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ユレイユ書店の歴史の書  作者: 榮 裕也
一章 ミフィア・フィーシル
27/28

“歴史存在”  ‐ ヒストリー ‐ ‐ ザ・ユレイユ ‐

三話同時投稿の二話目です。

ラストまで駆け抜けます。

最近別シリーズを書きたくなってきたので許してください。

「貴様まさか・・・『歴史存在』ザ・ユレイユなのか?」


「ええ。そうです。私も貴方も、自己中心を極めたような人間だと私は思っていますよ。違いますか?」


メイルさんは先程からずっと男を見据えています。いつもよりずっと冷たく、鋭い目で。同族嫌悪のような感情なのでしょうか。自分と相手が同じと言うわりに視線が厳しいです。


「ふうん?どうしてそう思う?」


ルークは揶揄うようにメイルさんに問いかけてます。


「貴女だって分かっているでしょう。『ユレイユ書店の歴史の書』を使える者は全て知っていなければなりません。自分の歴史を。・・・そして、自分の本質を、本音を。」


メイルさんが一息置くと共に静かに風が流れます。


「そしてその上でこの本に手を出す人間なんて高が知れてるんですよ。貴方も、私も。」


メイルさんは言いたいことを言い終わったのでしょう。それ以上は何も言わず黙ります。


「はは・・・ははは!!その通りだよ!やっぱりこんな本にたどり着く人間なんてどいつもこいつも屑なんだな!安心したよ。まかり間違って俺にこの本が回ってきたのかと思ったが来るべくして来たんだな!」


そう言った瞬間ルークの魔力が目に見えて増えていきます。だめです。スカ〇ターが有ったら確実に爆発して壊れていますよ。


「メイル・シンフォル。俺が言うのもアレだが、お前みたいな害悪を放置しておくのは心が痛む。即刻殺してやるから安心して死ね。」


えっとですね・・・ルークさんキャラブレブレですよ?ええと、作っていたキャラが厳かな感じの奴で・・・素は気取ってて超ハイテンションで屑で悪い奴を取り締まるくらいの一滴の正義感くらいは持ち合わせている人?


しかも話を聞いている限りその害悪ってルークにも適用されますよね?


「そっくりそのまま貴方に返してあげましょう。」


やっぱりそうですよね。



「『***ナ***** ***イ** ** **ム*****』略式魔法陣展開。拡張。スクウェア式簡略魔法陣四式・・・六重魔法陣分解・・・『***ヲ** *****ン* 二******** ***テ****ア******* ****ルイ*******シ** ***ナ**** **ハ****ナ** ***ク****** **ノ***** ****デ*****』スクウェア式魔法陣二‐四式解凍。複製・・・『***ザ*** **ン** *二*** ****』微調整魔法陣二式・・・スクウェア式魔法陣二‐四‐零式発動。」


メイル・シンフォルは今までにない程の高度な魔術を発動する。しかしこれすらも戦闘の前段階・・・つまり抜刀し構えてる動作と然程変わらないのだ。


メイル・シンフォルは魔術の改造が苦手である。正確に言えば即席で応用の効いた魔術を発動するのが苦手で事前に想定に想定を重ねて怖ろしい程の魔術を作っている。


想定していない事態への対処は並み以下だが、この対処法には利点もある。魔術とは即興でアレンジを加えた場合は必ず歪が生まれる。魔力を余分に消費したり、威力が下がったり。最悪の場合は無発動、暴走なんてこともある。


しかし、先に魔術を作っておくとその心配が一切無くなる。


手で掘った土の窪みに水を流すより予め木で作っておいた水路に流したほうが届く水の量も、質も、全く異なることが分かるだろう。もしかしたらその土の窪みは浅すぎて水が零れたり、深すぎて目的地に届かないかもしれない。


ですが既にサイズが規定であるならばイレギューラーが起こることなど皆無と言っていい。


「さて、私は準備が整いましたよ。スポーツマンシップに則るくらいの常識は持ち合わせていたようですね。」


「スポーツマンシップって・・・あんたも転生者なのか?」


スポーツマンシップという言葉はこの世界には無い。この言葉を聞いたことがあるルークはメイル・シンフォルの事を転生者だと思ったようだ。


「残念ながら私は転生者ではありません。夫が色々持ってくるのですよ。ええと・・・『第三次元十六宇宙アマノガワ銀河太陽系地球日本』産のビデオやらなんやら。ああ、W〇-Fiも引いててよう〇べやに〇どーなども簡単に見れるそうです。」


「ならその夫も殺してその場所も確保しないとな。この世界でまたよ〇つべと〇こどーが見れるとは思っていなかったぜ。」


確かにこの世界で日本のメディアが使えるというのは驚きだろうし奪ってでも利用したいだろう。しかし、メイル・シンフォルの夫がWi-〇iを引けるほどの実力を持っていることに気が付かないほど頭が回っていないのはいただけない。


「死ね」


ルークはメイル・シンフォルがしたような詠唱はせず巨大な魔法陣を作り、幾つもの土の弾丸を形成する。しかしどの弾丸もメイル・シンフォルの半径十メートル以内で消滅する。


だがしかしこれはメイル・シンフォルにとっても想定外であった。なぜなら彼女は半径五十メートルを超える魔法陣を足元に展開しており、必要に応じて半径二万から三万メートルまで広げることも出来る陣を圧縮し、攻撃力、防御力共に向上させているのだ。


本来は魔法陣に当たった瞬間粉々になるのだ。


四十メートルも魔術が維持できるのは流石と言える。


「・・・フン」


ルークはメイル・シンフォルが展開した魔法陣を鬱陶しく思った様で手に持っている杖を振る。何も起こらなかったが恐らくその魔法陣を消すことを目的とした魔法が発動したのだろう。しかしここまで精密な魔法陣は流石の全能列強第二百六位でも困難だったと見える。


「チッ!」


ルークはもう一度杖を振る。此度は先程の土の弾丸より若干大きく光沢のある弾丸を作り、打ちます。色は血を連想させる紅で、ミフィアは逸早くそれを不壊合金アダマンタイトだと気が付いた。


彼女は一度作ったことがあることからルークがアダマンタイトを作ったのではなく、予め不壊合金アダマンタイトの形を整えた上で格納し今転移させて手元に置いているのだと分かった。ミフィアは念話でそれをメイル・シンフォルに伝える。


総弾数が限られていることを知られては不壊合金アダマンタイト玉切れの心配を隠しながらブラフを使うという戦法が封じられる。限界が見えない消耗戦も怖いですが、それ以前に限界があるか分からない消耗戦の方がもっと絶望的だ。


ただ、メイル・シンフォルの利益はルークの不利益であるため益々ルークの表情が歪む。


「『*****************************************************』」


しかし次の一手で形勢が傾く。彼は『魔術言語』ナチュラルマジシャンのスキルを持っているらしく、不完全なメイル・シンフォルの何倍もの効率の魔術を完成させる。


完全な詠唱はこの世界の言語に一切抵触しない。故に『魔術言語』ナチュラルマジシャンを用いればこの世界の言語のヒアリングでは発音一つ、単語と単語の間の息継ぎ一つ聞き取ることは出来ない。


「これは面倒ですね・・・。」


目の前には奇怪な形状を保ったブーメランのような炎が現れた。形が定まらない理由は何か違う魔法も組み込まれているからだろう。追跡然り、炸裂然り。


それともう一つ、メイル・シンフォルが『面倒』と言ったのには理由がある。それは詠唱が定型化したものではない所です。定型文が一つでも入っていたのなら威力、方向、付与された特殊な能力を暴くことが出来る。


要は詠唱とは『言霊』なのだ。アベル・フォレストアが用いた神からの恩恵『言霊』とはそれをこの国の言語で使用することを可能にした恩恵なのです。更に、特典として一切魔力を使わずに発動させることが出来るという利点もあるが詠唱の方が圧倒的に強制力が強い。


逆説的に、アベル・フォレストアの言霊でも魔法を発動でき、言霊で発動した魔法は威力が弱い、ということが分かる。


ただ、詠唱無しの魔法より強いことは言うまでもない。


「はっ!」


ルークの声と共に奇妙な形状のブーメランがメイル・シンフォルに飛来する。メイル・シンフォルは直感でそのブーメランは魔法陣に阻まれないだろうと判断し上半身をずらし最小限の動きで避ける。


全て避けきったと思った次の瞬間、メイル・シンフォルはまた体を逸らす。すると後ろから先程避けた炎が帰ってくる。形状を考えれば当たり前と言えるがそもそも魔法がどのような軌道になるか予測するのは難しい。『魔術言語』ナチュラルマジシャンなら猶更。


だがメイル・シンフォルは魔法陣内に居れば目で見ていなくても全て見ていると同じ状況なのだ。魔法陣内の物は反応できれば全て対応できる。故に後ろからの奇襲にも対応できるし、地中の目が届かない範囲の魔物も感知できる。


現在、ルークはワーム系の魔物を地下に召喚しているがそれもすべてメイル・シンフォルに筒抜けである。


今度はメイル・シンフォルが魔法を発動する。多種多様な魔法にルークは動揺を見せたがそれも一瞬。ひらりひらりと躱していく。メイル・シンフォルは最低限の動きで、ルークは大振りな動きで互いの攻撃を避けているため傍から見ればメイル・シンフォルの方が優勢に見えるだろう。


しかし実際に劣勢なのはメイル・シンフォルである。ルークの魔力はまだ底が見えないがメイル・シンフォルの魔力はジワリジワリと減っているのが分かる。


消耗戦になればメイル・シンフォルの方が明らかに不利だろう。


消耗するメイルシンフォルが焦りを見せる中、それを静観する一つの影がそこにはあった。



「シッ!ハッ!」


一般的に準一級魔術と呼ばれる魔法を凝縮し、範囲を狭くし威力を上げる。威力だけで測るのならば超級に匹敵する風の矢を次々とルークに向けて撃つ。


しかし先程とは違い、魔法陣ごとではあるが移動し続けながら魔法を打つスタイル、ランアンドガン戦法に切り替わっている。


なぜなら、ルークの魔法が序盤と打って変わって文字通り雨の様に降ってきているからだ。魔法陣のお陰で範囲内では若干速度が落ちるが密度は雨と同じかそれ以上。それを躱しながらの戦闘など正気の沙汰ではない。


だが、それと同じくらいルークも焦っていた。メイル・シンフォルが的確に高威力の魔法を打ってきているせいで防御魔術にかなりの魔力を注ぎ込んでいるのだ。


前半のメイル・シンフォルの様に魔力が目減りしているのが分かる。


「・・・チッ」


雨の密度がさらに増す。


この魔法の乱射もルークの魔力の目減りにおおいに貢献している。このまま順調に戦闘が続けばルークの方が先に魔力が尽きるだろう。


と、その時、優勢だったはずのメイル・シンフォルが仕掛けた。


メイル・シンフォルは知っている。


五百年に迫る経験でたった一つの順位の差を縮めてはいるが絶対に勝てないことは分かっている。メイル・シンフォルが想定しうる全ての手において自分は負ける。ルークは経験が浅いため自分が劣勢だと思っているようだが、どう転んでもルークは勝てるのだ。


「アスタリスク・・・展開ッ!!」


だからメイル・シンフォルは自分の力以外の物も頼ることにする。現在展開した数千個のアスタリスクは以前から暇があれば呪術大陸の聖地で作っていたものである。呪術は『場所』の力を使うため、条件が揃えば人一人で魔術を使うより大きな現象を起こすことが出来る。


呪術でもそれに応じた特殊な・・・サンスレットロードが開発した陣を用いれば魔術に似た現象を起こすことも可能だ。


その完成形が、現在メイル・シンフォルが使用している『アスタリスク』。魔術で言う所の属性は、火、水、土、風全て揃っており、最高峰と謳われる零級魔法を遥かに凌駕する威力を持つ。


メイル・シンフォルは一人で零級魔法を操れるほどの技量は無い。が、メイル・シンフォルは魔術と同等の呪術の才能を持っている故呪術と魔術の組み合わせで零級魔法も発動させることが出来たのだ。


更に付け加えるとすれば人一人の魔力で発動させているわけではないのでミフィアが作ったアスタリスクよりも数十倍から数百倍の威力が出ているはずだ。


それを数千個。過剰かと思えるこの魔法が、列強の順位の壁を埋めるのだ。


「飲み込め!『アスタリスク』!」


いつもの優しく丁寧な口調からは考えられない力強い言葉を放つ。アスタリスクはルークに向かう。全て一直線に向かうのではなく、フェイントを入れている物や逃げ道を塞ぐような軌道の玉も見受けられる。


「『****ヲ **** テ* **** **ア***』及び『 **ル二** *デ*** *シ****』行く手を阻め“ニブルヘイム”」


詠唱を二分割し、複製できる部分を別の詠唱文で代用することにより高速詠唱を可能としている。これもメイル・シンフォルが日々続けている魔法研究の、弛まぬ努力の成果なのだろう。


しかしながら、氷魔術の究極形態と呼ばれる『ニブルヘイム』をたかが足止めで使用するあたり、この戦闘の高度さが窺える。


「これくらい・・・っ!!」


ルークは足元が疎かにならないように若干浮遊する。その状態でアスタリスクも避け続けているのだから恐ろしい技量だ。だがルークはこの魔法が主導ではなく自動で動いており、事前に起動が決まっていることに気付き始めている。


避ける。避ける。全ての攻撃を避け続け、致命傷にはどれもなっていない。しかし先程放たれた多大なアスタリスクのせいで混乱状態に陥っている。


「ライトニング・ハイ・ハルバード!」


メイル・シンフォルは事前に登録していたトリガーの言葉を発し詠唱破棄で魔法を放つ。混乱状態だったせいでかなり接近されていることに気が付いてなかったようだ。


光を凝縮したようなハルバードがルークに迫る。


「マ、マジックガードッ!!」


完全に魔法をシャットアウトされるという魔法を発動する。実際はそこまでの効果は無いがルークが持つ圧倒的才能で文字通り完全に魔法をシャットアウトできる。


そしてハルバードが障壁に阻まれそうになった瞬間、その光が消える。その光の内側からは発光ではない光、金属の光沢が見える。


唯のナイフだ。


ルークはナイフなど計算に入れていない。なぜならメイルシンフォルは生粋の魔術師と調べがついていたからだ。剣なんて使えないと思っていたのだろう。


勿論実際メイル・シンフォルは剣を使えない。だが、裏を突くにはそれで十分だった。


剣がルークの横腹に刺さる。


そして、全ての魔力を注ぎ、最後の魔術を唱えた。


「『*** ***』、“インパクト”」


瞬間、閃光が迸った。




013


「勝った・・・」


メイルは意気消沈している。まあ、全能列強の順位が一つ上の相手と戦闘したんだからな。そうなるだろう。ルークの周りは未だに砂ぼこりが立ち上っていて見えないが、多分死んだ。俺的にはあれで死ななかったら列強序列はあと二、三個上だと思う。


「ふう・・・」


ルークに背中を向けて歩き出すメイル。だがそれはいただけないな。相手が倒れたことを確認するまでがセオリーなのに確信があったとはいえ目を逸らすのはマナー違反だろう。


あと一つ言いたい。『勝った・・・』はフラグ。


バン!という音と共に砂ぼこりが霧散する。


うん。分かってた。


所詮、努力では列強の順位の壁は超えれないということか。メイルが自分以外の力に頼ったように、ルークも自分以外の力に頼っただけ。


「あぶねー・・・フェニックスの尾が無かったら負けてた。」


フェニックスの尾。某RPGに出てくる復活用アイテム。確かに一度死んだが生き返ったっていう事だな。


「さて、どうしてやろうかな・・・」


ルークはメイルに向かって歩いていく。全快とまではいっていないが明らかにルークの方が優勢。


「そういえばお前って人妻なんだってな?幼女は専門外だがNTRなら話は別だな。たっぷり犯して精神壊して夫の前に引き摺り出してやるよ。お前の夫を地に伏せさせて眼前で犯してやるのもいいなあ?」


は?


おいまて。



「殺すぞ。」


既に希望がないと思われた次の瞬間、蒼い眼差しの少年が現れた。名を『サンスレット・スクウェア・ロード』。全能列強序列四位。


今まで何処にいたのかと聞くのは愚問ですね。きっと他にすることがあり、それをギリギリまで急いで間に合わせたのでしょう。


「いや、冗談抜きでマジでぶち殺す。知ってるか?俺って昔あだ名で『ぶちこ』って呼ばれてたんだ。『ぶちころす』の『ぶちこ』だ。な?分かるだろ?」


眼の明るい部分(名称は覚えてません)が完全に消えています。というかセリフがとっても物騒です。あ、そんなに魔力を開放しないでください。アベル君が圧で気を失ったじゃないですか。


「は・・・はッ・・・」


ほら、ルークだって既に息が出来ているか怪しいですよ。本当にやばいですって。メイルさんだけは器用に対象外ですね私達も対象外にしてくださいよ。


「はぁっ!!」


ルークのやろーは無詠唱でかまいたちを執行します。ただしその威力は絶級魔術にも勝るとも劣りません。


「はいはいワロスワロス。」


レットさんは回避行動をとりません。とる理由が無いのでしょうね。かまいたちは当たったにも関わらず服の繊維一つ断ち切らず効力を失います。あー・・・敵に回したら最後ですね。


「馬鹿な!?」


「ああ、うん。バカはお前だろ。列強の序列の差は覆らない。それは俺とお前にも適用され・・・ああごめんごめん。名乗ってなかったな。先にお前の名前を聞こうか。今んところ俺の方が優勢なんだし。」


ルークのやろーが嫌そうな顔をしています。ざまあないですね。メイルさんにあんなことやこんなことをするって言ったんです。一万回くらい殺されても仕方ありませんね。


「俺はルーク。全能列強序列二百六位だ。」


「あ、そう。俺はサンスレット・スクウェア・ロード。全能列強序列第四位。メイルの夫だ。で?誰の妻を寝取るのか教えて欲しいかなぁ?返答によっては殺す。無返答でも殺す。嘘をついても殺す。」


死なない選択肢がない哀れなルーク君でした。


「ま、こっちにも非があるのは有るのは認める。暗黒時代にばら撒いた本をお前が使ったからこういう事態になったんだよな?別時間軸とはいえ俺がやったなら俺が後始末しないとな。」


あ、すいませんちょっと理解できない単語が一つ二つ出てきました。多分これからもっと増えるんでしょうね。ほとぼりが冷めたらイチから解説して欲しいです。


別時間軸というのが肝だということは分かりますが。


「はあ・・・はあ・・・なあ、お前も転生者なんだろ?日本出身なら多少なりとも殺しへの抵抗感は有るだろう?見逃してくれないか?」


「ああ、それなら問題ない。別の世界で、ではあるけど万単位の人間は殺したから今更抵抗感は無いよ。安らかに死ね。」


「嘘だろ!待ってくれ!取引!取引をしよう!」


あれ?レットさん意外と殺してるんですね。抵抗不能にして然るべき所に送り届けていそうな印象だったのですが・・・あ、メイルさん絡みですね分かりました。


というか途中からメイルさんの夫がレットさんって分かっていましたよ?なんかちょくちょくボロを出していましたからね。というとフォレストア王国前王がメイルさんを攫ってレットさんが制圧したっていう逸話はマジだったんですね。


少しは盛られているだろうなーと思っていましたがそんなことはなさそうです。


・・・十二秒で城を堕としたんですね。


「取引?」


「そうだ!俺は今不老不死の研究をしている。それがもうすぐ完成するんだ。それを一つお前にくれてやる。だから一つ、ここは見逃してくれ。」


それを聞いたレットさんは明らかに落胆しました。まあですよね。レットさんは既に四十歳くらいだったはずです。なのにこんなに若いということはもうレットさんが『アレ』なのは明らかでしょう。


「・・・一応言っておくが俺は既に『不老不死者』だ。態々お前の研究成果を貰わなくともいいんだよ。更に言えば、お前の実験失敗してるから不老不死には成れないぞ。」


長年の実験が無意味と宣告されて絶望を全身で表現するルークには若干同情を覚えましたがよく考えたら私的にはざまぁなシーンだったので素直にニヤニヤすることにしましょう。


「なあ、世界の終わりみたいな顔をするのはそこまででいいだろ?俺の嫁で不埒なことを考えた落とし前はしっかり付けてもらおうか。」


そしてレットさんはその言葉を発します。当時の私は知りませんでしたが本来は歴史書に乗っていたであろうそのセリフが救った人間の数は百万人とも一千万人とも言われているそうです。しかしその力を危惧した先王により抹消された歴史。賢帝サンスレット・ロードの代名詞です。


「さあ、ゲームをしよう。」


瞬間、そのセリフをトリガーに神秘が起こります。


それは、敵側からの視点で見れば唯の死刑宣告でした。

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