結構真剣に戦闘しますか。
ドラゴン。
今、魔獣に成る時の突然変異のなかで尤も凶悪と言われる変異『ドラゴン』。
その強さは必ず準一級以上の強さを誇り、空気中にある魔力の元さえ吸収するという最悪の能力を秘めている。放っておくだけで強くなるという魔獣です。はっきり言って治癒魔法をガンガンに浴びながら絶え間なく殴り続けるくらいしないと対処しきれません。
右手に掴んでいる剣で縦に斬撃を放ちます。勿論剣技で、です。そうでなければ攻撃の内に入りません。私は頑張っても十三連撃そこらで硬直してしまいますがそこをレオの炎でカバーしてもらって何とか均衡を保っています。
十一、十二・・・十三・・・十四!
何とか十四連撃まで出来ましたがやはり硬直です。そこにドラゴンの尻尾攻撃です。レオが炎魔法で私を上に飛ばします。それのおかけでドラゴンテールは空振り、後ろの兵士さんを数人巻き込むだけの被害に済みました。
「ありがとうございますレオ!」
「集中だミフィア。」
もう一度剣技を発動します。また一撃目から始めないといけないので威力は弱いです。しかし、長年の勘と剣術で効率よく相手にダメージを蓄積させていきます。
二、三、四、五・・・・・・
なんとかかんとか鱗に傷がつく程度の威力は出てきました。ただ、傷をつけるだけならその辺の兵士さんでも可能です。この傷を何とか勝利に繋げなければなりません。
かれこれ一時間弱、この戦いをして剣はボロボロ、私の集中力もそこを尽きかけています。幸いレオの魔力はまだまだありますが、魔力そのもので攻撃してもドラゴンが強くなるだけです。
今現在もじわじわと強くなっているのが分かります。だって見た目大きくなってますし。
切り下げ、切り上げ、縦回転切り、横回転切り、スライディングで反対側に移動しながら腹に一撃、起き上がりざまに切り上げ、ジャンプ切り、そのままドラゴンの上に登り脳天を突く!
十三連撃で硬直です。またもやレオの魔法で離脱です。
「弓矢、放て!」
うわ!何するんですか!
「ミフィアが居るというのに躊躇いもなく矢を・・・!」
「違いますレオ!ドラゴンは推進力さえも魔力に変えて吸収するんです!矢は直前で推進力を奪われてしまいますしドラゴンを強くするだけです!」
私の言った通り、矢は突然空中に静止し、そのままぽとぽとと落ちていきます。かなりの速度で飛んできていたので吸収した魔力量も多く更にひと回り大きくなってしまいました。
そう思ったのも束の間、ドラゴンは急に収縮し、動きが速くなりました。恐らく、質量を魔力に還元し、その魔力で身体強化をしたのでしょう。速すぎて見えないわけではありませんが、三連続で攻撃されては苦しい展開が待っています。
もう一度剣技を発動します。今度は手数は重視せずに素早さを重視し、九連撃を一秒で同じ場所に叩き込みます。鱗がバンッという音を立てて割れ、その奥にある肉に届くかなという所で硬直。
またレオが魔法で体制を立て直そうとします。しかし、何度も何度も繰り返していたせいで逃げるときのパターンを把握されてしまい、ドラゴンクローが炸裂します。
「う・・・がはっ」
数メートル横に飛び、バウンドを数回挟んで止まります。
そして起き上がろうとした際に剣を向けられました。先ほど矢を放てと命令していた人です。後ろにも数人剣を持っている人が警戒状態で立っています。
「何故矢を妨害した。」
・・・この馬鹿は何を言っているのでしょうか。ドラゴンは運動エネルギーを魔力に変換するって知らないんですか。
「う・・・ぐ・・・はあ、妨害なんて・・・してませんよ。」
「嘘をつくなッ!!あんな不自然な方法で矢を止めれる者は存在しない!お前がやったんだろ!!」
ドラゴンがやったんだよ。まさかここまで馬鹿だったとは・・・ドラゴンの知識くらい普及しているでしょうに。それともまた私が可笑しいんでしょうか。このことは一般では知られていない知識だということなのでしょうか・・・。
「・・・殺せ。」
はあ!?何言っちゃってるんですか!そんな冤罪で死にたくありませんよ。ほら後ろ見てくださいよ。私が足止めしてしていないせいでドラゴンが暴れているじゃないですか。見た感じもう数人死んでいますし取り返しのつかないことになってますよ。
「やめ・・・いっ・・・がは!」
マジで刺してきましたよ。心臓を一突きって感じです。まさか人に殺されるなんて思っても見ませんでしたよ。でも心臓を刺されるって案外痛くないんですね。いえ、発狂しそうなくらい痛いんですけど腕ちぎったときくらいしか痛くないので心臓凄く痛いっていうのは偏見でした。
肉体の損傷が規定値の半分を超えました。『疲労無視』を発動します。
「ここ最近発動回数が多いですね。私。」
本当に勘弁してほしい。この能力を発動するにあたって取り合えずボロボロにならないといけないという欠点はなんとかしたい。
『疲労無視』について発動されていくにつれて徐々に分かってきているが、その辺の対処方法はまだわかっていない。ただし、この欠点を失くす方法があるとだけは分かっている。昔、この欠点もなく能力を使っていた気がする。そのため、勘ではあるが当たる確率の高い読みだと言える。
「心臓を刺されて死なんだと・・・バケモノめ」
ああ、さっき刺してきた奴か。こちらとしては生かしておく義理は無いので殺しておこう。どうせ記憶改ざんはこの姿で処理して完璧に済ませる予定なので人が一人二人死んでもばれたりはしない。
取り合えず立ち上がり、その男の元まで歩く。
「ひっ、やめろ!こっちに来るな!!」
・・・やはり殺すのはやめておこう。戦意喪失した位の高そうな奴は使いやすいと相場が決まっている。
「死ぬか、私の奴隷になるか、選べ。」
「ヒイイィィィ!!成りますッ!お前の、ヒィッ!貴女様の奴隷になるのでどうか命だけは!」
「聞きました。」
私の奴隷魔法の発動条件を完璧に満たしたので魔法をかける。その魔法はその名の通り人を奴隷にするために貴族や商人が試行錯誤して作った魔法で、効果はそれぞれ誓約のきつい奴から軽い奴まであり、きつい奴は発動条件が難しく軽い奴は簡単にになっている。
私がかけた奴隷魔法は一番きつい奴だ。
発動条件は『奴隷になると宣言』『人を殺そうとした』『罪悪感が無い』『改心する気が無い』『こっちを舐めてる』『隙があれば謀反』等々。他にも制約はあるが大きいところだとこの辺だろう。
救いようのないクズがなれる最高の奴隷だが、その奴隷の制約内容が酷い。まず命令しなければ生命活動を行う上で必要なこと以外が出来ない。まず初めに五感がシャットアウトされる鬼畜仕様だ。ご主人が命令しないと見ることも聞くことも出来ない。触覚無いから命令で無意識に移動させられても移動したことに気が付けない。
こんな状態では謀反なんてできはしないだろう。
本当は規制すれば思考さえ許可した時間しかできないのだがこれは規制しない方がいい。長い間規制しておくと精神が老化せず、魔法次第で二百年三百年と生き続けてしまうので精神はちゃんと老化してもらおう。
そうでなければ半永久的に奴隷として使われてしまう。流石にそれはひどすぎるだろうと思ってのことだ。
実際奴隷と言っても生殺与奪を誰かが握れるというわけではないので奴隷になったら今よりかは死ににくくなる。奴隷はお金を持つことができないので金銭的な死因が無くなるからというのが大きい。
「私の言葉と貴方の返答だけ聞くことを許可します。」
そう言うと屑男さんは少しだけ反応した。恐らく自分の五感の一つが部分的かつ一時的に開放されたのを感じたのだのだろう。今迄何も感じない真っ暗な所に居たのが、世界が広がり自分の感じる部分が広がったのを感じるのは正に天国だろう。
「私のした質問に対し答えることを許可します。」
そう言うとまたピクリと反応する。私の声しか聞こえないので仇敵の声だったとしてもかなりの安心感があるだろう。なにせ他は何も感じないのだから。
「質問です。・・・そういえば質問する事なんてありませんね。基本貴方が知っていることは知っているでしょうし。そうですね。『貴方の事を言えるだけ言ってください』に命令を変更しましょう。」
屑男は途端にぺらぺらと喋りだした。どんだけ喋りたかったのやら。
「は、はひぃ!!俺・・・いえっ!私めは王国軍の総司令をやってまして、この方角には敵が少なく弱いと聞きまして、簡単に手柄を立てれると踏んで来たのです!他の所にそこそこの奴を配置すれば私がここに来るのは容易かったですっ」
思ったより理由が下らなかった。
「ドラゴンが来たのは予想外でしたが、あれを倒すと途轍もない金が流れてくると思ったので倒そうと意気込んでいたら、なぜか貴女様が我々の弓を弾かれたのですっ!」
「馬鹿ですね。ドラゴンは運動エネルギーを魔力に変換、そのまま吸収するので飛び道具等は効きませんよ。」
そんなこと誰も言っていなかったではありませんかと口が動く。しかしその言葉は出ない。
「自分の事以外喋れるわけないでしょう。」
さて、この屑男は結局ろくなことを言わなかったのだが、どうするべきか。無知なうえに壮大な野心まで持っていて素晴らしいほどの屑っぷりだが、殺すのは流石にNG。立場もそこそこ有るので利用することも検討しながら要観察というところでしょうか。
「媚を売るのはそれくらいにしてください。貴方の発言力で兵を安全な所に避難させてください。そろそろ退かせないと重傷者や死人が出ますよ。・・・貴方には関係無いでしょうが部下を思いやるのは出世への近道ですよ。」
まあ、実際は出世の道なんてもう無い。ある程度の働きをしたら解放してもらえると思っているいるのだろうがそんなことするわけがない。性格的にいなくなっても困るのはその手の悪事に手を染めている同僚さんだけなのでわざわざ社会復帰をさせてやる義理もない。
「はいっ!お言葉の通りに!・・・そのかわり貴女様のお力添えを・・・」
本当に救いようがない。ここまでの失態を晒しながらその相手に取り入ろうとする姿には脱帽だ。私でなかったとしても協力関係を築けないレベルの失態なのにそれにも気付けないのは救いようがない。教える気は勿論無いが。
避難させることを命令し、それが完了するまで五感と四肢を動かすことを許可する。そうしたら総司令はへこへこしながら遠ざかっていく。奴隷化の魔法のお陰で舌打ちをした後にぶつぶつ呪いを呟いていたのが聞こえたのを総司令は知らない。まあ、私の前で媚びへつらっても意味がない事を知らない総司令は私の前では意地でも嫌悪感を顔に出さないだろう。
総司令が退却を促して兵が引くまで十五分。
統率が全く摂れてないことに呆れる。人身掌握もろくにせず命令に従わせているくちだろう。その命令が何を表しているのかを知らずに行動させられるせいでありとあらゆる事が非効率だ。ちゃんとその辺のお勉強をしている人間を宛がって欲しい。
「それではこれで。」
「あっ、あの!ご助力の件は・・・?」
「次の総司令を持ち上げる位はしてあげましょう。それでは。」
暗に『出世には協力しませんよ』と言っていることは流石に分かったようで私を罵倒しようと口をパクパクする。しかし私を罵倒することを許可している訳ではないので文字通り言葉にならない。
実は会話の終わり頃に二言三言話すことは可能で、無意識にそれを利用して媚びへつらう総司令には苦笑いだがそれを利用して言いたいことを言うほど頭は回って無いらしい。媚を売って賄賂を渡して出世することにしか頭を使ってないせいだろう。
歩いて、ドラゴンに前に立つ。
邪魔されたせいで矢の運動エネルギーと大気中の魔力を吸ってさっきより二回り程大きくなっている。『疲労無視』を発動していない状態ではもうさばけない状態だろう。しかし、今の私は精神力の強化、魔力の強化、その他もろもろの効果が付随しているので負ける気はない。
そういえば、魔力が増強された今のステータスはどうなっているんだろうか?
ステータス
基礎ステータス
攻撃力210
守備力190
魔力200 +99a9d9rffrde9demsnfs99nfs//////
妖力0
呪適正0
技適正0
Lv.12(125)
レベルボーナス2.20倍
年齢.8
年齢ボーナス1.20倍
総合ステータス
攻撃力554.40
防御力501.60
魔力633.60 +2.64*99a9d9rffrde9demsnfs99nfs//////
妖力0
呪適正0
技適正0
スキル
無し
神秘
無し
魔力がメイルさんの最大レベルのようにおかしな数値になっている。しかもスキル無し、神秘無しとは本格的にバグっているようだ。神秘無しの人間なんて理論上存在しない。
しかし、魔力の表示を見る限り基礎ステータスそのものが増えているように思える。意識的に魔力の上限を引き上げたのだが、この様子だと基礎ステータスそのものを上げることも出来るかもしれない。
ステータス
基礎ステータス
攻撃力210 +99a9d9rffrde9demsnfs99nfs//////
守備力190 +99a9d9rffrde9demsnfs99nfs//////
魔力200 +99a9d9rffrde9demsnfs99nfs//////
妖力0
呪適正0
技適正0
Lv.12(125)
レベルボーナス2.20倍
年齢.8
年齢ボーナス1.20倍
総合ステータス
攻撃力554.40 +2.64*99a9d9rffrde9demsnfs99nfs//////
防御力501.60 +2.64*99a9d9rffrde9demsnfs99nfs//////
魔力633.60 +2.64*99a9d9rffrde9demsnfs99nfs//////
妖力0
呪適正0
技適正0
スキル
無し
神秘
無し
怖ろしい数値を出てしまったようだ。いや、魔力を意識的に引き上げることに成功した今ならとも思ったが、まさかここまでの成果を出すとは思ってもいなかった。
これはどう対処するべきか。私が『疲労無視』じゃないことは明らかだ。『疲労無視』は表情は落ちるが人格は変わらないし、別に魔力が増えたり攻撃力、防御力が上がるわけでもない。精神力の強化はされるらしいが剣技を無限に発動できるようになったりはしない。このスキルは完全に既存の物を凌駕している。『特異神秘』をも超える特異性だ。
正直に言うと、この能力を使いこなすことが出来ればメイルさんも超えることが出来るだろう。メイルさんは確かに強い。攻撃力、防御力も百万越えで、魔力、妖力に至っては七百万だ。しかし、それはあくまで数値で表せる領域の強さだ。私のようにステータスがバグっているわけではない。私の力は未知数なのに対しメイルさんは確実に数値として実力が分かっている。
ただ、メイルさんを超えたいなら実戦経験が大切だ。私の方がステータスで上回ったとしても経験で覆されることはざらにある。
仕方ない。このドラゴンには犠牲になってもらおう。
この世界には魔物、魔獣と呼ばれる生き物がいる。
今回の王都襲撃で南に配置された私だがここまでの魔獣が出現したのは初めてだと記憶している。
一般的に魔獣と魔物の違いは肉体があるか無いかだ。魔獣は普通の生き物が強くなりすぎて、その体内に魔石を生成し魔獣になる。魔物は魔力が密集したところに魔石が生成され、その魔石を基に周囲の魔力が肉体を作り、魔物になる。
魔獣は生物が魔石を体内に生成する条件が厳しいので滅多に現れないはずだ。確か多くても一か月に一体程度しか現れないと聞く。
・・・そのはずだったのだが、何で八千五百も魔獣が現れるのだろうか。七百年分くらいの魔獣が一斉に現れたことになてしまう。四級くらいの魔獣なら凄腕の冒険者ならば倒せるだろう。しかし三級からは冒険者ではあまり期待できなくなってしまう。
まず魔法が効かない。冒険者になる人は大体魔法を習得する。才能が無くても剣を強化したり筋力を強化したりできる上に、才能が有れば戦闘が格段に楽になる。しかし攻撃魔法を当てるとその属性の魔法を使うようになるし、肉体強化や武器強化で攻撃してもその魔力が吸われて純粋に強くなってしまう。
魔法で魔獣を倒そうと思えるのは列強に入っている奴位だと思う。
絶魔領域のメイル・シンフォルとか。
殲滅四王のサンスレット・ロードとか。
二人は現在王都に居るらしいが参戦しているのだろうか?・・・北に魔獣が一体も出現しなかったらしいのでもしかしたら北を担当したのかもしれないが。
・・・しかし南にも化け物は居るらしい。
彼女は何者か分からない。顔がどの様なものだったか、髪の色は、瞳の色は。そのすべてが一切合切分からない女性だ。その女性を見ながら髪の色を言ったものがいたらしい。ある人は黒と。ある人は赤と。またある人は黄色と、同じものを見ているはずなのに言葉に出そうと、記憶したものを思い出そうとするだけで忘れてしまう。
ある鑑定士は彼女を鑑定した。鑑定は『名前』『ステータス』『スキル』『称号』を見ることが出来るスキルだ。そして、そのスキルにはこう表示された。
名前:無し
ステータス:
レベル‐無し
攻撃力‐無し
守備力‐無し
魔力‐無し
スキル:無し
称号:『剣と魔法の舞い乙女』
名前が無いのが既におかしい。レベル、攻撃力、守備力、魔力が無しと表示されるのもおかしい。その場合は0と表示されて然るべきだ。
さらに言うと、この『剣と魔法の舞い乙女』という称号を得た者は一人もいない。つまり彼女は前代未聞の偉業を成し遂げ、それを称号として世界に称えられているのだ。恐らく、この戦いをするまでは称号さえも『無し』となっていただろう。彼女は完璧に素性を隠していたはずだ。
しかし、詰めが甘いのかボロを出した。
この称号で、彼女が女性だということ、魔法が使える事、剣が使える事が判明した。『彼女が強すぎた』という本人も気付けなかったミスで誰も彼女がどのようにして戦ったか思い出せないという異常なまでも情報操作は意味を失くしたのだ。
ありとあらゆる魔獣は切り裂かれ、氷に囚われ、火に焼かれている。そして使えそうな素材は血の一滴までもれなく回収されている。
残された魔獣の切り口や魔法の規模、更に魔法を魔獣に執行できたという前代未聞の事象を現実にした力量は既に王都全土に広まっているだろう。
顔も名前も分からない最強の女性を我々はこう呼んでいる
『舞姫』と。
007.9
ほくほく。
ほくほくですよ。主に懐が。
ドラゴンの血やら鱗やら、虎の皮や牙等々、出所不明の高級素材を沢山闇ルートに売ってお金が沢山手に入りました。その辺の貴族くらいの財力を手に入れました。しかも別に入手した素材を在庫にものを言わせて売ってないんですよ?魔石なんて一つも売ってないのにありえない程お金が溜まりました。
うむう。クラスの人は私以外貴族だからお金払って商人貴族にでもなってみようかなー?
そう言えばアベル君の誕生日がそろそろですね。六月の三十日でしたっけ。財力にものを言わせてプレゼント大会に参加してみましょうか。私が行ったら恥をかくだけだと思ってらっしゃる貴族令嬢様様様に一泡吹かせてさしあげましょう。
百白金貨を予算に据えて考えておこう。
日本円で一億円。
いやちょっとやり過ぎかな―とも思ったけどあの令嬢たちから一本取りたいんでね。仕方ないという結論に至りました。
結果プレゼントはドラゴンの鱗、金、ドラゴンの血を五対四対一で混ぜた合金『不壊合金』で作った剣をプレゼントします。そこにエンチャントの『切れ味2000%』『重さ5%』『魔力吸収・強化』『剣技補助』『風魔法800%』を付与しています。
どのくらいの性能なのかと言うと、まず『不壊合金』で剣は作れません。アダマンタイトは難いが故に加工が出来ずに、剣などのアイテムなら遺跡から見つかる物しかない。しかも天然のアダマンタイトは少なく、調合で作れることも知られていない。
アダマンタイトの剣だけで国宝。
更に、切れ味二十倍のエンチャントを出来る人は実質私以外いません。重さ二十分の一もそうですし、風魔法八倍も能力が高すぎて私くらいしかできません。
魔力吸収・強化は魔獣と同じ能力でこれをエンチャントできた人は数万年さかのぼっても居ません。剣技補助なんて論外です。
つまり国宝×国宝×国宝×国宝×国宝×国宝。因みに『アベル君にしか使えない』『アベル君の死を七回肩代わりする』も付けたかったんですが、魔術ではなく呪術でしか付与できなかったので性格にはエンチャントではありませんでした。
まあ、呪術はきっちり使えるので付与しましたが。
これでまた魔獣が大量発生してもアベル君は大丈夫ですね。
「で、ミフィア様はどの様なものをお持ちで?」
伯爵令嬢さんがわざわざ聞いてきました。私は今、結構いい感じのドレスを来ているのでもうお金が無いと思ったわれているらしいです。イヴさん。十二歳。十七位。
にやにやしながら近づいてくるので若干イラっとしました。
「大したものは持ってきていませんわよ?」
おほほと笑ってみる。うん。私には似合いそうにないです。
「そうですわよね。平民がそんなドレスをレンタルしたら破産ですものね。」
周りに居た令嬢と遠目で見ている令息があざ笑ってます。馬鹿ですねえ。買いましたよコレくらい。あなた達の親よりお金持ってますよ。
「ミフィア、こんなことはあまり言いたくは無いんだけど・・・貴族と平民じゃ財力が違うんだから、無理する必要ないんだよ?」
アベル君もそう言ってくれます。くれますが・・・侮ってもらったら困ります。
「私からはこちらをどうぞ。」
そして渡す紅い長剣。
「こんなすごい剣は初めて見たよ。僕が見た限り、王国一の剣だ。誰が作ったの?」
「それは鑑定してからのお楽しみですよアベル。」
そして鑑定するアベルくん。
「へぇ、アダマンタイトか。この国にもあったんだね。」
アベル君のそのセリフで周囲が凍り付きました。
「アベル様!?本当にアダマンタイトなのですか!?」
「ん?鑑定でそう出たよ?珍しい物なの?」
「珍しいなんてものではありません!それ一本でこの国の人間全員が一生遊んで暮らせますよ!」
そう言われてアベルくんはぎょっとした表情を浮かべました。
「そ、そんなもの貰えないよ!」
「というか!どうやってこんなものを手に入れたのですか!平民がこんな・・・いいえ、貴族、王族でさえこのようなものを手に入れることは困難なはずです!」
「教えませんよ?企業秘密です。その剣は好きなだけ鑑定していいので頑張ってくださいね。・・・大切に使ってくださいね!じゃあね、アベル!」
そう言って私は去ります。ッシャア!!令嬢のポカーンを見れて満足です。
鑑定結果
名前:破魔の紅剣
アイテム名:不壊合金の長剣
作り手:ミフィア
エンチャント:『切れ味2000%』『重さ5%』『魔力吸収・強化』『剣技補助』『風魔法800%』
記述:エンチャントには記してないけど、アベルしか装備できないっていうのと、アベル君が死にそうになったら剣が肩代わりしてくれるって効果があるよ!それも一日七回!装備してるだけで安全だからできる限り持ち歩いてね!




