表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定!&新章スタート!】マグナム・ブラッドバス ―― Girls & Revolvers ――  作者: 石和¥
Scorching Beat

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/271

ハンターズ

 北上するにつれて、少しずつ草木が増え始めているのが感じられるようになってきた。

 数日走ると、さらに緑が増した。いくつか林や小さな森と呼べるようなものが点在していて、奥に水場と思われる水面が光ってたりする。わざわざ近付きはしなかったけど、動物が集まっているのか草や木陰にチラチラ動くものも見えた。

 長閑(のどか)な風景とはいえ、緑が増えてくると、ちょびっとだけ気になる。


「なあジュニパー、この辺の緑って、ソルベシアの……なんだかいう森とは無関係なのかな」

「どうだろね。でも、ソルベシアまで千(ミレ)以上はありそうだし、直接の関係はないんじゃないかな……?」

「そう、かな」


 魔境とかいってたけど、ここのは……少なくともあたしの目には、ふつうの草に見える。願望込みだけど、喰われそうな感じはしない。


「でも森ができると保水力が上がるから、その水気が、大陸北部一帯には影響してるのかもしれないね」

「わたしも、そう思うの。土に養分が増えてる感じがするの。ほら」


 ミュニオがランドクルーザーの先に広がる地面を指す。砂漠や土漠のような枯れた色合いから、赤土というか茶色っぽい柔らかそうな感じになっているのがわかる。

 草木が育つのにはそれだけの理由があるんだろうな。草食動物が増えてフンや死体が分解されて土の養分になって……っていうような。


「ねえねえ、今夜は、どこで野営しようか?」

「そうだな。どっかに天幕を張るか……」

「これだけ草食動物が増えると、たぶん肉食の動物もいるはずなの」


 そうか。この辺りだと野生動物にも気を付けないと危ないのかな。まあ、ジュニパーやミュニオの感覚器をもってすれば襲って来る前に察知できるんじゃないかとは思うけど。


「ねえ、あれ何かな?」

「ん?」


 少しだけ高くなったところで停車させて、あたしたちはランドクルーザーを降りる。

 ジュニパーの指す方を、ミュニオも注視している。地平線に広がるのは緩やかな起伏と、いくつかの森か林らしいモコモコしたシルエットだけ。目の良いふたりは、何か見えたらしい反応で首を傾げる。あたしには、よくわからないけどな。


「双眼鏡、要る?」

「ありがと」


 差し出すとミュニオは観察しながら、小さく息を吐く。


「村、みたいなの」

「この辺りだと、帝国傘下の集落? それとも、ある程度は独立してるのかな」


 周囲の警戒をしてくれてたジュニパーが、なにかに気づいて声を掛けてきた。


「ねえねえ、あれ獣人の村なんじゃないかな、ほら」


 彼女の指す方を見ると、虎なのか獅子なのか猫っぽい感じの獣人の子たちが三人、少し離れたところからこちらに手を振っていた。

 あたしも手を振り返すと、ひょこひょこした感じで近付いてくる。よく見ると、まだ表情があどけない。大人もいないのに出歩いて危なくないのかな。


「「「こんちわー」」」

「おー、こんちはー」


 なんか可愛いなオイ。無邪気な好奇心と人懐っこい笑顔、三人でワチャワチャ揉み合ってるとことか、すごい仔猫感ある。

 背格好は、元いた世界の小学生くらい。小さい子の性別はわかりにくいけど、服とか表情からして、女の子かな?


「みんなは、この辺の子?」

「そー、ミチュの村」

「あれ、あそこー」


 三人が指差すのを見ると、やっぱり行く先に見えてた村みたいだ。まあ、あたしにはよく見えてないんだけどな。危ない目に遭って来なかったのか無防備な感じの子たちを見て、他人事ながら大丈夫かと思ってしまう。


「その村に行ってみたいんだけど、余所者が訪ねても大丈夫かな」

「だいじょぶー」

「けっこー、おきゃくさん、くるよ?」

「へえ。ミュニオ、ジュニパー」


 その村を訪ねるかというあたしの問いに、ふたりは頷く。決まりだ。


「ところで、お嬢さんたち、こんなとこで何してたの?」


 ジュニパーが仔猫ちゃんたちに尋ねる。しゃがんで視線を合わせるあたり、なんだか子供の相手に慣れてる感じ。彼女自身が、子供といっても良い年齢なんだけどな。


「かりー」

「狩り?」


 仔猫ちゃんたちがクルッと背中を向けると、小さな弓と矢筒、足を縛られた鳥が数羽ずつ背負われていた。


「おお、みんなすごいな。あたしより上手だ。さすがに鳥は当てられる自信ないわ」

「へへへ……」


 背中を向けたままなので、三本のシッポが得意げに揺れるのが可愛い。


「よかったら、村まで乗ってくか?」

「うん、ありがと!」


 仔猫ちゃんたちはぴょんと荷台に立って、嬉しそうにシッポを振る。三人で体重掛けてサスペンションの動きに喜び、屋根をコンコン叩いて材質やら質感やらを確かめてる。


「これ、ばしゃ?」

「うまは?」

「馬はいないんだ。これは油で動く……魔道具みたいなものだよ」

「まほう?」

「「すごーい」」


 助手席に座ってもらおうと思ったけど荷台が良いそうだ。となると、あたしが運転してミュニオとジュニパーには荷台で彼女たちが落ちないように支えてもらおうかな。

 運動神経に優れた獣人なら落ちたりしないし落ちたところで怪我なんかしないといわれたけど。まあ、あたしもそうかもしれないとは思うけどさ。


「それじゃ走るよー、ちゃんとつかまってなー?」

「「「はーい♪」」」


 いちいち可愛いな、もう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ