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ユレイユ書店の歴史の書  作者: 榮 裕也
一章 ミフィア・フィーシル
3/28

取り合えず魔術大陸に帰る

002


・・・

・・・・・

・・・・・・・


「ふあぁぁ・・・おはようございます。お父様、お母さま・・・」


・・・・・・・・・。


「お父様・・・?お母様・・・?どこに行ったの?皆・・・どこぉ?」


お母様とお父様が居ない。私が起きたときに居ないなんて初めてな気がする。そして眠い。二度寝しようかなあ。


「何処?お兄様ぁ、お姉様ぁ・・・うーん・・・」


「まずは周りを見てくれ。ここがあんたの家じゃないことが分かるだろ。」


「ふぇ?」


ううん?知らない声が聞こえる。頭を布団から頭を出そう。・・・うう、寒い。やっぱりこのまま二度寝を・・・あれ?このおじさんは誰だろう・・・?

少し心配になってきたので素直に周りを見る。そこにはいつも違う天井、壁。いや、一応知っている。昨日私を止めてくれた家だった。


少し頭の中を整理してみる。

たしかここに居る理由はボロボロになった私を介抱してくれたから。お母さんから逃げるために右手と右目を・・・考えただけで気持ち悪くなってきました・・・。

お母さんから逃げた理由はお父様やお母様が。


「お母様もお父様も死んでしまったんだ・・・」


うう、・・・お父様もお兄様もお姉様も・・・何で死なないといけなかったんだろう・・・。悪い事なんてしてないのに・・・。私だけが生き残った理由は何だろう。私は何をしたらいいんだろう・・・。


「頑張らないといけませんね・・・。みんなからもらった命を無駄にはできません!」


空元気だけど、無いよりましなので元気を出しておきましょう。そう気合いを入れたのはいいが今私はどうするべきなんだろう・・・?


そんなこんなで色々考えているとドアから丁寧は二回のノックが聞こえた。咄嗟に『どうぞ。』と言いそうになったが喉に押し込む。ここは私の家では無いのでどうぞと言う資格は無いと思う。というかノックしないで入ってもいい気がします。


そのままガチャ、とドアが開き昨日のおじさんと謎の女性が入ってきた。たぶん謎の女性さんは私の事を知っているんでしょう。自己紹介とかをとばして質問を投げ掛けてきた。


「ミフィアちゃん、昨日の紙、まだ持ってる?」


わ、わ、わ。どうしようどうしよう!えと、何を言えば!?


「え!えと、その、は、初めまして!!ミフィアです!!」


「え?ああ、私と会うのは始めてね。私はこの人の妻だよ。ミフィアちゃんが寝た後に帰ってきたんだ。サンスレットは人使いが荒くてね。」


なんと。サンスレットさんがそんなことをする人だったなんて!でもそんな雰囲気ではなかったような気がするんですが・・・


まあ実際にこの人が言っているんだから本当の話なんだろう。自分の勘ではなく周りの意見を聞こう。


「えっと・・・紙ですか・・・ありました!ユレイユ書店って書いてありますね!」


ユレイユとはどなたなんでしょうか・・・?そんな名前の人は・・・しらないなあ・・・。

お父様からも聞いた事かない名前だから私が知っているわけないけどね。


「ユレイユ書店の教育機関かあ。私とあなたが初めて会ったのもそこだったわね。」


「そうだな。びっくりしたぜ。入学試験前にベンチで黄昏ていた女が居たんだぜ?ちょっと気になって話しかけたら『あなた、強そうね。』だってよ。」


「ふふ、本当にちょっと気になっただけなの?私に話しかけて来たときはガッチガチに固まってたわよ?」


「う、うるせっ!!」


お父様もお母様のこんな感じだったなー。お姉さまは妬んでいたように見えたけど二人が幸せならそれでいいのでは無いでしょうか・・・?


「そうそう、その紙の説明だったわね。それは『ユレイユ書店の教育機関』っていう学校の入学許可証よ。それも、特待生でのね。」


「特待生ですか?私なんかが貰っていい物なんでしょうか・・・?」


私にはそこまで期待しないでくれると嬉しいんだけどなあ。特待生とかなったら一目置かれて友達が出来にくくなったり、ちょっと頭がいいからって調子のってんじゃないわよ団に目をつけられてしまう。


「私が見た限り、ミフィアちゃんはこれから沢山の試練が待っていると思うの。だから今のうちに力をつけておかないと後々きつくなると思うんだ。まっ、友達でも作る位に考えて行ってみたら?」


今その友達が出来ないんじゃないかって事を危惧していたんですが。


まあ、結局は下に行かないと始まらないし、遺族が行方不明は場合は七年間の間はその人の物、七年後に資産が完全にお母さんの物になる。だったら今のうちに学校にいって友達を作っておかないと。


いいお母さんを演じて『まだミフィアが死んでいるはず無い』と主張したことが仇になってますよお母さん。


それと、私が貴族だって知られたら、そこから友達を作るのは至難の技だからね。うん。とりあえず断る理由もないし、その学校に行ってみよう。ただ・・・


「私、この招待状を使わずに入学します!」


そう。この紙はあくまで最後の手段。ちゃんと試験を受けてちゃんと合格したら私ははれて普通生徒の仲間入り!!ふっふっふ。私って冴えてるなぁ。


「まあ、それでも合格できるだろうな。飛行ができるほど風魔法が得意ならどの科でも引っ張りだこだと思うぞ。」


何を言っているんでしょうか。これは風とかそんな属性じゃ無いんですけど。


「これは風魔法じゃなくて重力魔法ですよ?」


私がそんな風に返すとおじさんは驚愕を顔に出し、女性は少し深刻そうな顔をした。何がそんなに深刻なのでしょうか?私はそんなに変なことを言ったつもりは無いんですけど。


「・・・ミフィアちゃん。普通の学校生活を送りたいならその事は誰にも言っちゃダメよ。その魔法は現在二人しか・・・ミフィアちゃんを含めたら合計三人しか使ったことがない魔法なの。そんなもの使ったら学校なんて行けずに宮廷に引っ張られるわよ。」


そんなまさか・・・いやでもお父様もお姉さまもこの魔法つかってなかったな・・・このありがたい助言はしっかり胸に刻んでおきましょう・・・。


「分かりました。この魔法は封印します。しかし、その二人は宮廷に居るんですか?それなら会ってみたいです。」


ちょっとした好奇心で訪ねたのですが・・・女性は苦笑いを浮かべました。


「あー・・・片方を無理矢理結婚させようとした宮廷をもう片方が潰したせいでその二人は野放し状態なのよ。新体制なってもその恐怖は拭えて無いのよね。」


なるほど。その人は単騎で一国のお城を落とすことができるんですね・・・私はたぶん無理なのでいたって普通ですね!!


「あ、今自分はできないから私は普通だって思ったでしょ?そんな人外引っ張り出して比べてる位なんだからミフィアちゃんも十分異常よ。」


考えてることがばれた!?なんで!?


「考えてること全部顔に出てるわよ・・・」


呆れたような顔で私を見てきます。そんなに分かりやすかったんでしょうか。ポーカーフェイスポーカーフェイス。


さて、何をしましょうか。体が怠重だるおもなのであまり動きたくはありません。正直に言ったらあと二、三日寝っ転がっていたいです。ユレイユ書店の教育機関が何処にあるかとかはあとでじっくり見ておきます。


それにしてもこの紙綺麗ですねー。真っ白でさらさらです。っと、あれ?一般試験の日程・・・明日?


「それでは、もう行こうと思います。」


「そんなに急かなくてもいいんじゃない?せめてベッドから出て、朝食でも食べながらこの話したらよかったのに。」


それもそうですね。私ベッドに座ったまま話してますしね。とりあえずベッドから出ましょう。よっと。


「『クローズ』」


やはり便利ですね。着替えの魔法。魔力の消費が若干大きいですが動かずに事を成せるのは魅力的です。


「善は急げです。いつ家出しても大丈夫なようにアイテムを持っておいて正解でした。お母さんは信用しないと決めておいたけど本当にこんなことをするとは思っていませんでした。」


「あと二、三日ここにいてもいいんだぞ?急がない理由は無いかもしれないけど急ぐ理由も無いだろう。」


「いえ、急ぐ理由ならあります。」


そう。特待用の紙にかかれていた内容に急がないといけない理由があるんです。


「この紙に、『入学試験は明日』って書かれてました。今日中に近くの宿を見つけておかないと明日に支障が出てしまいます。」


「なるほど。なら仕方ないな。・・・きつくなったらいつでもここに来い。話くらいなら聞いてやるぞ。」


おじさん・・・なんか結構いいキャラだったんですね!名前も聞いていませんがそこまで言ってもらえるなんて思ってもいませんでした。今聞くのは失礼な気がするので次会ったときに聞きましょう。


寝室?の窓を開けて外に出ます。その勢いで空に飛び立ち、加速。あ、言っておかないといけないことを言い忘れるところでした。


「ありがとうございましたー!!」


ちゃんと聞こえたでしょうか・・・?二人とも手を振ってくれているのでたぶん聞こえたのでしょう。


そのまま加速して、私は飛び去りました。



「嵐みたいな子だったわね。」


女性は飛びっ去っていくミフィアの背中を見ながらそう呟いた。その呟きが聞こえたのだろう。男性は一歩、二歩と歩き、女性の真横に移動する。


「うちの息子は今どうしてるかなあ。偶然にも教育機関に居るかもな。」


男性は彼女と自分との子供の身を案じる。自分達の子供もあれくらいの年齢で、あれくらいの自由な年頃なのだ。一番はらはらさせられる時期と言ってもいいくらいだ。


しかし、あの子と息子が同じ学校か。ユレイユ書店の教育機関の回りにはいくつも学校があるのであまり期待はできないだろう。確率が低すぎるので言われるまで考慮してすらいなかった。


「それだったら、何かのおとぎ話みたいで面白いわね。」


そうなれば、あの二人に幸多からん事を。




003


・・・

・・・・・

・・・・・・・


ミフィアです。


今、自由落下中です。空を飛んでいる途中でバードストライクを食らってしまいました。


すぐに建て直そうとしたんですがこれも何かの縁でしょう。当たり屋の鳥さんを焼いてチキンにしながら落下しています。火の魔法って便利ですね。時速三百キロ前後の風に当たっても魔力が切れなかったらいくらでも火を出し続けれますからね。


「それにしても、あの浮遊大陸って大きい上に驚くほど高い所に位置してるんですねー。」


私は伊達に落下してはいないんです。

かれこれ三十分は落ち続けています。仮に時速三百キロで落下しているとしたら、私はかれこれ百五十キロも落下していることになったりします。前世の世界ではもうとっくの昔に宇宙空間の高さだったはずですけどね。


しかもそれ以外にも驚くべき事が。


私が飛び出した家の位置はおよそ中央。そこから横に・・自由落下して大陸の外を目指していたのですが、なかなか見当たりません。サンスレットさんが『魔方陣』を使わないでここまで来たのかと質問してきた意味が今なら分かります。


いくら飛行魔法を使ってここまで上昇してきても外周からあの都市までの距離がおかしいんです。自由落下っていうことは時速三百キロくらいまで速度が上っているってことなんです。


八時間かかりました。


外周につくのに八時間かかりましたっ!わかりますか!?八時間ですよ!?時速三百キロで八時間です!ざっと二千四百キロは飛行したことになるんです。大陸っていうけどそんなに大きくないだろうとか思っていましたけどおおよそオーストラリアを超える程の大きさです。大陸って単語なめてました。


私が不時着した場所は外周付近だったらしく、そこでおじさんが私を保護、魔法陣で帰宅という流れだったらしい。

サンスレットさんの温情を受けて魔法陣で教育機関に飛ばしてもらえばよかったと後悔しました。


そして現在に至ります。

そろそろ大陸に着くころだと思っていますが・・・もうすぐって何でしょうね。もうすぐ着くだろうってここ十五分ずっと思ってますよ。中途半端に前世の記憶があるせいでもうそろそろ地上だろうという先入観でずっとハラハラしているのです。


はた迷惑な前世の記憶。これがなかったらわざわざ人生かけて普通を貫き通さずに済んだんです。・・・いえ。仲間外れになると忠告してくれたこの記憶には感謝こそすれ、憎まれる筋合いはないはずですね。いい仕事してますよ、私の記憶。


「といっても、全然地面が・・・」


うわっやっと地面が見えました。しかも結構人がいますね。空を飛んでいると高位の魔法使いと思われそうなので隠れましょうか。


・・・ん?なにやら騒がしいですね。人がたくさんいると思ったら何かを囲んでいます。あれは確か魔獣でしょうか。見た目は虎に近いです。サイズは・・・おかしいです。五級、四級、三級、準二級、二級、準一級、一級、超級、絶級。

あれはその中でも超級に位置しています。具体的にどれくらい強いかというと国の軍隊一個丸々使って何とか討伐できるくらいのサイズです。


国の軍勢は全員七十レベル、スキルは一人一つは持っていて、五万人から七万人と仮定しての計算ですが。


うん。あの人たちは頑張って超級魔獣を倒そうとしているんですね!頑張ってください!って言っている場合じゃないです。大勢いるといってもせいぜい百人。絶対に勝てません。というかあの人たちが、まだ死んでいないことにすら驚きたくなるレベルです。動きを見ても全員五十レベル前後。ベテラン程の実力ですがこのパーティーで魔獣を討伐したいならせいぜい二級が限度でしょう。


あ。なんで全滅しないかがわかりました。見えました見えました。超級魔獣を一人でひきつけている男性がいます。年齢は十五といったところでしょか。


剣筋、反応速度から見て彼のレベルはすでに八十を超えているでしょう。でも、あれを倒したいなら後ろで固まっている中堅兵士の内五人は同じくらい強くないといけません。彼はあくまで時間稼ぎ、防戦一方な戦いをしています。突進をいなして、刃を退け、魔獣特有のスキルを後ろの兵に当たらないように逸らす、逸らす、逸らす。


むう・・・私が出ても倒せそうにないですし、軍の人たちもゆっくりですが撤退しています。私はそそくさと目的地に移動させてもらいましょう。


「ひっ・・・やめろ!!こっちを見るなァァ!!!」


超級魔獣が一人の男をにらんだと思ったら発狂し始め魔獣に魔法を打った。

何をやってるんですか!!と叫ぶが落下中なのでその声は誰にも届かない。魔獣は魔法で作り出したものを喰う。魔法での攻撃はできないし、魔力で作った炎で焼こうとしてもその炎は喰われてしまう。そしてその魔力を糧に強くなる。


男の全魔力を喰った超級魔獣はさらに早く、鋭く動くようになりました。魔力を喰ったのはこれが初めてなんでしょう。魔獣は男の魔力の返還先、『炎』を取り込んだ炎魔獣になってしまった。くい止めていた男性が対応できなくなってきた。


「・・・くっ、早いッ!」


対応できずに剣を持っていないほうの腕を持っていかれる。腕から大量の血が流れだした!うっグロイ・・・何とかしないと!


でも、ここで油を売っていたら入学試験まで寝ずに飛行しないといけないし・・・

ええい、ままよ!人の命がかかっているんだもの!助けなきゃ!


そうしてやっと私は大陸に着地した。



ずどぉぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉおぉん


大きな音と共に砂煙が舞う。いきなりのことで魔獣は動きを止め、男性は剣を構え、兵は指揮系統を失い混乱の中にある。


砂煙の中からは小さな、本当に小さな女の子が姿を現す。年齢にして七、八歳くらいだろう。どう背伸びをしても十歳には見えない。少女は不敵に笑いながら魔獣のもとへ歩いていく。男性も兵も、魔獣さえ呆然としてその少女を見つめる。


少女が手を伸ばせば魔獣に届くくらいの間合いで彼女は止まった。そこで混乱も冷めていく頭を必死に働かせ、少女に声を投げかけるものもいた。


「何をしているんだ!早く離れろ!死ぬぞ!」


男性はいち早く対応し、少女に適切な言葉を投げる。しかし、投げかけた言葉は『普通の』少女にかける言葉だ。レベルは低いし、この戦闘についていける動体視力も備わっていない。しかし、剣の扱いだけは一線級だった。


キン、という音と共に剣が振られる。どこからともなく取り出された剣は超級魔獣の肩口をバッサリ切っていた。一瞬で相手の柔らかい部分を見極め、そこに対向車線を走っている新幹線の上についている針に糸を新幹線に乗りながらすれ違いざまに通すがごとく、当てて見せたのだ。魔獣も油断していたとはいえ、超級に類する存在。小娘の一撃なんて寝ててもかわせるというものだ。しかし、今回は違う。さっと後ろに回るように回避したというのに小娘はこちらを向いていて、肩に大きな亀裂ができたのだ。


魔獣は生まれて初めて『恐怖』を覚え、ざざ、と後ろに下がる。


少女は不敵は笑みを崩さず、彼らにこう告げた。


「私がここをくい止めます。皆さんは避難してください。」


言い切ってしまった。そこに勝算などあるはずがないのに。



やってしまいました。勝算も何もないのにここは死守するとか言ってしまいましたよ。ああ、私の人生、短かったな・・・と、冗談はここまでにしておきましょう。確かに勝算はありませんが取り合えずこの人たちを逃がすことはできます。逃がした後に私はいったん退却、逃げた人たちが強い人たちを連れて戻ってくるまで私が魔獣の進路を変えながら耐えるというのが最善でしょう。


まずは・・・この人たちを逃がすところから。


「『*ニ** **ソ** ハ** ****ロ』風よ吹き荒れろ!!」


風の呪文を唱え、兵を遠くに飛ばす。いちいち止まったり進んだりして退却が遅くなっては目も当てられません。なので、強制送還で。

この魔法は落下地点に強い風を用意し、吹き飛ばして安全に輸送する簡単な魔法です。ただし、この魔法はさほど遠距離はできず、せいぜい百メートルがいいところの魔法だそうです。さらに飛ばせるのは軽いものに限ります。

しかし、魔法も天賦の才があるらしい私が使えば、人を百人輸送できる大魔法になるのだっ!。ただし魔力も有限。魔力はほとんど尽きてしまいました。


「うわあぁぁああああ!!」


「なんだこの魔法はッ!!」


「誰がこんな大魔法執行したんだ!?ここには魔法使いなんて居ないはずだろ!?」


かなり距離をとることができた兵達は心の余裕ができたのか一斉に声をあげる。自分達を救ってくれた救世主が誰なのかを知りたいようでしたがヘタレなので此方には来ません。まあ来たら来たで邪魔なのでまた追い返しますが。


しかし、この風魔法に乗らなかった人が一人。名も知らぬ一番強そうな男性です。腕からの出血はある程度収まっているが片手でどうこうなる相手では無いのは承知なはずです。両手で戦っても腕を持っていかれるレベルなんですよ?早く逃げましょうよ。


「逃げてください。ここは私が食い止めますので!」


「残念だが、それはできないな。君は僕より強いだろうけど一人じゃ倒し切れないだろう?協力して倒そうとは言わないけど、僕が足止めしている隙をついて倒してくれると嬉しいかな。」


いや、私とあなたが共闘してもぶっちゃけ勝機は零ですよ?でもここで魔獣を逃がせば回りに被害が出るかも・・・


腕一本かぁ。この男性も命張っているんだし、私が出し惜しみするのはあれなのでもうどうにでもなれ!!


「私が切り札を使います。見たことはあとで記憶から消させてもらいますね。」


私がそういうと男性はニヤリと笑いました。む。この人は危機感があるのでしょうか。

男性は私が思っていたよりアホな方なのでしょうか?


「君はそういうモノを隠していると思っていたよ。何せ、自分が圧倒的に不利だったとしても、君の瞳には死が写ってないからね。」


思ったよりまともな回答でした。人を見る目も有ると言うことは実はこの国でも屈指の実力者なんでしょうか?

ならば自分の実力はもっと低く見せる必要がありそうです。

ノット化け物。アイアム人間。


御託はいいとばかりに飛びかかってきた魔獣を私は右手で受け止めます。そして予想通り、私の右手は噛み千切られました。


しかし、『予想通り』です。

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