通りだ。俺は、ここじゃない別の世界から飛んできた、いわば異世界の住人だな。」


とんでもない情報をサラッというから、頭の中の整理が追い付かなかった。ここではない別の世界。もしかしてそれは、私の前世の世界のことだろうか。いや、それはない。元居た世界に、龍族なんて言うものはないのだから、その可能性は絶対にない。だが、そうなると、他にもこのような異世界が存在するというのだろうか。私が、日本人として育ったあの世界ではなく、龍族という化け物みたいな存在がいる、ファンタジーの世界が。


「はぁ、ほんとに面倒だな。話さなきゃいけないことが多すぎる。あとは?何が効きたい?」

「あ、そうね。・・・。」


正直なことを言えば、0から100まで全てを知りたいところだが、それを聞いて私自身理解できるかどうか危ういところだ。ならせめて、今私の体に起こっていることだけでも知っておこう。


「あなたから見ても、私は人間だと思うけど、私は今、どうなっているの?」


それを聞くと、彼は私の左手文様や、背中の翼、今は体に巻き付くように畳まれているものを見た。


「・・・それについては、正直俺も驚いている。こんなことになるのは初めての経験だし、あんたの体がどうなっているのかというのは、全部俺の憶測にすぎない。それでも知りたいか?」

「私は、推測することすらできないもの。あなたの知り得ていること教えてほしい。」

「そうか。・・・なら、隠すこともないな。全部話してやる。あんたは今、龍化しかけているんだ。」

「・・・は、え?龍化?」

「そう。あんたが持っている魔力と、俺の魔力が混ざり合って、人間という存在の枠からはみ出しているんだよ。」


いきなり訳が分からなかった。どこから突っ込みを入れればいいのやら。


「あんたが龍化し始めた原因は、あの剣にある。あんたが俺の背中に突き刺したあの刺剣だ。俺が直してやった奴な。」

「あれが、どうかしたの?」

「俺が拾ったときに、剣は既に折れていた。だから、俺は龍の姿で、体の一部を剣の繋ぎに変えた。なかなかの出来栄えだっただろう?」


尺も重さもずれてたけどね・・・。


「そして、あんたはその繋ぎの部分で左手のどこかしらを切ってしまった。違うか?」

「ええ。剣を抜くときに、指を少し。」

「やっぱりな。その際に、俺の魔力が、あんたの体に流れ込んでしまったんだろう。龍族の体はそれそのものが魔力の塊だから、その影響をもろに受けたんだろう。」


それは、そういうものなのだろうか。得物である物質に魔力があったら、切られた側はその魔力の影響を受ける?だとしたら、あの刺剣で魔物たちを斬ったら、彼らも龍化いていたということだろうか?


「それって、おかしくない?」

「あぁ、おかしいな。そんなこと、普通だったらありえない。」


つまり、これに関しては彼もわかっていないということか。憶測の一部分ということだろう。


「さっきも言ったように、俺はこの世界の住人じゃない。だから、この世界の人間についてもよく知らない。俺の魔力が、人間と混ざると龍化するなんて考えもしないさ。」

「じゃあ、意図的にやったわけじゃないのね。?」

「こんな面倒くさい状況を誰が好き好んでやるもんか。ったく、あの邪龍め、覚えてろよ・・・。」

「邪龍?」

「こっちの話だ。」

「・・・その、面倒くさい状況っていうのは・・・。」


おそらくそれが肝心な方なのだろう。彼はしばらく考え込んだ後、再び私の翼や腕をかんさつしはじめた。


「龍化っていうのも、実は今名付けた造語だ。俺のいた世界では、そんな言葉は存在しない。ただ単に、あんたの存在が、龍族へと近づいているからそう名付けた。ここまではいいか?」

「うん。」

「龍族は、同じ龍族を本能的に感じ取ることが出来る。お互い人の姿でいても、龍族だっていう勘が働くんだ。たまにわからないやつもいるけどな。」

「そ、そうなんだ。」

「それで、あんたからは龍族の気配を、実際に感じている。あんたは今、間違いなく龍族だ。人間じゃない。」


そういうことを面と向かって言われると、少々ショックだが、今は置いておこう。


「龍族がどういう種族かって言うと、動物的本能を持った人間、って言えばわかるか?」

「動物的・・・本能?」

「あぁ。腹が減れば食う。眠くなれば寝る。みたいなことを、人間であれば、理性によって我慢することが出来るだろう?少なくとも身体に異常がきたさない程度にはそれが可能なはずだ。だが、龍族はある特定の生物的な本能に逆らえないんだ。」

「逆らえないって、理性が働かないってこと?」

「その通り。あんたは今、その本能に囚われかけているんだよ。」


ようやく事態が飲み込めてきた。要するに私の体が自由に動かせなかったのは、本能によって理性が吹っ飛んでいたということだ。自分で言ってて可笑しなことだとはわかっているが、つまりはそういうことだ。


「わたし、その、本能に従って、何をしようとしているの?」

「それはあんた方がよくわかっているんじゃないか?」

「いやぁ、全然。違う誰かに体の自由を奪われているみたいな感覚だったし。」

「ふーん、あんた、鈍いんだな。単刀直入にいうと、あんたは俺のことを本能的に気に入ってるんだ。」

「・・・・はい?」

「メスがオスに抱く欲情。・・・つまり、発情してるってことだ。」


・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ??????????????」


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