表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/18

16.解決と帰宅

 マーガレイド農園からジャムを盗んだことを、正直に白状したポーマ子爵。

 小屋に火をつけたのは、先ほど逃げ出そうとした庭師だったことも明かした。

 そして執事と共謀して、ジャムを他国に売りさばいていたのだとか。


「あの馬鹿夫のせいで、わたくしまでこんな目に……」


 子爵夫人もがっくりと項垂れながら、連行されていく。彼女の部屋から開封済みのジャム瓶が発見されたのだ。

 どうやら、盗品と知りながら食べていた様子。

 そして地下室で見つかったジャムは……


「証拠品として一時押収という形になりますが、あとで必ず農園にお返しいたします」


 警官の説明に、私はほっと胸を撫で下ろす。

 戻って来るまでに時間はかかるだろうけれど、きっとマーガレイド夫妻も喜んでくれると思う。

 屋敷の周辺には、騒ぎを聞きつけた野次馬が集まって来ていた。

 あとのことは警察に任せて、私とクラレンス様は馬車に乗り込んだ。


「ありがとうございます、クラレンス様。あなたのおかげで放火犯を捕まえることが出来て、ジャムも取り返せました」


 私は感謝を込めて、深く頭を下げた。


「そんな、礼を言われることなんて何もしてないよ」


 クラレンス様は、蚊の鳴くような声で言った。頬がほんのりと赤く染まっている。

 照れている様子の婚約者に、私は小さく吹き出す。


「クラレンス様、可愛い」

「か、可愛くないよ。可愛いのは君の方だ……」


 視線を逸らしながらぼそっと言い返すクラレンス様に、私も頬が熱くなる。

 狭い車内に漂う甘酸っぱい雰囲気に耐えられず、話題を変えることにした。


「それよりクラレンス様って、武術を習っているんですか? 子爵をガッ、ドン、バターンッて取り押さえてましたけど……」


 言葉でどう表現すればいいか分からず、擬音だらけになってしまった。

 だけど私を守ってくれた時のクラレンス様はすごかった。

 警官よりも早く動いて、ポーマ子爵をあっという間にねじ伏せてしまったんだから。

 一瞬の出来事に、警官たちもポカーンと口を開けていた。


「えっと……護身術をちょっとだけ習ってるんだ。さっきもシャロンが危ないと思って、無我夢中だったよ」


 照れ臭そうに話すクラレンス様。無我夢中だったわりには、やけに落ち着いていたような。

 まあ、人間追い込まれると逆に冷静になるって言うものね。


「とりあえず子爵も捕まって、これで一件落着ですね! あとでマーガレイド農園にも報告に行かなくちゃ」

「……どうだろう。今回の事件、子爵が一から計画したとは思えないんだ」


 クラレンス様が難しそうな顔で言う。


「だって彼には、農園に火を付ける動機がない」

「……黒幕がいるってことですか?」


 私が問いかけると、クラレンス様は無言で頷く。

 クラレンス様の予想は当たっていた。

 その後の取り調べで、ポーマ子爵はある人物から、農園に火を付けるように依頼されたことを自供したのだ。

 その人間の名前を聞いて、私は怒りと衝撃を覚えた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ