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翼の子ら

「みっけたーッ♪」

「お、おう?」


 十六羽……というのか、十六人というのか。上空から降下してきたのは翼の生えた少年少女合唱団みたいな子たちだった。天使みたいといえば表現として遠くもないんだけど、要はあまり鳥という感じはしない。そして、緊迫感もない。


「思ってたのと、ちょっと違うな」

「そう、なの?」


 ミュニオは首を傾げるけど、危険はないと判断したのか薬室内の弾薬を抜いて銃を背負い直している。

 鳥の獣人っていうからさ、もうちょっと(いか)ついのを想像してた。上半身がワシとか。なんかこの子たち賑やかで明るく落ち着きがなくて、そもそも小さい。ミュニオより小柄なので、身長は百三、四十センチってとこだろう。元いた世界でいう小学生くらいだ。


「その子、ワシに虐められてなかった?」

「どうかな。見たところ傷はなかったし、元気に泣いてたよ。あんたが母親?」

「そう。みんなが、親」


 よくわからんけど、集団で子育てする種族とかなのか。オズオズと近付いてきた有翼族の女の子に、あたしは赤ん坊を差し出す。泣き笑いの表情で受け取ると、彼女はギュッと抱きしめて頬ずりし始めた。

 飛んでくる直前まで、ジュニパーは“怒りや憎しみの感じがある”といってたけど、どの子もホッとした顔で特に緊迫感も敵意もないようだ。


「ええと……あたしが訊くのもナンだけど、なんでそんなに無防備なの?」

「え?」

「あたしたちが悪い奴だとかは考えないのかなって」


 お互いに顔を見合わせ、不思議そうな表情で見られた。ミュニオとジュニパーも、よく状況をわかっていないようだ。


「だって、赤いもの」


 赤ん坊を抱いた有翼族の女の子が、あたしたちの服や持ち物を指す。なんだそりゃ。


「あなたたち、“魔王”の仲間なんでしょう?」


 そういうことか。違う、といって良いのか微妙に判断に迷う。綺麗な赤い色の服や装備を持っているのは日本人の転移者である魔王のお仲間だという共通認識が――少なくともソルベシア近郊の亜人の間では――持たれているのか。でも、あたしたちその魔王とやらとは面識ないし、詳しい話も知らないんだよな。


「魔王の……知り合いの知り合い、ってとこかな。本人とは会ったことないから」

「それは、わたしたちも同じ」

「そうだね、ぼくもだ」

「ぼくは、いっぺん会ったことある」


 ひとりがしゃべると、他も(さえず)るように一斉に話し出す。そういうところは鳥っぽいというか、小鳥っぽい。


「それじゃ行くよ?」

「そうだね」

「ありがと、またね」

「またね♪」


 赤ん坊を取り戻したら用は済んだとばかりに、ピーチクと礼をいって手を振りながら飛び去っていった。落ち着きがないというか、集中力がない感じも鳥っぽい。悪気はなさそうだし、可愛いけどな。


「なんだか、慌ただしい連中だったな」

「これ、お礼だって」


 ジュニパーが、なんか小さな巾着みたいなものを見せる。小鳥のお礼って、なんだ。美味しい芋虫とかだったら嫌だな。

 ジュニパーが手の平に出してみると、中身はキラキラ光る赤い石だった。彼女の見立てでは、大型の魔物から取れた魔珠だそうな。こっちの世界では高値で取引される貴重な素材。いまのあたしたちにはあまり使い道はないけど、せっかくのお礼の品だ。ありがたくいただいておこう。見てるだけで、すごく綺麗だしな。


「北西に八十哩ほど行ったところに村があるから、遊びに来てっていってたよ」

「へえ」

「獣人と人間とドワーフが住んでて、牧場もあるんだって」

「……ん? ちょっと待て、それどこかで聞いた話だな」


 考えるまでもなく、思い出した。聞いたのはアドネの衛兵隊長代理からだ。あの転移者のガンマン。


「エリの、両親の牧場だと思うの」

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