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見晴らしが原

 あたしたちが通されたのは小さな茂みの奥。小さな倒木の脇に、車座で丸まったコボルトたちの集団がいた。茂みは申し訳程度の目隠しにはなっているようだけれども、隠れているというほど隠れてはいない。あたしたちを迎えるコボルトたちにも、さほど警戒した様子はない。


「にーたん、おきゃくさん?」

「……さっき、あったのに」


 仔コボルトたちは、“そうだっけ?”みたいな顔してる。ウサギしか目に入ってなかったのかもしれない。


「ほら、あいさつは?」

「「「こんちは!」」」

「おお、こんちは」

「こんにちは、なの」

「みんな可愛いね〜♪」


 群れの長(アルファ)は、すぐわかった。ふつうのコボルトより少しだけ体格が大きくて、少しだけ表情が人間っぽい。そして話し方も、ふつうのコボルトより少し達者だ。

 違いがわかりやすいというだけで、印象としては大差ないんだけど。


「あたしはシェーナ、こっちがジュニパーと、ミュニオだ」

「仲間が、世話になった。ありがとう」

「いや、聞いてるかどうか知らないけど、オアシスのところでアンタたちの群れの仲間と会ってさ」

「「「え⁉︎」」」


 驚いてるところを見ると、さすがに遠吠えでそこまで伝えるのは無理だったらしい。まあ、せいぜい“いまから帰る”くらいのもんだったんだろう。


「七人には……特に、すばしこい三人には、ずいぶん助けてもらった」

「みんな、げんきだって」

「「「「おおッ!」」」」


 コボルトの群れのみんなは、それを聞いて嬉しそうに笑う。

 よく見ると、十人以上いるな。年齢は不明だけど大人と思われるコボルトが七人。プラス長がひとりに痩せコボルト一号二号でトータル十人だけど、チビコボルトが三人と、赤子コボルトがひとり。


「その子たち、もしかしてオアシスを出てから生まれたの?」

「そう」


 無茶すんなオイ……妊婦連れてこんな距離を移動してきたのか。最初の居住地を捨てるのは狂犬病の土漠群狼に襲われたからなんで止むを得ないとはいえ、どっかに定住地はなかったのか。

 あたしはそれを訊くと、長はあっさりと頷く。


「いくつか、あった。そこで子を産んで、動けるようになるまで暮らした」

「え」

「移動して、暮らして、移動して、暮らして。いま、ここで暮らしてる。もう少しで、移動する」

「ここ、あまり、えもの、いないの」


 ちょびっと若い感じの大人コボルトが、あたしに説明してくれた。彼らを見てわかったけど、年上の順に痩せてる。おそらく最年長な(おさ)なんて、爺ちゃんなのか痩せてるだけかわからんけど、手足も腹もガリガリで枯れ木のようになってる。


「待て、アンタら、その身体で移動すんの? どのくらい?」

「走って、三日くらい。そのくらいで、ちいさな森か、山がある」


 なんでそんなんわかるんだよ、と思ってジュニパーを見ると鼻を指して頷いた。

 嗅覚で? いや、ウソやん。


「湿った風、向こうから吹いてる。獣の匂いも、する。コボルトなら、わかる。ここ越えたら、楽になる」


 長の判断では、この平原を抜けるまでの辛抱だってことね。それが正解かどうかは知らんけど、理解はした。


「ま、その話は後でいいや。あたしたちメシ食いたいんだけど、みんな一緒にどうかな?」

「もちろん、歓迎する。我らの群れの仲間と仲間なら、それは我らの仲間」


 ああ、うん。やっぱりコボルト、長も思った通りのタイプだ。

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