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032話 山脈というだけあって険しい山々が連なる、その谷間

更新です。


安達としまむら観たり読んだりしてました。

山脈というだけあって険しい山々が連なる、その谷間。どうやらそれが順路ということらしい、うねり続く道は岩石に邪魔され見通せない。いくつかの道が分岐して斜面を登っており、一人だったなら迷子にでもなりそうだとユアは思った。


「敵っぽいのとか全然いないんっすねー」

「そうだね?もうちょっと進んだら出てくるかな」


山道を進み始めてすぐのきらりんの言葉に、ユアは周囲を見回す。

山に近づくにつれて数の減った草原のモンスターたちは、とっくのとうに見えなくなっている。

かといって山のモンスターが出迎えるのかと思えばそういうこともなく、拍子抜けしたような気持だった。


「……なにか、不可解な気配は致しますが」

「近い?」

「あまり近くはありません」

「ふうん」

「気配……っすか」

「使用人のたしなみですので」

「どこの世界の使用人なんっすかねそれ」


きらりんとなっち(「・ω・)「のやり取りを横目に、ユアは少し集中して周囲を観察した。

岩山を縫う山道はごろごろと岩が転がっているだけ。

ところどころに生えるわずかな緑がむしろ寂寥を誘うような殺風景。


なにかおかしなところはないかと目を凝らして、ふとユアは一瞬の違和感を捉える。


「……あれかな?」

「そのようですね」

「せっかくだし試してもらえる?」

「御意」


ユアのお願いに応え、なっち(「・ω・)「はインベントリから一張の長弓を取り出す。一緒に取り出した矢を番えたところで、ユアがあっと声を上げた。


「忘れてた忘れてた。『付与(エンチャント)』―『魔力保護(マナコート)』」


『プレイヤー【ユア】のALVが上昇しました』

『【魔力】ALV.2→ALV.3』

『【知的】ALV.2→ALV.3』


ユアの付与魔法が発動し、なっち(「・ω・)「の身体を魔力が包む。

なっち(「・ω・)「はひとつまたたき、それから傍から見て分からないほど僅かに口角を上げた。


「感謝します」

「『やっちゃって』」


ユアの言葉に頷き、なっち(「・ω・)「は流れるような動作で弦を引き絞ると、刹那の静止を挟み解き放つ。

ひぅん、と風を切って飛翔した矢は目にもとまらぬ速さで狙いをつけた岩石へと叩きつけられる。

がぎゃ、と激しい音が鳴りよろめいた岩石は、しかし起き上がりこぼしのように倒れることなく立ち直る。そうしてぶるりと震えた岩石は、怒りを覚えたように一行へと飛び掛かろうとして。


その瞬間叩きつけられた魔力弾の連打に叩きのめされ、砕け散った。


「なっちもリコットもナイスショット」

「ん」

「光栄です」


ユアの誉め言葉に頷きを返しつつ、ちら、とひととき視線を交し合うリコットとなっち(「・ω・)「。

それを尻目に、ひとりいまいち理解が及んでいないリーンがはてなと首を傾げる。


「???なにいまの?」

「岩が敵だったってことっすよ」

「なるほどー!ユアすごーい!!」


ほへーと感心した様子で見上げてくるリーンにユアは苦笑する。


「まあなっちが言ってくれたから」

「ユア様のお力です」

「や、普通に狙ってたっすよね。どっちも、っていうかリコットもすごいっす」

「えへへ。ありがと」

「ありがたきお言葉です」

「当然」

「わたしも負けてらんないっすね!」

「頼りにしてるよ」

「……うっす」


ふんすと意気込むきらりんをなでなでして気勢を削ぎつつ。


「これ。ドロップ」


そう言ってリコットが取り出したのは、先ほどのモンスターからのドロップアイテムだという、一見なんの変哲もない石ころ。

『魔石の欠片』などというどことなく仰々しい名前が付いているらしいものの、触れても見つめても石ころにしか見えない。


「石ころだね」

「ん」

「あっはー!いらねー!」

「石ころっすねー」

「ごみですのね」

「触れても?」

「ん」


口を揃えていう中で、なっち(「・ω・)「がリコットから石ころを借りて握ったりコツコツ叩いてみたりして検分する。


「……密度にしては硬質に思えますが、それだけのようですね」

「もうつっこまないっすから」

「突っ込む、とは?」

「なんでもないっす」


石を叩いただけで密度と硬度をなんとなくでも把握できるという謎技術も使用人のたしなみということらしい。


なんにせよ見た目に反しないドロップアイテムだと納得しておき、改めてユアは周囲を見回す。

そもそも先程の岩のモンスターに気がついたのは、ほんの僅かな身動ぎが目に止まったからだった。それがあるということを認識した上でじっくりと見回してみれば、その大小や分かりやすさに違いこそあれどいくつか同じように潜んでいるモンスターを発見できる。


「近いのは6かな」

「……はい。私も見つけました。あれらです」

「うん、おんなじ。リコット?」

「ん」

「よし。じゃあとりあえず倒しとこっか」


ユアとなっち(「・ω・)「、そしてリコットの目算が合致したところで、最初と同じように一方的な遠距離からの攻撃で岩石たちを殲滅する。

近くの仲間が攻撃されるとさすがに反応を示すらしい岩石たちも、飛び掛かる間もなくあっさりと討伐されてしまった。


「れべるあっぷいたしましたの♡」

「あ、おめでとゾフィ。なっちもおめでと」

「はい。ありがとうございます」

「はいはい!こっちもレベルアップしたっす!」

「ん」

「おお、一斉レベルアップだね。おめでときらりん、リコット」


わらわらと寄ってくる面々にお祝いなでなでを与えつつ、しばらくステータスを操作する。

今のところ出番のないゾフィはMIN一極、なっち(「・ω・)「はSTR・SPD・DEXを程よく割り振るというのをすでに決めているらしく、さほど時間もかからなかった。


アビリティに関しては、リコットだけが新たに取得した。


『マナチャージャー』(EXP3,000)

・安静時MP自動回復速度増加:100%

・活動時MP自動回復:1.0%/s


安静にしている際のMP回復速度が2倍になり、さらに活動時もMPが自動回復するようになるという優れもの。

その効果にユアもほへーと興味をひかれた。


「リコットはMPたくさん使うもんね。私も狙おっと」

「ん。おそろい」

「む」


おそろいという言葉に敏感に反応するゾフィを宥めつつ。


それから一行は改めて山道を進み始める。

進んでいけば、岩石のモンスターは至る所に生えているらしく、発見の度に魔力弾と矢、そしてスターがあっという間に叩きのめす。相手が岩石とあってきらりんはあまり闘志も湧かないらしく、適当に応援なんかしていた。


ゾフィとなっち(「・ω・)「のレベルが再度上昇するころ、山道は自然と岩山を登るように斜面となっていた。明らかに自然に生まれたとは思えない程の不自然なまでの自然さで連結するその山道、ユアの若干の不安を察知したリーンが慎重に歩を進めるのが、きらりんには気が気でない。

斜面にあっても相変わらずのモンスター分布、もし見落としてうかつに近づけば本気で滑落もありえそうだと、周囲を観察する目にも少し気合が入る。


ずんずん登っていく一行。

徐々に険しくなる山道のおかげで増えつつある岩石モンスターが微妙にカモフラージュされたり足元に注意を払う分、進行はどんどんと遅くなっていく。


そうこうしている間にもまたゾフィとなっち(「・ω・)「、そして今度はユアとリーンのレベルが上昇した。


そこで新規取得可能となった中から、ユアは新たなアビリティを取得する。


『観察眼』(EXP3,000)

・MP:(対象により変化)

・注視した対象の情報を取得する

・プレイヤーのLVにより精度上昇


「看破系はやっぱり有能だよね」

「定番っすよねー。先輩にはぴったりっす」

「そう思って」

「ユアならなくていーのに」

「や、流石にシステム的なのは分かんないから」


さっそくユアは、そこら辺に落ちている岩石モンスターを相手にアビリティを試してみることにする。

注視って見つめればいいのかな、とじぃ、と見つめてみると、MPがわずかに消費されぶぉん、と視界にウィンドウが表示される。


『ロックドット』LV.5

・耐性:物理、緑地、風雷

・弱点:水冷

・ドロップ:魔石の欠片

・魔力を含んだ岩石に意志の宿ったモンスター。近くの岩石に魔力を浸透させることで仲間を増やすという説があるが、その真偽は定かではない。


「おおー、結構色々教えてくれるっぽい」


感心の声を上げつつ、せっかくだからとウィンドウを共有化して他のメンバーにも見せてみたりなどしてしばらく性能を確かめる。

どうやら注視というのはアビリティの使用を意識しながら一定時間見つめることを指すらしく、焦点の定まる限り射程に制限はないらしい。モンスターはもちろんドロップアイテムやその辺に落ちている石ころにまで効果が及ぶが、その程度であれば色々と試してみてもMPは大して減少しなかった。


総じて、視線ひとつで使えるというのが優れているだけの無難なアビリティらしいというのがユアたちの認識に落ち着いた。


そんなこんなをやりつつ山道を登っていた一行だったが、やがてその山道の突き当りに到達する。突き当りといってもそれは滑り落ちても奇跡的に生還できそうな程度の高さで、立ちふさがる岩石を越えていくには主にリーンが不安だった。


しかしその代わり、そこには洞穴がつながっていた。

岩山にぽかりと開いた、人工的な滑らかさの洞穴。

明かりひとつもないその奥はひたすらに暗く、どれほど続いているのかも覗きえない。


「一応訊いとくけど、どうする?」

「ん」

「れっつごー!」

「それでよろしいかと」

「っすねー」

「ゾフィもかまいませんの♪」


当然のように満場一致。

ユアはひとつ頷いて、一行は洞穴へ足を踏み入れる。



《登場人物》

(ひいらぎ)(あや)

・AWにおいて看破系アビリティは必須技能ですからして、この人がゲットするのは確定事項でした。なかでも観察眼は結構上位のアビリティに位置していて、その分取得条件は厳しめ。まあ綾の眼力なら余裕ですね。


柳瀬(やなせ)(すず)

・限界を、越えろ……!未だかつてないくらいの注意力で登山してます。でもリコットやなっち(「・ω・)「がさらっと転びそうな小石とか除去してなかったら今頃滑落とまでいかなくても転倒くらいしてそう。鎧でお姫様抱っこで山道とかまあ仕方ないですよね。


島田(しまだ)輝里(きらり)

・ほら、岩は殴りごたえないからさ。武器の損傷も大きそうだし。付与魔法?ああいいね、や、別にそんなシステム的なの気にしてないっすし。し!


小野寺(おのでら)(あんず)

・あまりにも早いマナコ。俺でなきゃ見逃しちゃうね。最初のロックドットに魔力弾を叩き込む前にはすでにユアから付与魔法を頂戴していました。魔法職必須アビリティをなぜかユアより早く取得する謎。魔法使用回数とか消費MPとかいろいろ影響あるのです。


沢口(さわぐち)ソフィア(そふぃあ)

・あれ君いたの……?っていうくらいに仕事してない。まさかユアより荷物適正高いやつがいたとは驚きですね。どちらかというと探索中心な上に本人がやる気皆無だからまったく出番がないのよね。戦わなくても経験値ってもらえるし?パラサイトソフィと呼んでくれ。


如月(きさらぎ)那月(なつき)

・相手が岩だからいまいち分かりにくそうだけれど、驚くべき射撃術のつもり。言葉すら不要な魔力弾と競える程度の連射能力とそれを外さないだけの圧倒的精度。システム的に射撃補正使ってない弓矢は威力的には一部近接武器を超越します。硬くて速いっていうシンプルな火力ですね。


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