最終決戦
「ついたね~」
少しの飛行ののち、客船にたどり着いた。見た目は普通の客船のようだが、乗客の姿は一人も見られない。
人の気配は感じられないが、エンジン音とモーターの音が確かに動いていることをあらわにしている。
「中の探索をしようか~」
ヒョーカに促され、船内へと進む。
明かりはついているものの、やはり人がいることはなかった。
「……この船は自動で動いているんでしょうか?」
純粋な疑問から尋ねた。核心に迫る前にほかの質問をして先延ばししてしまうのは悪い癖だ。
「そうじゃないかな~?多分魔導力でルート選定や回避行動をとっているんだと思うよ~」
ヒョーカの雰囲気はいつもと変わらない。
予感を核心に変えたくはないが、改めて質問をしなければならない。
船内を探索すること20分、大型の機械はあるものの、どれが転送装置なのかはわからず、いったん甲板へ出ることとなった。
冷たい風がほほをなでる。風の感覚がやけに鋭敏に感じ取れる。
風の魔法使いと戦闘した後だからか、それともこの後の展開に緊張しているのか。
「……ヒョーカさん、質問があります。」
「なんでしょう~?」
ヒョーカの様子はいつもと変わらない。
「はぐらかさずに答えてください。僕が"アンノ"の弟ではなく、アンノ自身であると気づいていますね?」
「……なんだそれ~。何を根拠にそんな骨董無形なことを言ってるの~?」
ヒョーカの様子は普段と変わらない。ニコニコとしていて、それでいて飄々と会話を続ける。
「明確な証拠はありません。ただ、会話の中に少しの違和感を感じたからです」
これは事実だった。自身の推理を続ける。
「ヒョーカさんはアンノ弟こと俺とは初対面で、あったことはありません。それなのに、僕が使える魔法について詳しすぎる」
最初の潜入でも、雷撃を使わなかったことを指摘されている。
そのあとも解析の話を持ち出すなど、明らかに自分の情報を知っているようなふるまいだった。
「アンちゃんの弟だからね~。同じような魔法が使えるかなって思ったんだよ~」
ヒョーカは答える。その姿に戸惑いはない。
「加えて、俺がこの世界についてなじんでいない、知らない情報が多いことになんら疑問を持っていない。あくまでそれをサポートするようなふるまいをしていた」
ヒョーカの通信札など、この世界では通常用いられるであろうモノに逐一反応をしていた。
諜報員としては3流だが、それによって見えてくるものもあった。
「俺が異世界から戻ってきたこと、それで記憶がないことも気づいていた、としたらつじつまが合います」
これは直観による推理だ。ただ、核心から外れているとも思えない。
「なるほどね~。やっぱり"アンちゃん"はいい諜報員だね~」
そう答えるヒョーカの顔に、笑顔は消えていた。
すみません、年末バタバタしていて更新できませんでした。
第一部はまもなく終わらせる予定です。1月中には完結させます。




