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【書籍化決定!&新章スタート!】マグナム・ブラッドバス ―― Girls & Revolvers ――  作者: 石和¥
Scorching Beat

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テイクミーハイア

「ミュニオ、右側まだ大丈夫?」

「車体半分くらい余裕あるの」

「ジュニパーの判断でいいよ。少しくらい車体擦れたところで誰も気にしないし」

「……ぼくは、ちょっと気にする」

「さいですか」


 あたしたちは、現在なかなかの急勾配をランドクルーザーで降りようとしているところだった。

 傾斜自体スキー場の上級者ゲレンデ並みなんだけど、道幅も狭いところでは二メートルちょいしかなく勢いをつけて通過するには厳しい。ゆっくり荷重を調整しつつブレーキ掛けながら進んでゆくしかない。

 土砂崩れした場所を乗り越えるかどうかも検討はしたんだけれども、どうやら土魔法で意図的に引き起こしたものらしく被害範囲が広くて流出した土砂も深い。ランクルでもハマッてしまう可能性が高いと判断した。その奥で待ち受けている者がいるかもしれない。余計なリスクを背負う必要はない。


「迂回した先にも、敵はいるかもしれんけどな」

「そのときは、そのときだよ」

「近くに気配はないの」


 山道から苦労して斜面を降りると、今度は鬱蒼とした森に囲まれた獣道を抜けて山裾を大きく回り込む。

 途中でまた異常に狭い藪を突破することになったときは身動きが取れなくなりそうで不安だったけど、よく考えたら車をいっぺん収納して拓けた場所まで徒歩かジュニパーに乗せてもらって移動すりゃ良いだけの話だと気付いた。


「……もしかして、さっきの道も、降りた方が早かった?」

「ダメだよシェーナ、もっと“らんくる”を信じて!」

「え? そういう問題なの?」


 ともあれ、平地には出たので通りやすい迂回路を探す。しばらく遠くを見ていたミュニオが、なにかを確信した感じで進路を指差す。


「その先、左奥に拓けた場所があるの」

「お、いいな。ジュニパー、抜けられそう?」


 助手席のあたしとミュニオを振り返り、ハンドルを握る水棲馬のイケメン美女は余裕の表情で笑う。


「あのくらい“らんくる”なら全然問題ないよ。右手の、傾斜が緩いところから行こうか」


 大きなランドクルーザーがエンジンの唸りを上げて近付くと、鳥や獣の鳴き声や逃げ去る気配が感じられた。あまり大型のものではないので、警戒しつつも気にしないでおく。


「この辺りは、自然が豊かみたいだね。ほら、なにか猛禽類の営巣地がある」

「ええと……いや、見えん」

「あの大きな木の上の方、幹に丸くなった帽子みたいなのが巣だよ。鳥の種類はまでは、わからないけど……」

「たぶん、咆哮(スクリーミン)大鷲(イーグル)なの」


 聞いたことない名前だけど、イーグル……つうとワシか。下から見ると(ひさし)型になった巣は直径数メートルはありそうだし、食物連鎖の上位にいる大型の鳥なんだろうな。あの手の大きな鳥って岩山とかに巣を作るイメージあるんだけど、こっちじゃ違うのかな。巣があるのはえらく丈夫そうな大木だから、安定性は問題ないんだろうけど。


「そのスクリーミンイーグルって、何を食べてるの? ひととか襲う?」

「主な餌はウサギとか鳥、大きくても野豚の子供くらいなの。人間も、子供くらいなら(さら)えるかもしれないけど、人里近くには現れないから被害は聞いたことないの」


 それじゃ、ミュニオは体格的に危ないかも。まあ、魔法も使えるしカービン銃(マーリン)もあるし、そもそも危機察知能力がすごいから問題ないだろう。ランクルに乗ってる時点で野生動物に襲われる心配は、ほぼない。

 それじゃ行こうか、って感じで声を掛けようとしたところでジュニパーが車のエンジンを切る。ミュニオとふたりでドアを開けて車外に出ると、巣のある周囲を見渡し始める。


「どうした? そのイーグルがどうかしたのか?」

「う〜ん……あのね、巣に成鳥の気配がないけど、いま何か……」

「ほら、やっぱり巣の方からなの」


 耳を澄ませた姿勢で、ミュニオとジュニパーが固まる。あたしの耳にも、かすかに問題の音声が聞き取れた。


「……あれ、赤ん坊の泣き声?」

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