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聖剣の収納場所

 大聖堂は厳かな空気で満ちていた。

 高い位置にある窓から日の光が真っ直ぐにさして、まるでスポットライトのよう。


 光の中、カノは両手を組み膝をついて祈りを捧げる。


 幻想的なその様子を、ひとびとは固唾を飲んで見つめたわ。

 もちろん、私も。


 カノの正面には、使い魔のプースがいる。

 カノが両手を広げてプースに差し出すと、プースはかぱっと大きく口を開いた。


「…………」


 そこからぴょこんと飛び出たものは。


 わぁ……。口の中から剣の柄が。

 え? あ? ちょ、ええっ??


 カノはその柄を掴むと、勢いよく引っ張った。

 そうしたら、するするっと剣の全身が現れたわ。刀身部分が玻璃(はり)のように美しく、透明に煌めいている。


 どよめきが起こった。


 掲げられたそれは、まさしく、伝承の聖剣そのもの。


 使い魔が聖剣の鞘なのは理解したけれど、鞘よりも中身の剣が大きいのはどういうことなの……。


 カノが私に恭しく聖剣を呈出する。私は努めて堂々と、輝く聖剣を押し戴いた。


 聖女様から英雄への聖剣授与。


 見届けた国王様が正式に私を「英雄」に任命する。

 国王様の有難いお言葉を聞きながら、私は昨日の、シリウス殿下の話を思い浮かべていた。




 シリウス殿下の話は、この国の厳しい現状についてのことだったの。


「カノのおかげで瘴気の量は維持されている。が、すでに発生している瘴気がもたらす影響は計り知れない。魔物化した動物たちに襲われる者も出ている。兄達の騎士団がそれぞれ対応に当たっているが、我々の対応は全て、後手に回っていると言わざるを得ない」


 シリウス殿下は淡々とおっしゃっている。けれど、どことなく、微かに怒りを感じるわ。

 国民が被害を被っている、この現状に憤っているのかも知れない。なんの罪も無いひとが傷付けられたり、家畜が魔物に変わってしまって家業が成り立たなくなったりしているんだもの。

 国民のためを思うのなら当然なのかも。


 私も、殿下と同じように、国民のことを考えられるようにならなければ。


「根本的な解決には魔王の討伐が必須だ。それにはステラ、英雄に選ばれた君の力が必要なんだ」


「はい」


「まだ若い君の力に頼らなければいけないことを心苦しく思っている。もちろん、出来る限りのサポートはする。ひとりで闘わせるようなことはしないから、安心して欲しい」


 私は密かに安堵のため息を呑み込む。

 良かった。本当はかなり不安だったの。聖剣を渡されて、「いってらっしゃい」って送り出されたらどうしようかと思ってた。

 

 殿下の言葉にイオもしっかりと頷いてくれた。


「ステラ様のことは必ずお護りいたします」


「ありがとう、イオ」


 頼りにしているわ。にこ、と微笑んで見せると、イオは微かに視線を下げた。

 …………?


「僕も、イオを始めとする僕の団も、ステラと共に闘う。必ず魔王は倒す。そしてステラ、大事なのはそのスピードなんだ」


「スピード?」


「そう。どれだけ早く解決出来るか、だ。早ければ早いほど、被害は少なく抑えられる」


 よく分かります。

 私は殿下を見つめ頷いた。


 出来る限り早く、魔王を倒す。そうすることで、たくさんのひとを助けることが出来る。


 殿下も一緒に闘ってくれる。それだけで、何倍も強くなれる気がする。いいえ。強くなれるわ。


 私、頑張る!


「殿下の、御心のままに」


 応じると、殿下は少し頬を緩ませた。でもすぐに表情を引き締め、低く、宣言するかのように言ったわ。


「そうして、一刻も早く、カノを元の世界に帰す」


 瞳は強い光に満ちていて、並々ならぬ決意を感じた。


 そう。聖女の役割は英雄を見つけておしまいではない。

 英雄と共に魔王を倒さなければいけないわ。全て解決すれば、カノは元の世界に帰ることが出来る。


 私は、カノのためにも早く魔王を倒さなくてはいけないの。




 朗々と心に染み入るように響く、国王様の声。

 厳しく、優しく、私を鼓舞激励して下さる。

 こんな風にお言葉を頂くことになるなんて思いもしなかった。本当に、責任重大だわ。


 国王様のお言葉に耳を傾け、しっかり頑張ろうって、改めて心に誓っていたとき。

 大聖堂の外から大きな足音が聞こえてきたの。バタバタと慌てたような足音よ。


 国王様も何事かとお話しされるのをやめた、そのとき。


 ばたん! と勢いよく入り口の扉が開いた。


「申し上げます!!」


 神官様?

 2人の神官様が慌てふためいた様子で飛び込んできた。


「何事だ」


 国王様は険しいお顔で問うたわ。居並ぶ面々の中には大神官様もおられる。大神官様は神官様の様子にとても驚いているように見えた。


 青ざめた神官様の1人が、震える声で叫んだわ。


「神殿の、神殿の女神像が、消失いたしましてございます!!」


「何だと?!」


 ざわざわと集まったひとたちから驚愕の悲鳴が漏れる。


 女神像が消失した???

 どういうことなの?


 思わず、隣にいたカノと顔を見合わせたわ。

 神殿の女神像は御神体。神様が宿り祀られている。そのお姿は荘厳で、瀟洒で清楚、そして優美。


 だけど、2メートル以上はある、大きくてとんでもなく重たい像のはずよ。


 その女神像が、消えた。

 聖女であるカノが、毎日祈りを捧げていた女神像が。


 シリウス殿下が立ち上がり走り出す。その後をイオが追いかけるのを見て、私も咄嗟に後を追った。


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