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ユレイユ書店の歴史の書  作者: 榮 裕也
一章 ミフィア・フィーシル
10/28

転生してまんねん。

書き溜めが尽きるっ!!

一週間に一本が危うくなってきた・・・

パン屋さんに出勤です。シフトは第七曜日と第八曜日だけにしか入れていないので学校とはかぶりません。


言い忘れていましたが、この国では暦が地球とは異なります。一週間八日の四週間、三十二日で一か月、十二か月で一年、三百八十四日です。地球より長いですね。


六日学校で二日休み、これが日常的に繰り返される予定ですが・・・。


ぶっちゃけ学校行きたくないです。もう人間不信になりそうです。信用できる友達を一人くらい作っておきたいです。


候補としてはアンヘリカさんなんだけど・・・あの人もあんまり信用できないです。だって嘘つきましたし。私を騙そうとしましたし。何でかは知りませんが一度信用が落ちた人をもう一度信用するのは難しいです。


おっと、脱線しましたね。


私は前回通り、五時半に店に到着しました。店主さんは私を見てニヤリと笑い、この前と同じ位置に立たせます。私は前回取ったメモのような何かを見ながら作業を見ます。時々書き直したりするのでそれも店主さんの好感度稼ぎに貢献しています。


店主さんはこの前と同じように黙々とパンの形を整えていきます。そうです!スケッチをしてそれぞれのサイズを記録しておきましょう。何かあったときには自分でも作れるようになっていた方が料理の幅が増えますからね。


ただ、それのせいでメモ帳の二割がつぶれてしまったのでこのメモ帳はもうパン専用のメモ帳にします。新しいメモ帳をもう一個買わなくてはなりませんね。


「そういえば、最近近くで一級の魔獣が現れたみたいですけど、それも数体。この町は大丈夫なんでしょうか?」


ふと疑問に思ったことを投げかけてみます。腕の中のレオは自分がいるからミフィアは大丈夫だと言いたげな顔をしています。まあ、レオが居れば王都が滅んでもどうとでもなりそうですが。


でも実際に聞きたい意見は店主さんのような戦う力が無い人から見た意見です。


「・・・そうだな。王都は数日中に終わるやもしれん。」


「どうしてそう思うんですか?」


私がそう聞くと、店主さんは深刻な顔をして呟くように「全部俺のせいだ」と言ってきました。


流石に店主さんが関係しているわけないじゃないですか。しかし、決めつけるのは早計かもしれません。こういう時は大体何かあるんです。ルーデウスさんも何か含んだ言い方をしていましたしね。


例えば・・・そうですね、店主さんにしか使いこなせない精密な魔力コントロールが要求される魔道具が存在し、それが王都防衛の切り札になっているとかでしょうか。確かこの国の防衛は自由自在に変動する結界術式だったと思いますが、仮にそれが魔道具だったとするとそれが操作可能なのはメイルさんと店主さんくらいしか知りませんね。


勿論私も出来ますけど。


色々考えてみましたがそれが一番現実的な理由ですかね。真剣に考えていたらそれっぽい案が出てきてしまったので本気で心配になってきました。


まあ、本当にやばかったらメイルさんが出張ってくるでしょう。


「暗い話をしてすいません。」


「いい。大丈夫だ。」


店主さんも若干暗い雰囲気になってしまっている気がします。店主さんもメイルさんと同じくらい表情が変わらないので気がするだけですが。尤も、メイルさんは無表情なだけですが店主さんは仏頂面なので近寄りがたい雰囲気がありますけどね。


そろそろパンを窯に入れ始めないといけない時間なのでパンを等間隔に置いた鉄板を手に取ります。それを店主さんが受け取り、窯に入れて、火魔法で加熱します。


やはり見事な魔力コントロールです。


私の足元に届くか届かないかくらいの実力はありますね。・・・こう言うと自分を過大評価しているように聞こえますが別に人を見下しているわけではないんです。


因みにメイルさんの魔力コントロールは私と同じくらいです。違うのは魔力総量と最大火力です。いやまあ、メイルさんの基礎ステータスが魔力値三百九十とかおかしな数字なんです。普通は四十そこらのはずなんです。魔法に特化した人でも百を超えるか超えないかくらいのはずなんです。


メイルさんは三百九十。大事なことなので二回言いました。


私も二百は超えているんですけどね・・・。


化け物の域です。


最初は私も三十くらいがスタートだったんです。妖力、呪適正、技適正は零だったはずです。どうでもいい事ですが攻撃力や守備力に至っては二十だったんです。なんでこんな化け物の域に突入してしまったのでしょうか・・・。


因みに、一か月頑張ると3か4くらい基本ステータスが上がります。


才能が有ればそれくらい伸びますが、適性が無ければ伸ばそうと思ったステータスは伸びず、他のステータスに成長阻害効果が出てきます。最悪レベルが上がってもステータスが上昇しなくなります。


「そろそろ完成だ。ほら、店を開く準備だ。」


「わっかりましたー!!」


掛け声をかけて開店の準備をします。パンを運び、カーテンを開けて外からでも店内が見えるようにします。レオを頭の上にセットして準備完了です。


何時でも誰でもどんとこいです。


と思っていた時期が私にもありました。


人が、多いです。たった一日、それだけの営業で噂が噂を呼び沢山のお客さんを呼び寄せていました。店が開店して数分で店内には五、六人くらいの人がいました。いろんな人の目にも留まっていますし順調すぎます。売り上げはこの前の二倍から三倍は見込めるでしょう。


気のせいかもしれませんが、遠くから他のパン屋さんが視察に来ているように見えます。視察に来たはずなのに私をうっとりとした目で見ているのは気のせいでしょう。おっさんのうっとりした目とか需要無いですしね。しね。大事なことなので二回言いました。別にこの世から退場して欲しいわけではないです。


あ、アベルさんが歩いていますね。数人の女の子が周りでキャーキャー言いながらついて回っています。取り合えず全員呪ましょう。得意ですからねこういうの。あの取り巻き達にはアベルさんと一緒に居るとよそ見して見失う呪をかけてあげました。


これでアベルさんは開放されますね。都合よく走ってくれたらすぐにでも皆アベルさんを見失うでしょう。


お、アベルさんが若干速足でこっちに歩いて来ています。これで大体の奴は振り切ったでしょう。というかこっちっていうか、私を目指して歩いていません?気のせいでしょうか?こっち方面に歩いているだけじゃなくて視線が私にあるような気がします。


考えすぎですかね。自意識過剰だったかもしれません。


違いました。普通に私を目的地にしています。


「昨日ぶり、ミフィア。バイトしてるんだ。」


キマシタ!勝った!今日の幸運はここで使い果たしてしまったようです。取り巻き数名はアベルさんを探してきょろきょろしています。ここで追加で呪い『アベルさんを見逃したら次補足するのは三十分経過しないと不可能』を追加します。


これで三十分は確実に平穏です。


「アベルさんは買い物ですか?」


「ああ、僕の事はアベルって呼んでくれていいよ。同い年なのに敬語とかさん付けとかはむず痒いしね。」


ああ、凄くいいです。アベルと呼んでいいなんてかなり進歩しました。会って数日しかたっていませんがね。敬語・・・ですか?もうこれが普段使いの話し方になっているので強制は難しですね・・・。


「じゃあ、アベルって呼びますね!でも敬語は多分一生直らないんで勘弁してください。」


「あ、皆にも敬語で話していたりするんだ。皆僕には敬語を使うからちょっと気になっただけだよ。」


「へえ、やっぱりアベルさんはお金持ちの一家なんですね。執事が居た時点で気付くべきでしたけど。あ!でも知ってますよ。皆の言動が怪しくて聞き耳を立てていたんですけど、アベルさんは貴族の中でもかなり位が高いんですよね!」


そう言うとアベルさんは複雑そうな顔をしました。なんでしょうか・・・まだ裏がありそうですね。


「まあ、それ以上の事は詮索しないでくれると嬉しいかな。僕を貴族だと知っても態度が変わらなかったミフィアには感服するけど、知ったら否が応にも態度を変えなくちゃいけなくなるしね。複雑な立場なんだよ。」


複雑ですか。まあそんなところでしょうね。誰も教えてくれませんもん。私がそれを聞くと不都合があるんでしょうね。


そう考えるとアンヘリカさんの好感度が上がってきた気がします。私のためを思ってしてくれた行動なら納得します。出来なくても攻めることは絶対にしたくありませんしね。


ただ、嘘はつかないで欲しいです。


アベルさんは隠し事の為に嘘を言わないタイプなんですね。私的には嬉しい限りなんですか社会に出たら辛そうです。改善しておいた方がいいと思いますが・・・。


「アベル、そういう時は手っ取り早い嘘でもついてごまかしたほうがいいですよ。じゃないと後々苦労しますから。」


私の忠告があまり心に響かなかったのか、アベルは笑いながらこっちを見ます。む、酷いですね。


「ミフィアは嘘に対して拒絶反応が出るだろ?そうなってほしくないんだ。だからミフィアには嘘はつかないよ。」


『は』って言いましたよ!ミフィアに『は』って言いましたよ!他の人にはそういう事を言うかもしれないけど私には言わないって言ってくれましたよ!


おっと、熱くまり過ぎましたね。やはりアベルさんは紳士です。あの兄と遺伝子情報が一緒とは思えません。しかし、アベルさんの観察眼は凄いですね。私がアンヘリカさんに嘘をつかれた時の表情の変化を見逃さなかったとは。


「それは・・・とっても嬉しいです。ありがとうございます。」


上目遣いでそう言ってみます。私は同年代でも背の低い方なのでバッチリ決まりました。流石私あざとい。


「え、あ、うん。えっと、えーと、そう、ミフィアが少しでも楽になったら嬉しいよ。」


私の攻撃に結構動揺してくれています。パラメーターが2くらい上がりましたかね?この調子でアベルさんにアプローチを・・・おっと、今は店番の途中でしたね。自重しましょう。


「それはそうと、パン買っていきますか?店番なので一応宣伝しますけど、結構種類があっていろんな味や触感が楽しめますよ。いくつか私が考案したパンもこっそり混ぜているのでよかったら見たくださいね。」


と、一応店番としての仕事はしておきます。


「それでは、仕事もしましたし、雑談の続きでもしましょうか。」


「いやいや・・・今は空いているけどお客さんがいつ来るか分からないんだからちゃんと待機しておこうよ。」


むう正論。


「ここで買い物をするのも目的の一つだったから少しだったら話は出来ると思うよ。・・・にしても凄いね。一日で評判がこっちまで来たんだ。美味しいパン屋があるってね。あるのは知っていたんだけど店主さんが強面で来にくかったんだよね。」


ほうほう。味は美味しいけど店主さんが怖いせいでここに入れないということでしょうか。仏頂面も合わさって怖さ百倍です。


「最近は話しやすい店員がバイトしてるって聞いたんだけどまさかミフィアだったとはね。君に会いたいがためにここに来る常連も出来そうだよ。」


そうですか。それは嬉しいのやら気持ち悪いのやら複雑ですね。近くのパン屋のおっさんが恍惚な瞳でハアハアしながら入店したらつまみ出して出禁にします。


それにしても、アベルさんは本当にカッコいいですね。




アベル視点


うん。ミフィア可愛い。


いやまあ、会った瞬間ひとめぼれだった。


取り合えずこのことは僕の胸の中にしまっている。なぜかと言うと、そんなこと言ったらませたガキと思われてしまうし、第一ばれたら僕もミフィアもタダじゃすまない。


でもね?僕だって前世の前例を含めたらもう二十歳超えているわけだし恋も仕方ないと思う。ロリコンか!と言われそうだが気にしない。前世でもロリコンではなかったはずだが・・・恐らく体に引っ張られてストライクゾーンも下がってるんだと思う。今八歳だから下は六歳、上は十二歳くらいまでだろうか?


つまり同年代がいいということなのだろう。


今日も起きてからずっとミフィアの事を考えている気がするが良しとしよう。


今日はパン屋に行ってみよう。仕入れた情報によるとそこでバイトをしはじめた店員は頭に虎柄の猫を乗せているそうだ。


うん。ミフィアだ。


ということなので準備をする。


実は王族だったりするので外に出るだけでも大義名分や護衛が必要になる。


というか、僕が王族だってことに気付かないのは本当にすごい。


ミフィアにはフルネームで名乗ったはずなんだが、なぜ気付かないのだろう?アベル・フォレストア。名前を知らなかったとしてもフォレストアって苗字だけで分かるものじゃないのか?この国の名前フォレストア王国だよな?


一応使用人に聞いてみたが合っていたようだ。


僕の記憶が戻ったのはつい最近、具体的には旅行に行って馬車から放り出された時に思い出した。頭を思いっきりぶつけたみたいで、後遺症が無かった事が不幸中の幸いだそうな。


それで、いくつかの領地を回って悪い貴族を断罪してを繰り返し、入学試験に間に合うように帰ろうとしたら方向を完全に間違うという事態に陥ってしまった。


そこで登場したのはミフィアだったたというわけだ。記憶が戻ってすぐに美少女?美幼女?に会えて幸運を使い切ったかもしれない。


爺と一緒に城下町に出てみると沢山の女の子が群がってきた。


おう・・・そう言えば三男とはいえ王子だもんな。そりゃ人も集まるってものだ。


女の子と会話を合わせながら目的地に移動しよう。・・・そう思っていたんだが思ったより歩く速度が遅い。さっさと歩けばいいのになんでこんなにゆっくり歩くんだ・・・。


気が付けばもうパン屋の前に到着してた。遠くから観察していると目が合った気がする。気のせいか?


取り合えずミフィアのもとへ移動しよう。


・・・?取り巻きの女の子が全員ついてこない?なんでだろうか。気にせず振り切っておこう。


「昨日ぶり、ミフィア。バイトしてるんだ。」


知ってたけどな。いや、ストーカーじゃないぞ?この世界はその辺結構緩いけど俺は絶対にそんなことしないからな。


「アベルさんは買い物ですか?」


・・・さん付けで呼ばれるとなんか距離を取られているみたいで悲しいな。


「ああ、僕の事はアベルって呼んでくれていいよ。同い年なのに敬語とかさん付けとかはむず痒いしね。」


「じゃあ、アベルって呼びますね!でも敬語は多分一生直らないんで勘弁してください。」


早速新情報。僕がお金持ちだから謙っていたわけではなく、普段からこんな感じの礼儀正しい感じだったようだ。日本だったとしてもかなりポイント高いぞ。出来過ぎている・・・。


「あ、皆にも敬語で話していたりするんだ。皆僕には敬語を使うからちょっと気になっただけだよ。」


「へえ、やっぱりアベルさんはお金持ちの一家なんですね。執事が居た時点で気付くべきでしたけど。あ!でも知ってますよ。皆の言動が怪しくて聞き耳を立てていたんですけど、アベルさんは貴族の中でもかなり位が高いんですよね!」


うおぅ・・・ミフィア心臓強いな・・・。貴族だって気付いていたとしても態度が変わらないなんてあんまりないのにな。旅の途中、何度もそういう場面があったな。僕のことを貴族だと気付いて敬語になったり謙ったりするの。


しかしまあ、王族だとばれたら流石に態度が変わるだろう。ミフィアにそんな態度取られたらショックで引き籠ってしまうかもしれん。


「まあ、それ以上の事は詮索しないでくれると嬉しいかな。僕を貴族だと知っても態度が変わらなかったミフィアには感服するけど、知ったら否が応にも態度を変えなくちゃいけなくなるしね。複雑な立場なんだよ。」


そういうとミフィアは何故か不安そうな、心配するような顔をしてきた。


「アベル、そういう時は手っ取り早い嘘でもついてごまかしたほうがいいですよ。じゃないと後々苦労しますから。」


ああ成程。将来とかを心配してくれたのかな?それなら僕の嫁になってくれるととても嬉しげふんげふん。

それにしてもミフィアからそんな言葉が出たことに驚きだ。何せ、嘘をつかれた時の顔が尋常じゃなく嫌そうな顔だったはずだ。


「ミフィアは嘘に対して拒絶反応が出るだろ?そうなってほしくないんだ。だからミフィアには嘘はつかないよ。」


そう言うとミフィアは嬉しそうな顔をしてくれた。良かった。信用を勝ち取ることができたようだ。


「それは・・・とっても嬉しいです。ありがとうございます。」


ぐあ!!ミフィアが上目遣い!だめだ破壊力が高すぎる。抱き着いて愛でた後に自室に持ち帰っちゃダメかな?・・・普通に犯罪だったな。王子だからもみ消せるけどそういうのはダメだ。日本で培った常識を捨て生きていこうとは到底思えない。


だがどうする・・・この衝動をどうにかせねば極悪貴族の仲間入りだ!衝動を心に留めておいてクールに返事するのだ!焦らず、確実に!


「え、あ、うん。えっと、えーと、そう、ミフィアが少しでも楽になったら嬉しいよ。」


焦って確実にやっちまった。


「それはそうと、パン買っていきますか?店番なので一応宣伝しますけど、結構種類があっていろんな味や触感が楽しめますよ。いくつか私が考案したパンもこっそり混ぜているのでよかったら見たくださいね。」


流された・・・。結構悲しい。


「それでは、仕事もしましたし、雑談の続きでもしましょうか。」


そんなもので仕事になるのか?・・・と思ったけど今は店内に人はいないようだ。フワフワしてるように見えて結構しっかりしてるんだな。まあ、一応否定はしておこう。


「いやいや・・・今は空いているけどお客さんがいつ来るか分からないんだからちゃんと待機しておこうよ。」


あれま、若干不機嫌になった気がする。取り合えず助け船を流しておこう。


「ここで買い物をするのも目的の一つだったから少しだったら話は出来ると思うよ。・・・にしても凄いね。一日で評判がこっちまで来たんだ。美味しいパン屋があるってね。あるのは知っていたんだけど店主さんが強面で来にくかったんだよね。」


俺はパン屋の事さえ知らなかったけどな。記憶が戻ってあまりたっていないから仕方ないと言えば仕方ないのだが。


「最近は話しやすい店員がバイトしてるって聞いたんだけどまさかミフィアだったとはね。君に会いたいがためにここに来る常連も出来そうだよ。」


個人的には嬉しいのやら気持ち悪いのやら複雑なんだけどな。近くのパン屋のおっさんが恍惚な瞳でハアハアしながら来店していたら権力使って出禁にするぞ。


それにしても、ミフィアは本当に可愛いな。


・・・聞かれてたら変態扱いされそうだ。




とある王国の王都周辺。


そこには数えきれないほどの三級、準二級の魔獣が出現した。


魔獣とは獣の体内の魔力が突発的に変異し、結晶化した存在『魔石』が宿ることによって出現する。三級はベテランがやっとの思いで倒せるレベル、準二級は一人で倒せるのならばそれは人間の領域ではないとされている。


数値にした方が分かりやすいだろうから記載しておく。


五級 攻撃力1000 守備力1100

四級 攻撃力3500 守備力4000

三級 攻撃力6100 守備力6400

準二級 攻撃力10200 守備力10000

二級 攻撃力16000 守備力10100

準一級 攻撃力23000 守備力10500

一級 攻撃力30000-100000 守備力12000

超級 攻撃力100000-2000000 守備力 不確定

絶級 攻撃力2000000~ 守備力 不確定


一般人 攻撃力10-300 守備力10-300

中堅 攻撃力500-1500 守備力500-1500

ベテラン 攻撃力2000-5000 守備力2000-5000

王国騎士 攻撃力6000-9000 守備力6000-9000

王国最強 攻撃力 基礎 165 総合 16000 守備力 基礎 110 総合 11000


この国では、最強と唄われる者ですらやっと準二級を一人で倒せる程度なのだ。数値は数値でしかないと言われ、数値で絶望的な差があっても器量で上回ることも可能ではある。しかし、それは差が千あるか無いかくらいでの話である。


ここに三級、準二級の群れをどうにかできる者なのど存在しない。


「おらぁッ!!」


一人の兵士が魔獣に剣を振る。剣は直撃し、魔獣の動きを鈍らせた。次の一撃で仕留めれる。その確信があり、次は確実にと集中して隙を探す。しかし、その攻防は僅か五秒で終了する。


「ぎびあああぁっぁぁあぁっ」


とても生物とは思えない叫びをあげながら魔獣が接近する。兵士の後ろ・・から。


兵士は突然乱入してきた魔獣に下半身を食いちぎられ、上半身のみで宙を舞う。宙を、と言っても横に弾き飛ばされたので過ぎに着地し、二回、三回とバウンドする。


上半身は痣だらけ、下半身は存在せず、大量の血が流れている。すぐに死に至るだろう。


しかし魔獣は見逃さない。


「やめろ・・・こっちに来るなァァッッ!!!」


魔獣は突然変異により異常発達した大きい唇をねっちゅねっちゅ言わせながらこちらに近づいてくる。戦士は先ほどまでの凛々しい姿はなく、涙と鼻水でクチャグチャな顔をしていた。


戦士の前でぴたりと止まり、口を開ける。デモンストレーションだろうか。熊さえも丸呑みに出来そうな口を見て絶望し、嫌悪感で吐き気を催す。全長一メートル強の豚のような生物の口が三メートル、四メートルと開くのを見て正気を保てる者など、居はしない。


「ぎぴぐぅ?」


その魔獣は楽しむかのようにゆっくりと、ゆっくりと口を近づける。戦士が脱力したその時、


「大丈夫か!」


横から戦友が助けに来てくれた。一撃を入れて魔獣は口を止めた。


「お前は下がってろ。後は任せるんだ。」


そう言って戦友は戦士を視界から外し、前を見る。そこには、


六メートルに及ぶ大きな口があった。


「は?」


そのまま、戦友は後ろの戦士ごと食べられた。



この国の名前はフォレストア。


メイルのいる王都の近くでの出来事だった。

因みにアベル君はチート能力を持っています。

詳細は後程ですがね。

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