【愛人】
目の前には私の旦那とその愛人がいる。そして、何故だか、二人は床に正座してる。それに引き換え、私はソファーに寛いで座っている。
「あの……さ、●●」
「何?」
麦茶を飲みながら、答える私。
「ごめん……」
「別に……、怒ってはない。それよりも感心してる。やっぱり、愛がたくさん在るんだねって」
にこやかに言っている私に対して、旦那は苦笑いをしている。だから私は、満面の笑みでこう言った。
「私にも、その愛をもっと、欲しかったな……」
数秒の沈黙の後私はこう付け加えた。
「ねぇ、○○」
「何?」
「私も愛人、作って良い?」
私の言葉に、旦那は勿論の事、旦那の愛人まで、ビックリしてる。
「えっ……」
「あの……」
「あのさ、いつまでも、貴女いるの? もう、用はないんだけど。私は貴女の顔を見たかっただけだから」
私の冷たい一言に、旦那の愛人は「帰ります……、もう二度と逢いませんので、安心してください」と言い残し、私の目の前から姿を消すように、家から出ていった。
私は旦那に向き直り「どうなの?」ともう一度問う。すると、旦那が私を抱き締めてきた。
「やだ……。お前は、……●●は、オレだけのだから、やだ……」
「私も同じなんだけど……、貴方は、私だけのものなんだけど……」
「ごめん……、もう二度としない」
「わかった。でも、私も気持ちの整理をしたいから、貴方と触れ合うのは、一ヶ月後ね」
そう言い放つ、私を、旦那は抱き締め「キスはしても良い?」と子犬の様な瞳で見つめてくる。それがかわいくて、私は旦那を抱き締め返して、旦那の耳元で囁いた。
「キスをするのは私からね」
私は旦那の頬に軽くキスをした。
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