66話 さく、さく、さく、と続けざまに11体目のタイラントワームを片付ける頃には、目指す小山はすぐそこに
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6のゾロ目っていうことは、なにか恐ろしいことが起きる予兆なんだよね。
信じるか信じないかは、あなた次第です。
さく、さく、さく、と続けざまに11体目のタイラントワームを片付ける頃には、目指す小山はすぐそこに。
途中でゾフィとなっち(「・ω・)「のレベルが上昇(LV.16→LV.17)しているが、新規取得アビリティは特になかった。
その代わりという訳でもないが、ちょうど11体目にトドメをさしたところでここにきてゾフィの『詠唱魔法』がレベルアップし、新たな魔法を習得した。
それがまた極めてゾフィ好みのものだったため、ゾフィは先程からたいそうルンルンである。
「はやくつかいたいですの♪♪」
「せっかくだし初撃はゾフィでいいかもね」
「いちげきでけしずみにしてやりますの♡」
「うん。期待してるね」
「そんな恐ろしい魔法覚えたんっすか……」
極めて上機嫌なゾフィの物騒な発言に、きらりんは多少不安顔。
ここまでに分かっているゾフィの性質からして、ここまでご機嫌なのは相当やばそうだと察しているらしい。
とはいえさすがにレベル2程度の、それもひとりのプレイヤーの魔法。
巨大生物を一撃で消し炭などと言ってみてもそう大したことはないだろうと、そんなふうに思うきらりん。
それもこれも撃てば分かるということで、一行は地中に埋まる巨大モンスターへと挑む。
魔法については分からねど、敵の姿については近づくにつれて精度の上がるなっち(「・ω・)「の報告によってかなりの大部分が明かされている。
それによると、どうやら敵は全長25m程度の亀的なものであり、隆起する部分は甲羅の上に花園が被さっているような状態であるらしい。
となると魔法をぶち当てるのは敵を表に引きずり出してからの方がいいだろうということで、ゾフィの魔法を中心に軽くてはずを整える。
「矢、とかで出てくるっすかね?」
「敵の規模を考えると射撃による影響はほとんど見られないかと思われます。
システム上のヘイト判定については明言できかねますが」
「トラップ型、多分」
「上に乗ったらどがーん、みたいなね」
「あー、地中に埋まってるってなったらありそうっす」
「はいはいはーい!じゃー私登りたーい!」
「いいんっす?場合によってはユ「やっぱなーし!」あはいっす」
「べつにかまいませんの♪もろともにけしずみですの♪」
「あはは。自信満々だ。でもやっぱりせっかくだから姿を見てからやっつけたいかな」
「おねえさまがそうおっしゃるのでしたらゾフィもそうおもいますの♡」
「……ま、つまり私がちょっかいかける感じっすかね」
「そうなるかな?お願いね、きらりん」
「っす。あ、でも魔法に巻き込まないようちゅういっす!」
「すべからきことですの……♪」
「……ちなみに先輩、これは?」
「がんば」
「求む加速系アビリティっす……」
結局、きらりんが先駆けて接近することで巨大モンスターを地中からおびきだす作戦でいくことに。
いざという場合緊急回避をするためにユアとゾフィは移動時と同じようにそれぞれリーンの腕の中なっち(「・ω・)「の背だ。
ユアがメンバーに『魔力保護』を与え、『声援』により効果を向上させてと準備を整えたところで、まず最初にゾフィが詠唱を開始する。
「『其は力」
どくん。
ゾフィの輪郭が弾む。
「『事象をあらしむ源の力』」
ゾフィの体躯から溢るそれは、空間をねじ曲げ景色を歪める。
「『万象に焚べる激化の力』」
にも関わらず克明に、ゾフィの姿だけがはっきりと浮き出る。
「『炎は盛り、水は猛り、大地は嘶き、風は唸る』」
燐光が身を包む。
空間が爆ぜ、閃光が肌を走る。
「『然らば集えよ我が詩に』」
言葉が大地をすら揺るがし、一句一句が重々しく響く。
「『然らば満たせよ我が詠を』」
無属性に部類されるそれは、強力な攻撃手段―――では、ない。
「『|存在はここに明かされる《そんざいはここにあかされる》』」
むしろそれは補助的な役割がメインである。
にも関わらずなぜゾフィはそれを使うのか。
「―――『溢る力』」
燃え上がるように身を包む力。
轟々と風を巻き起こすそれに、ゾフィはうっとりと目を細める。
LV.2詠唱魔法『魔力解放』。
その効果は極めてシンプル。
すなわち次に発動する詠唱魔法の威力を2倍するという、ただそれだけの魔法。
消費MPやCTも2倍になったりするが、そんなことはゾフィからすれば極めて些細なことである。
熱に浮かされたように、頬を染め、吐息を濡らしながら、ゾフィはまた口を開く。
「『爆ぜ砕くこそが真髄なれば』」
「じゃ私いってくるっす!」
「うん」
ゾフィが早速次の新魔法を詠唱し始めたところで、きらりんが巨大モンスターをおびき出すために駆けていく。
「『我が欲するは爆ぜ散る業火』」
ゾフィの眼前に、最初小さな種火が生まれた。
それはけれど、言葉が進む度に拍動し、膨張し、たった一節の間に抱えるほどに膨れ上がる。
きらりんは、目的の隆起に到達すると特にためらいもなくそこへ足を踏み入れた。
しかしどうやら少しばかり踏み入っただけではなんともならないらしく、迷いなく頂上を目指し駆ける。
「『大地を砕き天をも揺るがす極大の爆炎』」
火球が急速に圧縮されていく。
反比例するような光量が眩く目を焦がす。
大地が揺れる。
隆起するそれが、今確かに、揺れていた。
ほぼ頂上までたどり着いていたきらりんが即座に身を翻し、全速力で駆け下りる。
「『顕現せし後に跡形なく、破壊のみが其の威を示す』」
拳大まで抑圧された炎が暴れ広がろうとするのを押さえつけるように、炎の鎖が火球を締め付けた。
揺れる、揺れる、揺れる。
僅かに浮き上がる大地。
土に塗れてなお純白の甲羅が、ほんの僅かにその姿を明かす。
「『炎よ、我が望むままに存在を示せ』」
溢れんばかりの力が火球に注がれる。
膨れ上がろうとするたび鎖が締めつけ、本来実体の無いはずの炎がぎゃぎぎゃぎと歪な音を立てる。
最後のひとときまでそれは、今にも解き放たれんばかりに暴れていた。
ドッォオオオオオオ―――!!!
跳ね上がるように、その姿を現す巨体。
とっさに跳躍したきらりんが、跳ね飛ばされる勢いのまま宙を舞う。
「ヴァアアアアアアアアア――――――!!!!!!!!」
高らかに上がる咆哮。
宙に浮かんだ前足が、盛大に花園を砕きながら大地を踏み締める。
月光に照らされて。
眩いほどに光を弾く白の巨大カメが、そのあるのかないのか分からない目でユアたちを睥睨する。
「―――さよならですの♪『爆ぜ散る業火』♪」
「あこれやばいっすぅぅぅぅ!?!?!??!!」
「あちゃー」
そして業火は放たれた。
おあつらえ向きにユアたちを向いたその顔面に、ひゅおうと飛翔していく火球。
きらりんはまだ空中。
跳躍はあまり上手くいかなかったらしい、着地点は恐らく亀の目の前といったところで、つまり火球到達点の至近である。
その詠唱の一部始終ともちろん名前までボイスチャットを通して聞いていたきらりんは、その名前からして明らかに爆発するに違いない火球が迫っている事実に相当慌てる。
「がんばれきらりーん」
「しょうちっすー!」
半ば悲鳴のごとき絶叫を上げながらも、きらりんは即座にインベントリからメイスを二本取り出すと前方に向けて投げつけ、その反作用でもって亀の顔面に近づく。
「借りるっす!」
「ヴァウ!」
そうしてその鼻先を蹴り飛ばして前方下方に加速したきらりんは、火球とすれ違いながらインベントリから槍を取りだし、その穂先を地面に叩きつけるように抉りこませ棒高跳びの要領で前方へと加速。
その時点でやることはだいたいやったと身体を縮こませ、そして―――
――――――――――――ォォオオオオオンッッッッッ!!!!!!!!
次の瞬間、その周囲が花畑ではなくなった。
■
《登場人物》
『柊綾』
・ゾフィが楽しそうでよかった(にこにこ)。狂ってやがる……。きらりんのことをあんまり心配してない風なのは、まあ信頼しているからですよ多分。それはそれで楽しげだしね。スリル感じるところ間違ってるぜ。
『柳瀬鈴』
・楽しむ<綾<=綾と楽しむ…。といった感じ。まあ実際鈴がやってたら確実に死んでいた訳だけれど。多分。生きてられる未来が見えねえ。
『島田輝里』
・(ry次回きらりん死す!デュエルスタンバイ!言いたかっただけだけどそもそも前口上覚えてない、しかしわざわざ拾ってくるのも面倒だったのです。メイスぶん投げ顔面蹴り飛ばし槍でびゅん、これ全部合わせて2秒くらいの出来事。その間にあんなに喋れる訳ねえと常々思いますが、まあフィーリングですよ。あほら、体感時間も減速してますし(適当)。
『小野寺杏』
・高機能洗濯機小野寺。けれど言うまでもなく、この人聖光・闇呪も持ってる訳ですよ。筆者個人的に詠唱魔法におけるさいつよは聖光だと思ってるし、なんなら全魔法中で一番好きなやつの一つ。設定上杏さんは陣・連結の人だもんなー、いつかどっかで出したいなーと思ってたらなんかいつの間にか杏さんが詠唱魔法とってるじゃん?やったぜ。
『沢口ソフィア』
・放火魔→爆弾魔<<new!!。ひでえ話だ。火力向上・派手な爆発というとんでもないおもちゃをいっぺんに与えられて大満足。ちなみに詠唱魔法はMPを割合消費なので、このセットを使うと確実にMP減少に伴う状態異常食らう上にしばらく魔法使えない置物になります。でもそんなことどうでもいいんです。だって破壊できるんだから。
『如月那月』
・目立った出番なさそうに見えてちゃっかりレーダーやってる。なんかもう、やがて台詞すらなく機械的に処理してしまいそうなくらいに便利。「なっち」「把握」そんな存在を目指して。
ご意見ご感想頂けると幸いです。




