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ユレイユ書店の歴史の書  作者: 榮 裕也
一章 ミフィア・フィーシル
20/28

可愛い妹(心の

010


はい。次の学年が入学してきました。


前回、レフィティアに行ってレットさんの壮絶な戦いを見た後はメイルさんが送ってくれて自宅に帰りました。結局決着までは見ていませんでしたが、最後の最後までレッドさんは攻撃を受け続けていて、血祭りになっていたのですが、不思議とレットさんの方が圧倒しているように見えました。


メイルさんに聞いたところ、レットさんは『あの程度』の攻撃では死ななくなったようです。というか昔は死んでいたんですね。生き返れるから良かったんでしょうけど。


レットさんは現在、『ユレイユ・シィキア』と同列序列一位の実力を持っているそうです。何故『サンスレット・ロード』が序列四位に収まっているのかを知りたいのですがメイルさんは教えてくれませんでした。


これは勘ですが、前、『ユレイユ・シィキア』を名乗る人物から、私の名前が列強の順位に乗らないと言われたことに関係するんじゃないかと思います。


レットさんは名前を刻んでいますが正確な順位が乗っているわけではありません。極論、別にサンスレット・ロードが居て、サンスレット・ロードを名乗る『彼』の名前は載っていないとかそんな感じの可能性もあります。


完全に憶測ですが。


まあその辺は置いておきましょう。


今は新入生です。


私が入学して早一年。アベル君との関係は一切進展せず、成績も平均で微動だにせず、舞姫商会の拡大は拡大の一途を辿っていて概ね予想通りの一年でした。


「新入生挨拶。新入生代表、アーズヘルム侯爵家長女、エルザ様お願いします。」


実は公爵や侯爵の長男や長女は大体私達が入学した年に入学しています。入学条件は八歳以上という基準の学校なので十歳と二十歳が同じクラスになることもあることもあり、アベル君、ついでにフレデリックと王子が二人もいる学年に入りたいと思うのは貴族の性でしょう。


なので次の学年、その次の次の次くらいまで高位の貴族は少なくなると思います。故に次の学年の最高位貴族は『侯爵』になったわけです。


まあ、その下は伯爵抜かして子爵なんですけどね。あ、辺境伯はうちのクラスに全員いるので論外です。


「はい。」


私より大きいですね。年齢は十歳か十一歳でしょうか。


「暖かな春の訪れとともに、私たちはこの教育機関の入学式を迎えることとなりました。本日はこのような立派な入学式を行っていただき大変感謝しています。不慣れなことばかりで時に躓き、時に挫折するでしょう。それでも諦めず、再度挑む心を持ってこの六年間を過ごそうと思います。先生方、それから来賓の方々これから厳しいご指導のほどよろしくお願いします。もし、道を違える様なことがあれば、その時は優しく力を貸していただけると嬉しいです。」


おお、これは凄いです。こんなにしっかりとした長文が推定十一歳から聞けるとは思いませんでした。私ですらウィキに頼らないとこんな文は作れませんよ。


金髪碧眼なのが相俟ってフレデリックよりも王族っぽいです。


勿論アベル君が一番王族です。


最近知ったんですがアーレフトさんって第二王子だったんですね。ということは第一王子フレデリック、第二王子アーレフト、第三王子アベルという構図なのですね。


いやあ、トラブルメーカーと面倒臭いたらし系が兄なんてアベル君も大変ですね。


エルザさんは会釈をした後そのまま壇上から下りて席に戻ります。やはりと言うべきか、エルザさんもSクラスなんですね。


その後体育館(のような建物)から次々退場します。一クラス四十名が四クラスと六学年で九百六十人前後の人間が入っているはずなのですが三倍入っても大丈夫なくらいのサイズがあるって本当にユレイユさんは凄いですね。


財力で建てたのか魔法でやったのかは分かりませんがどっちでやったとしても桁外れなのはよく分かります。


するすると人が抜けていく中私はやっぱり人に絡まれます。やっぱり平民のくせにアベル君といるのはまずいんでしょうかね・・・


「貴女、よく今年も登校できるわね?平民のくせにこの学校に通っていて恥ずかしくないの?」


「・・・。」


「そうよ!しかもフレデリック様やアベル様に色目を使っていて・・・なんていやらしいのかしら!平民はふしだらなのね!」


「・・・。(ちょっと待ってくださいフレデリックに色目使った覚えないんですけど)」


私に罵声を浴びせている二人の中心に立っているリーダー的な人はまだ動きません。何ででしょうか。二人が私に罵声を浴びせているのに私の反応が薄いことにイライラしていることは分かるのですが何も言いません。


「何か言ったらどうなの!?」


「きゃっ」


うわあ、肩を押してきましたよ。なのでわざと転んでやりました。きゃあって言ってやりました。そうすると後ろからアベル君がやって来ます。私がわざと転んだことを分かっているような呆れた表情をしているのでアベル君だけに見えるようにニヤッと笑って見せます。


そして立ち上がろうとしている時にもう一人、お呼びで無い方の王子が来てしまいました。


彼方の王子はとてもとてもそれはそれはお怒りなご様子でした。


「そこのお前!何してるんだ!」


いや過保護すぎますよ。別に怪我したのを確認したわけでもないのに怒鳴るのは無いんじゃないですか?王族とか貴族とかそれ以前に男としてアウトです。


「いえ、わざと転んだので被害は一切ないのでそんなに怒らなくてもいいんですよ。」


「そんなわけあるか!わざと転ぶ奴なんているか居るわけないだろう!」


それが居るんですよ。コレが。あ、アベル君も何言ってんだこの兄はって感じの目でフレデリックさんを見ています。


「わざとです!言いがかりはよしてください。もう私は行きますよ!」


「ちょっと待て!本当にそれでいいのか!?なあ!」


フレデリックがわざわざ確認のため大声で私を呼んでいますが気にしません。逃げる・・・いえ、女の戦いに巻き込まれないための戦略的撤退といきましょう。


というわけで教室。


始業式が終わったので簡単な連絡を幾つかして直ぐに帰る感じです。ああ、メイルさんが怪訝な顔をして此方を見ています。ああ、クラスメイトと喧嘩(笑)をしたことを怒っているんでしょうか。でもそれならむっとした顔になるはずですし・・・


ああ、メイルさんも私がわざと転んだことに気が付いているんですね!その上で開き直って事態を収束させずすたこらさっさーと帰ってしまったことが納得いかないんですね!


でも仕方ないと思うんです。あれはとっても面倒臭いですし私被害者ですから事態収束させるなんて時間かけないと出来ませんし何よりクラスのいざこざを収束させるのは担任の役目なので頑張ってください。


でもメイルさんも半ば無理矢理担任になったんでしたっけ。糞豚死すべし慈悲は無い。


それで、結局教室では絡まれること無く授業終了。恙無く下校の流れです。


「おい、さっきのは本当に大丈夫だったんだろうな?何でわざと転んだって言ったんだ。そうじゃなかったらその場で断罪出来たものを」


「権力を振りかざすのはいい事とは言えませんよ。それに国をまわすなら権力を使うタイミングを考えないといけません!こんな小さい事で使っていたらキリがありませんよ。」


「だがしかし・・・」


往生際の悪いフレデリックは放っておいて帰りましょう。午後からは予定もないので適当にあくどい商売や表沙汰に出来ない商売を幾つか潰そうと思っています。


「起立、気を付け、礼。」


号令と共に皆の空気が放課後モードへと変わり、三々五々に帰路についていきます。何というか、グループが完全に出来上がってますね。入学して一年経ったんですからそうなることは分かっていましたけど私が何処のグループにも属していないのが悲しいですね。


何というか、私を可愛がる派と排他したい派に分かれて言い争っている感じです。私はこう、座っているだけなのにいつもいつも頭を撫でに来るご子息ご令嬢か嫌味を言いに来るご子息ご令嬢に囲まれている感じです。


アベル君、フレデリック、アンヘリカさんの三人は何時も一緒に居る感じ何ですが、何故かアンヘリカさんは誰にも恨まれません。子爵と地位が低いはずなのですが・・・


その辺の事情はそのうち分かるでしょうし考えないでおきましょう。今考えていても答えは見つかりそうにありませんしね。



下校途中。


あ、あの人は先程代表挨拶をしていたエルザさんですね。ずっと気になっていたのですが、何故二の腕まである長い手袋をしているんですよね。アレです。ワンピースとか着る時に腕を露出させたくない方が使うアレです。


私は何故か他の人より歩く速度が遅いのでいろんな所を見ながら下校するのですが意外と見つかるものなんですね。


エルザさんを探していたのには理由があって、実は彼女から人間じゃない気配がするんです。悪い人じゃないって言うことは分かるのですが、一応鑑定しておこうと思いまして。


如何せん、私が座っていたところからでは鑑定が届かないんです。


「きゃ!放してください!」


・・・裏路地に連れていかれましたね。


いや、とっても可愛いんですから仕方のない事だとは分かっていますねど・・・入学初日にとは早すぎると思います。何が目的なんでしょうね。お金か・・・それとも普通に彼女の可愛い容姿を貴族に売り飛ばすのでしょうか。


そう考えながらも私はそそくさと追跡しているんですがね。


私って偉い。


「何するんですか!」


「はっ。あんたお貴族様だろ?当然金は持っているはずだよなあ・・・全部出してもらうぜぇ」


うっわぁ・・・人としてアウトな感じの男に絡まれてますね。


どうしましょうか。颯爽と現れて助けるのもアリだとは思うのですが今の私制服なんですよね・・・万が一血でも被ったら明日学校に行けなくなってしまいます。クリーニングにも出せないので自分で血の汚れを落とさないといけないんですが、血は落ちにくいんですよね。


「お、頭様、上玉見つけたんでゲスね!」


「オヤビン!売っ払う前に少し・・・味見しやせんか?」


うん。


何と言う小物感満載なセリフですね。なんかちょっと悲しくなってきました。この人たちは咬ませ犬になる運命が確定してしまっているのですね。


「何するんですか!きゃ!」


「何、ちょーっと気持ちいい事するだけだって・・・身構えなくてもいいよぉ?」


あれ?エルザさん、『きゃ!』『放して下さい!』『何するんですか!』しか言ってませんよね?うーん・・・まあいいでしょう。別に上げ足を取りたいわけでもないので。


ということで私は、ざ・・・ざ・・・と音をたてながらそちらに向かいます。男たちもそれに気が付いたのでしょう。私を見て警戒の色を・・・見せず、下卑た笑みを浮かべます。


あ、私今普通の学生モードでした。舞姫じゃないので只の格好の獲物ですね。


「なんだ嬢ちゃん、あんたもいいことしたいのか?」


げひひ、とやべー笑い声が口から出ていますが正直関係ないのでスルーな方向でお願いします。


「ええ、そうですね。取り合えず気持ち悪いので死んでもらって構いませんか?」


そう言いながら二歩進みます。私の『普通』の二歩は大人の一歩分くらいの歩幅しかありません。しかし、私が今歩いた二歩は最近習得したスキル『概念闊歩』イメージ・ウォークを使用して、歩いています。


一歩目は空間的距離を、二歩目は防御的間合いを。


歩く速度はその人の歩く速度に比例するので私は二歩に0.3秒かかり、マジもん(レットさんとかレットさんとかレットさんとかレ以下略)の戦闘では遅すぎて使えませんがこんな破落戸にはこれくらいの技でも通じるでしょう。


一歩目の距離はそのまま相手の真正面に立てます。


二歩目の距離は相手の防御不可能な『絶対領域』クラックに入り込みます。勿論立ち位置の微調整という意味もありますがそれとは別に、相手の『心理的スキマ』に入り込んで一瞬消えたように見える事です。


勿論、破落戸の心理的スキマに入れば二年や三年は認識できないので、あくまで手練れと戦っていた場合一瞬消えたように見えるということです。


で、それのお陰でこの男には完全無防備な状態で打撃を加えることが出来ます。・・・ですが、アレですね。この男、無性にイライラするので漢女おんなのこになってもらいましょう。


するする・・・ぽろ・・・じょっきん。


この後地獄絵図な為美しい自然の映像を見て心を穏やかにしていてください。


見てくださいこの美しい湖!真ん中にはこの湖のリゾートの神崎ホテルが建っており豊かな自然を用いた料理が振舞われています。ぎいいぁぁああああいだいいだい俺のち〇ここでの自然とは湖の魚などを指しており、淡水魚が多く使われているのが分かりますね!


おっと、今見えている船は湖を一周するツアーの船でしょうか。皆さん手を振ってください!あ!向こうの乗客たちが気付いてくれて手を振り返していぃぃぁあああっっ血が!血が止まらないぃぃぃいいますね!


「あ、エルザさんスイマセン。男性が漢女おんなのこになる瞬間はショッキングなので向こうでやりますね。そこの二人!早くおやびんと同じ漢女おんなのこになりますよ!」


「嫌だ!やめて欲しいでゲス!」


「オヤビン!オヤビンッッ!!」


私は漢女おんなのこになったオヤビン(仮)と咬ませ犬A(仮)とB(仮)を引きずって裏路地の細道まで連れていきます。


見てください以下略。


見て以下略。


三人は・・・私の行きつけのBARに就職して更生してもらうことにしました。



そして五分後、エルザさんが残ってると危ないと思って一旦戻ります。まああれ程暗い路地にまだ留まっているはずないので確認だけですが。


はい☆いました。


「エルザさん・・・何でまだ路地に居るんですか・・・」


「え?私の名前知って・・・るの?」


「私ユレイユ書店の教育機関の二年生だから。」


めっちゃ紹介されてましたもん。


「そうなんですか!なら此方は敬語で話させて貰いますね!」


なんかいい感じの笑顔でそう言われました。エルザさんって見た目私よりも年上だから敬語使われると何か違和感なんですよね。


「私今年で八歳ですし!」


・・・ええ!?成長が早いとは聞いていましたが八歳でこんなに大人びているとは思ってもいませんでした!


「まあこの際この辺のことは棚に上げておきましょう。まずはこの路地から出ましょう。危険ですからね!」


「はい!お姉様!」


んーーーー・・・・・・お姉様?


裏路地からはすぐに抜け出せました。あまり深い所までは行っていなかったので当然といえば当然ですが。実際、もっと深いところでは破落戸が襲われて完成度がたけーネオアームストロングな棒を切られていましたからね。


いやあ怖い。


「それで、何で私がお姉様なんですか?」


「それは!カッコよくて綺麗で素敵だからです!」


むう。何故か変な方向に話が進んでいますね。八歳に十一歳がお姉様と仰いでいる構図が完成しています。微笑ましい感じで見られていますがいいんでしょうか?


「私って一介の平民ですよ?」


そう。私とエルサさんとでは地位が違い過ぎるんですよね。物理的な戦闘力が一定以上に達したらシーフィル家の家督を継いで貴族に戻るつもりですが今では何かとダメなんですよね・・・


「いいのです!お父様にもお母様にもそう伝えておきます!」


んー?何故親公認にならなければいけないのでしょうか・・・?呼び名くらいどう呼んでもいいでしょうに。本物の姉妹になるわけでもないわけですし・・・ん?


何かフラグが立った気がします。


「お姉様お姉様!あそこに美味しそうなパンがありますよ!クロワッサンが魅力的です!」


そう言われて見てみるに、それはうちの店でした。店長と私の二人でやっているアレです。


「そこ、私がアルバイトしているところなんです。見ていきますか?」


「はい!是非!」


ということで入店です。


「・・・嬢ちゃんか。好きなのを持ってくといい。」


「何言ってるんですか店長。そんなことしたら商売じゃなくなりますよ。ちゃんと買います!」


入店時の店長の軽口と私の返しで結構仲がいいことが分かったんでしょう。


「結構いい雰囲気のお店ですね!」


そう言ってくれています。私がここでバイトする前は店長が怖すぎて誰も入店していなかったはずなので今の店長はいい調子といえます。


「そう言ってくれると嬉しいです。」


そう言いながらにこりと笑顔を返します。あ、エルザさんの顔が赤くなりました。いいですね。・・・なんかこう、可愛いです。


「店長!クロワッサン十個!」


「分かった。ほれ。」


そう言ってクロワッサンを受け取ります。代金はカウンターに置いておきます。いつも通りです。私が居っ種類を十個買うのもいつも通りです。


クロワッサンだと分かったのは恐らく外でも会話が聞こえていたんでしょう。


「それでは行きましょうかエルザさん。」


・・・何故かエルザさんは動きません。膨れっ面で此方を睨んできます。なんでしょうかとっても可愛いからいいですオールオッケーです。


「私のことはエルザと呼び捨ててください。あと敬語もなしです。」


ううん?本当の姉妹みたいな感じがいいということでしょうか。


「あ、敬語は生まれつき誰にでも言っているので止めるのは無理ですね。・・・まあ、名前を呼び捨てるくらいなら。・・・エルザ、行きましょうか。」


「はい!」


こうしてエルザという見た目が完全に年上の妹を手に入れることになりました。



とある館。


「ねえ、あの子は学校でお友達ができたかしら・・・あの子は『アレ』のせいで年齢より大人に見えるし・・・」


「年齢が気にならないようにわざわざあの学校に入れたんだ。同じクラスの奴は全員同じ年齢という仕組みの学校じゃないんだ。何とかなるだろう。」


女性は淹れたての紅茶を飲みながらため息を溢している。その女性に気を使ったのか男性が希望観測な返答を返す。事実を織り交ぜた嘘なので余計性質が悪い。女性も男性も知っているのだ。『あの子』の問題はその程度で解決するものではないと。


全ては『あの子』の先祖が元凶なのだ。『あの子』の親には罪は無い。その両親にもそのまた両親にも一切合切悪いことは無い。ただ、遠い先祖が『アレ』だったのが全て元凶なのだ。


いや、そういう意味では遠い先祖でさえ罪は無いのかもしれない。すべてはその事実を受け入れない『あの子』の時代の周りの人間のせいだ。


しかし、四面楚歌にも紅一点は存在する。『あの子』がはみ出しているように、また同じようにはみ出している者もいるのだ。


その者が受け入れてくれるかは分からない。だが彼女にとってその紅一点は希望になってのかもしれない。


しかもその紅一点は周りを侵食して行っている。面白いことに。彼女がはみ出していて、周りと気色が違うことで問題が怒っているのだと思っている『あの子』から見れば、その紅一点この自分の目指すべき存在に見えてしまうだろう。


女性も男性も『あの子』に紅一点が現れたことはまだ知らない。知ることが怖いのだと思う。悲しみに染まった『あの子』の顔を見たくないと思うのは仕方のない事だろう。


しかし今回の場合、早く、『あの子』の顔を見たほうがいい。女性も男性も勘違いをしている。


はみ出しているのは一人ではないということ。


『あの子』は紅一点と一緒に居てとても楽しいということ。


例えあのことを隠しながら一緒に居たとしても楽しく、幸せな顔が出来ていること。


それを知って、心の重荷を下ろして欲しい。


誰のとも言えない、一つの願いだった。


男性は女性の頭を抱き寄せてもう一度、遠くの教育機関の方向を眺めながら願うように、祈るようにもう一度呟く。


「あの子なら何とかなるはずだ。・・・何とかなってくれるはずだ。」


男の表情は一度も明るくならなかった。



「レオ、ずっと喋っていませんよ?どうしたんですか?」


腕の中のレオの頬をぷにぷにしながら歩きます。


「自分の胸に聞くのだ。」

ようじょ が また ふえた !!

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