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九尾の狐、 監禁しました  作者: 八神響
第4章 九尾の埋蔵金編
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第152話 誤算

「ただ、一つだけ誤算だったのは九尾をここに連れてきてしまったことだな。やはり面倒だからと手間を惜しんだら碌なことにならないらしい」


 怯えるハクをしばらくニヤニヤと眺めていた天魔雄神はその笑みを苦笑に変え、多少の後悔を覗かせる。

 常に傲岸不遜な天魔雄神は見せる珍しい表情にハクは疑問符を浮かべた。


「…………? 妙なことを言いますね。賞金を懸けられている私達を狙ったのは貴方でしょう?」

「俺様の話を聞いていなかったのか貴様は。俺様が貴様を狙うのは金などが目的なのではない。俺様はただ貴様と朧を会わせてみたかっただけだ。懸賞金のゴタゴタがあったおかげで朧にまで貴様の情報が回ってきたのは確かだがな」


 天魔雄神は竜胆の頭をトントンと指で叩きながらここまでの経緯を話す。


「俺様も貴様が現代に転生していたことは風のうわさで知っていたが、どこにいるのかは把握していなかったからな。どうやって探そうかと考えていたそんな折、一部の陰陽師を対象に貴様達の情報が売りに出された。もちろん朧は真っ先に飛びつき、法外な値段を支払ってここに来たわけだが、情報によるとどうにも人数が多いらしい。だから俺様が手助けとして、九尾以外の何人かを行動不能にしてやると言っていたんだ」 

「七福神の奴らまじで節操ってものを持ち合わせてないんだな……」 


 停戦協定は結んでいるはずなのに、躊躇いなく大黒達を売ったであろう七福神の面々を思い出して大黒はため息をつく。


「じゃあどうして私を……」

「だから誤算だ。わざわざ個別に霊力を探るのも面倒だったからな。外からパッと読み取って最も霊力の低い二人を連れ出した。そしたらあろうことか白面金毛九尾の狐が釣れてしまった。全く……九尾がこんなにもみすぼらしくなっているなんて、聞いてもいなかったし想像もしていなかっだぞ」


 大妖怪として恥を知れ、と天魔雄神は呆れながら言う。


 普段ならば『そんなことを言われる筋合いはない』と言い返すところだったが、今はそれよりも天魔雄神が放った言葉に違和感を覚え、ハクと大黒は顔を見合わす。


(ハクが弱っているのを知らない……? 竜胆って奴も陰陽師のネットワークを使ってるなら俺たちが指名手配されてることくらいは知ってるだろうし、そいつにくっついてる天魔雄神が知らないってことはそこにハクの正しい情報が載ってないことになる)

(貴方が住んでいた家の元家長が黙秘しているという線は……いえ、まずそこが情報元でない可能性もあるのでしょうか)

(ハクだけならともかく俺もセットで潰しに来てるんだし、この流れを作ったのはほぼ大黒秋人あいつで間違いないと思う。黙秘っていうのもピンとこない。事がここまで大きくなったんなら、あえて黙ってるメリットはないはず。それに協会のお偉いさんを頼ってるって言ってたし、そこで変に嘘はつかないはずだし)

(ではそのお偉方が情報規制を行っているのでは?)

(その可能性はあるだろうけど……危険度が高い任務を低めに誤魔化すことはあっても、逆はどうなんだろうなぁ……。難敵が弱ってるなら、その間に総力を上げて殺しにきそうだけど……)

(……ここで話し合っていても推測の域を出ませんね。そろそろ現実に戻って貴方の妹やあの陰陽師に話を聞きましょう)

(えっ、いや……そうか、純や刀岐なら知ってるはずだもんな。それにしてはここまで何も言ってこなかったけど、理由でもあるのか……?)

(そこも含めて問いただしましょう。貴方の妹が貴方に不利益なことをするとは思えませんが、刀岐という男の方はどうにも信用なりませんしね)

(……? まだ初対面でジロジロと見られたこと根に持ってるのか? いくら刀岐だって九尾の狐は見たことなかっただろうし、多少は仕方ないと思うけど)

(貴方は私をそこまで狭量な女だと思っているのですか? 違います。ただ、少しだけ似ているから良い印象がないだけですよ)

(似てるって……誰に?)

(………………昔に私を追い詰めた陰陽師、安倍泰成に)

「……っ」


 その人物の名前を出すとともにハクの眼に暗いものが宿り、大黒は息を呑む。 

 普段の幼い姿ならともかく、大人の姿を形どっているハクのそれは言い表しようのない程の迫力があり、大黒は二の句を告げずにいた。


 そうして大黒が黙ったところで、二人がヒソヒソと会話をしていたのをつまらなさそうに見ていた天魔雄神が話に入ってきた。

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