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天のおっぱい

作者: 三雲倫之助

お地蔵様と物言わぬ子の童話

天のおっぱい


 ある日のことじゃ、お日さまは出ておるのに、雨が、ジャアアジャアアと降

り出したの。それでみんなは家の中、軒下で雨が止むのを待ったの

 すると又穴だらけのボロの衣の物乞いが、左へぶらり、右へぶらり、あらわ

れたのじゃ

 この物乞い、馬にも、犬にも、庄屋様にも、「あなた様は心根が清らかで

す」と唱え、皆は頭がおかしいと思っていたの

 その後からの、武家のメオトがおさなごを抱いてやってきたのじゃ。実はじ

ゃな、この五つの子、生まれつき頭がたりぬ、いまだにものが言えないのじゃ

、それで両親から親戚からどうにかしろと言われていたの。占えば、この子

がために、跡継ぎも生まれぬと告げられて言われての。それで、夫婦は身を割

く思いで、このおさなごを雨乞い森のふところへ捨てに行くところだったのじ

 物乞いは笑ったかと見えるが先か、振り向いて、オサムライの抱くおさなご

の頭をなでて言ったのじゃ

「あなた様は心根が清らです、心根が清らです、ナンマイダブ、ナンマイダ

ブ」

 そしたらば、大きな声で子どもが泣きだした。それは母様に、おろして下さ

い、と頼んでいるのだと二つの眼にはありあり見えたのじゃ。そして最後の願

いにとおろせば

 フシギなことじゃ、子は手足をばたばたさせて、雨と共にはねていた、おど

っていた、うたっていた

 さらにおどろいたことに、このおさなごが立ち止まり、物ごいを見てほほえ

んだのじゃ

「天のおっぱいを、すわせて下さいな」

 チチハハの耳に物言えぬ我が子の声がなりひびく

 物ごいがその子をやわらかにだき上げて、ふところを開けると、お月さま・

お日さまの、清らかなおっぱいが有ったんじゃと


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