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転生までのあらすじ

「諜報員って言っても俺はまだ高校生なんですけど…」

ふわふわとした感情の中で思いついた言葉を投げかけた。


「は?何を言っている?君は転生時で24、2年たったから26のはずだが…」


「転生前、というよりも転生前前…ですか?はわかりませんが、確かに俺は18です」


 キョーコは落ち着いたような、しかしやはり驚いているような声で答えた。

「そうか……少し若返ったと思ってはいたが……それも転生によるものだろうな」

キョーコは続ける。

「3つ目のサプライズも含めて、この世界にいた君について知っている限りを話そう」


 自分が何者なのか…いや、何者"だった"のか。一番の重要な情報だ。


「といっても我々は諜報員、お互いの素性は多くを知らず、上司の私とはいえ知っていることは少ない」


「ただ、仕事上の事はよく知っている。君はとても優秀な諜報員だよ」


 美人に褒められて悪い気はしない。


「有り余る魔法のセンス、捜査能力、スマートな手際でいくつもの事件を未然に防いでいる」


「君がいた世界に転生したのも、諜報活動の中での出来事だ」


 ちょっと待ってくれ。元の世界に転生、というかこの世界から移ったのは事故とかではないのか…?

俺は思ったままを伝えた。


「申し訳ないが私は活動に同行しておらずその時の状況はよく知らないんだ」


 意図しない回答に落胆する。


「ただ、その時のバディから受け取ったものは、君が諜報活動中に魔法陣に包まれ、その場からいなくなったという報告だった」


 ということは、事件に巻き込まれて俺は転生したってことなのか…?


 疑念と恐怖。この世界から転生させられたのだとしたら、明確に自分への悪意を持った人間がいるからだ。


「幸いなのか不幸なのか、君は諜報員として優秀過ぎたからね。事件に巻き込まれたと考えるのが自然だろう」


「優秀な諜報員の君は、タダでは死ななかった…いや、転生しなかった。転生する可能性すら見越した上で、我々に情報を残したんだ」


 何だって?転生前の俺は優秀過ぎないか?


「その情報を元に君を再転生させ、ようやくこの場に戻ってきてもらった……というのがここまでのあらすじだ。とはいっても戻すのに2年も要してしまい、さらに残念なことに君の記憶は無くなってしまったが……」


 そういうことだったのか……あくまでも自分起因の転生、タイマーのようなものを仕掛けていたみたいだ。


「そして君は君自身宛に手紙を残している。これが3つ目の情報、サプライズだよ」


 キョーコは持っていたバインダーから一通の手紙を手渡した。


「サプライズと言ったのは、私にも内容が分からなかったかというのもあるんだ」


 笑いながら話すキョーコは少し寂しげだった。


「読んでみてくれ。強力なセキュリティ魔法がかかっていて君しか読めないようになっている」


 封蝋を開けると、頭に語りかけるような声とともに文字が浮かんできた。


──未来の私へ。君は転生をさせられ、さらに転生してこの世界に戻っているはずだ。

そしてこの手紙はそんな私に宛てた情報であり、もしかしたら記憶が無いのかもしれない。


 あまりにも的確な読みで少しゾッとする。


──この端末には多くを残せない。まずは秘密裏に自宅へと戻って欲しい。場所はこの手紙が導いてくれる。


 手紙には地図とナビゲーションが映し出された。スマートフォンのアプリの様相をしている。


──これから過酷な生活が待っているだろう。この世界よりも元の世界が恋しいかも知れない。申し訳ないことをした。


──君には素晴らしい仲間と才能がある。自分のことだから良くわかるんだ。


──最後に一言。あらゆるものを疑え。仲間を頼れ。その中に道はある。


 音声は途切れ、地図だけが残った。


「どんな内容だったんだ?」


 キョーコが澄んだ瞳で覗き込んでくる。


 あらゆるものを疑え……


「ある場所の地図みたいでした。とりあえず行ってみようと思います」


 自宅ということは言わない方がいいな。諜報員の生命線だろう。


「そうか、おそらくは自宅の地図だろうな。まずは一旦帰って休むといい。また明日ここに来てくれ」


 キョーコも諜報員だったか……一高校生の嘘などお見通しというわけだ。


 とにかく元の家に戻り、情報収集することとなった。

諜報員の地道な第一歩だ。

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