異世界バトル初戦!2
「てめえ……この間のガキじゃねえか!」
男はこちらを見ながら大声を出す。雑居ビル群の周囲は平日の昼間にも関わらず人が一人もいない。
「やっぱりこそこそ探ってたみてえだな……飛んで火にいる夏の虫だ……!」
男から立ち上る炎を見て、まさしく火にいるだと思った。が、のんきにそんなことを考えている場合じゃない。
腕の炎は以前よりも大きく立ち上がっている。巨人の腕のようになった炎の塊でこちらを殴ろうと振りかぶっていた。
とっさの判断で飛行の魔法を用いて、後方へ3mほど飛び離れる。
目の前に振り下ろされた腕は間一髪のところで回避することができた。髪の毛が焦げる匂いを感じ、間一髪だけあたったと気づいた。
目の前で振り下ろされた拳は地面を焦がしている。直撃したらひとたまりもないはずだ。冷や汗がほほをつたう。
「よけるんじゃねえ!」
なんてことをいうんだ。というかこんな攻撃で大やけどを負ったら尋問も何もないだろう!
こちらの焦りとは裏腹に大男は連続で攻撃を仕掛けてくる。
大げさによけてはいるがそれでも当たりそうになる。飛行が使えなければ即死だっただろう。
何とか反撃の糸口がつかめないか。男の方をうかがいながら攻撃を避けていた。
「糞があああ!」
少しずつ腕の炎が小さくなる。ガス欠、いや魔力欠のようなものだろうか。
チャンスだ!すかさず男の背後に回り込み、相手に向かって手のひらを合わせる。
ここは外だ。手加減をする必要はない。
雷撃
ドガンと音が響き、地面が揺れ動く。一瞬目のまえが真っ白になったが、感覚で男に直撃したことがわかる。
1秒にも満たない時間でこちらの攻撃は終わったが、男を倒すには十分だったようだ。
男の腕から出ていた炎は消えており、その場にどさりと倒れこんでいた。
「……強すぎるな」
自身の力に驚愕する。その後、人に危害を加えたことに焦りを覚える。あわや殺してしまったのではないかと男に近寄るが、浅い呼吸音と脈拍を感じ、気絶させただけだと認識する。一安心だ。
落ち着いてみると、雷撃の衝撃で地面がえぐれている。道路わきのガードレールは焼け焦げており、交通標識は熱で負荷がかかったのか途中で折れ曲がっている。
魔法バトルの初戦はあっけなく終わった。大勝利と言ってもいい。
……今日の業務でぶっ壊した街並みは経費で落ちますか?
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