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恋愛短編まとめ

初恋+間食

作者: 甘宮るい



 辞めていたお菓子の味は、美味しくて仕方なかった。

 口の中に広がる酷い砂糖の感覚は原材料の小麦粉と卵と一緒に更なる誘惑を続けた。空いた袋のその中身は封をされることを諦めている。

 食べ終わった後の罪の味は、想像ができた。こうして口に運ぶ瞬間でさえ、しっかりと思い浮かべ後悔をする。それなのに止まらない。この味は一瞬の幸福と後の降ってくるような不幸で出来ている。

 原材料のぶどう糖はこっちを見ている。ちゃんと米を食べればいいと言いたいようだ。まぁまぁと宥めるように袋の裏を見るのを止めた。

 そこはきちんと控えている。一応は1週間頑張ってみようと決めた。

 付け焼刃のような努力は無駄だろうか。初恋の人に会える、それを2ヵ月前に知っていたとして私はすぐに頑張れるほど柔軟な人間でもなければ、多分そんなに真っ直ぐな人間でもない。

 あと2日という時間は長い。もう48時間もないとは言え、この味は幸せも不幸も与えるのだ。こんな画期的で恐ろしくて、魅力的なものを我慢できるわけがない。普段の味とは大違い、大体の人は罪の味だと思うかもしれないが私にとっては素敵な味。一口で感情を溢れさせる。

 魅力的だろう。そうでないとは言わせない。

 適当でも完璧でも何でも進んでいく時間の中で、この味はいつでも変わらない。

 深夜に食べるラーメンは昼食よりも夕飯よりも美味しい。けれど、ラーメンはレディにとっては重たい。罪に偏りすぎている。ダイエット中にちょっとだけ食べるお菓子、甘いお菓子は特に溜まらない。時間も掛からなければ、重たくもない。一瞬で終る罪だ。

 袋を開けて、一口。少し租借、飲み込む。

 ほら、私は私にとっての罪を犯している。明日を越えて明後日の私にとって、これは少しだけ罪になる。

 適当という言葉が、ニュアンスのままに勝手ではなく何だか当てはまっているように見えることがあるように。それが正しいときがあるように、こういうときもある。

「あれ、どっちが正しいんだっけ」

 明後日の私に言ってやりたい。どちらも正しくはない、どちらも正しい。

 初恋の相手には一度も気持ちは言えなかった。相手も別に満更でもないだろうことも、薄々分かっていたくせに何もしなかった。今の彼には素敵な彼女がいるそうだ。今の私にはまだ彼が忘れられずに、面倒な同窓会に参加しようとしている。

 お菓子を食べてしまうくせに。

 我慢できないのは、勇気があるのとは違う。私は彼のことが多分、どうでもよくなかったのだ。我慢をしてしまったのは、私の中の彼と彼自身がぴったりと引っ付く瞬間を知らなかったからだ。

「もう一口いいか」

 この罪を味わえば、諦めが付くだろうか。口に運んで飲み込めば、あの時の私も今の私も許してくれるだろうか。いや、怒るだろうか。

「確かにかわいい姿のほうがいいけどさ」

 いつか、こんな私のことを見てくれる人がいるといいな。

 この味は、やってくる不幸も幸福も美味しいと思わせる。



どうだったでしょうか!!!

一発書き下ろしです。私のところにもついに小学生のころの同窓会のお知らせが来ました。

言えない初恋の相手が来ればいいなと思ったのですが、何だかいいやと思って断りました。

私もこの子と同じく我慢が出来ないタイプです。勇気もないタイプです。

ふわーっと甘くて、ちょっと苦い気持ちになってもらえれば幸いです。


よければブクマ、評価、感想等よろしくお願いします!

(長編を7月からちょっとずつ連載してます、よければ覗いてみて下さい)


連載中長編「まだ君が僕を呼んでいる」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 初恋…素敵です。いつか自分にも来てほしいな
2018/08/27 17:21 退会済み
管理
[一言] 久し振りの同窓会はワクワクするものです。その最大の理由はやはり初恋の人との再会でしょうね。 現在のお互いの状況に関わらず、夢を見てしまいます。 どんな結末になるのか判らない夢より、目の前の幸…
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