映画館での一コマとその後
映画館で映画を見ている最中に、不意に手の甲を包み込むように触れ、○○の指先が●●の手首に触れた。
突然の事に手がビクッと動いてしまった。そして、それと同時に、○○と目があった。
今は映画を見てる。出来れば、映画を見ていたい。でも、○○は違うらしく、●●から視線を外さず、手首の内側にキスをする。控えめに触れる○○の唇。そして、時折舌先で少しだけ、触れる。その感触に耐えられず、○○から視線を外し、空いている方の掌で口をふさぐ。そうしたからと言って、回りに聞こえるはずはない。ここは映画館。大音量で響く音に、私の喉から漏れる声など絶対に聞こえないし、聞こえるはずはない。しかも、今回の映画は最終日。だから、人はほとんどいない。だが、○○と●●が座っている席は一番前。だから、出来ればこんなことは止めて欲しい。
「ゃめ……、てぇ……」
口をふさいでいるか、絶対に○○には聞こえていない。だからなのか、○○の行為は映画を見てる間ずっと●●の手首や指先にキスをし続けていた。
映画が終わる頃には、私はクッタリしていた。それがわかっている○○は●●の耳元に唇を寄せて「気持ち良かった? もっとする?」と囁いてくる。
「へっ」
●●は○○と至近距離で見つめ合うことになってしまった。再び、●●の耳元に唇を寄せて○○が「オレは●●の可愛い声が聞きたい」と言い、●●の耳に小さなリップ音を響かせ、キスをして来た。
耳元に誘惑のキスをされ、●●が、答えられなくなっていると、いつの間にか映画が終わっていた。
「ほら、行くぞ」
○○に手を引かれ、立ち上がったが、●●はよろけてしまう。
「立てないの?」
●●が頷くと、「少し移動するからちょっとガンバって」と言い、●●を支えてくれる。どこに移動するのかわからないが、多分、○○の部屋だ。この映画館は○○の家から歩いて数分。きっと、今ここでされたことより、スゴい事をされるのだと思うと、顔が赤くなってしまう。それに、○○の顔を見ることが出来ない。だから、映画館を出て○○の家に着くまで、●●は地面ばかり見ていた。
○○の家に着くと、○○が「先にオレの部屋に行ってて」と言われ、●●が階段を上り、○○の部屋に行くと、そこは○○の匂いで充満していた。
(あっ……)
「どうかした?」
「えっ、と……、なんでもない」
○○の部屋に入ると、○○は棚に飲み物が置いてあるお盆を置くと、●●の手首を掴んで扉を閉め、扉に●●を寄りかからせた。
「な、に……?」
少しだけ、顎を引いた状態で○○を見上げる。すると、○○が「可愛い」と囁き、●●の唇にキスをしてくる。最初は、触れるだけのキスだった。だけど、だんだんと唇や舌を使ってキスをしてくる。
「気持ちいい……?」
唇を触れさせたまま、喋るから、●●は返事をしたくても答えられない。答えたら、唇が動いて、より刺激が●●の身体に伝わってしまう。
「どう? 気持ちいい?」
そう言って、○○は●●の手首を映画館で触れてきたように触れてくる。○○の唇は●●から離れたが、与えられる刺激が●●を逃がさない。だから、○○の視線からだけでも逃げたくて、視線を反らす。だが、○○は空いている方の手で、●●の頬に触れてくる。そして、指先で視線が合うようにされてしまった。
「オレを見てて?」
「はずかぁ……、はぁ……、しぃ……」
「手首が弱いなんて……、初めて知った……。手も弱いんだ……」
弱いところが彼氏にバレてしまったことが恥ずかしすぎて、●●はますます頬が赤くなってしまう。
「照れてるの? 可愛い……」
掌の近くで喋らないで欲しい。吐息が手にかかって感じてしまう。ここは映画館ではないから、声を我慢する必要はない。だけど、声を聞かれるのが恥ずかしくて、我慢するが、●●の喉からか細い声が漏れる。
その声は、○○が満足するまで、○○の部屋に響いていた。
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