005
だよな、俺動けないんだよな。
世界を見て回るにも動けないんじゃ意味がない。大人しくベッドに……
「そう言えば……アム……はベッドなの?いや、スマホの方なのか?」
と、質問したところで、先程の知識の共有だか情報の受け渡しだかの頭を締めつけるような酷い頭痛を思い出し、
「あっ!で、出来れば頭に直接はやめて欲しい!……のですが」
〈……では音声で返答します。私はタケルの願いに寄って産み出された存在です。タケルの強いイメージによって形が形成されたので、どちらもアムです。〉
結構アバウトだな。
俺は寝る時は必ず枕元の上の宮台にスマホを充電しながら置いてる……そのイメージでそのままベッドが召喚されたと言う事なのだろうか。
「そ、そうなんだ……。」
〈はい。〉
「…………。」
さっきから少し気になっていたが、アムの言葉はなんだか冷たいと言うか機械的な返答である。
「あー召喚獣ってみんなそんな感じなのかな?」
〈みんなそんな感じ、とは?〉
「性格と言うか受け答えと言うか……」
冷たい返答だと距離を感じるし、なんか怒ってると思ってしまい居心地が悪い。
〈……そもそも召喚獣があまり数が多い訳では無いようです。召喚石自体も数が少なく、人工で作るにしても莫大な魔力が必要になるでしょう。〉
「え?そうなのか?」
召喚獣を召喚する事自体珍しいのか、あの宝石なんであんな崖に埋まってたんだろうか……
〈また、召喚獣を召喚する場合、争いでの戦力としてや権威を示す為に召喚する場合が多いので、強大な魔物の姿や伝説上の精霊や聖霊の姿をイメージします。〉
確かにゲームだと伝説上の存在や神話の存在なんかをバトルで召喚したりする。
〈なのでイメージの大元になっている、魔物の荒々しさや聖霊の厳かななイメージなどが付加され、召喚獣の自我が形成されます。〉
「あっ……」
〈アムの場合、ベッドという姿形の為、自我の形成が困難であり自我は現在模索中となっています。〉
「なんか、ごめん……。」
完全に俺のせいだった。
わざわざ日用品を召喚獣として召喚しようとする奴なんか居ないだろう。
〈なので先行取得した情報からスマホという自我の形成に役立ちそうな、なおかつ不自然ではない形でのコミュニケーションを取っています。〉
「先行取得?」
〈はい、ベッドとスマホに関する情報を一部、勝手に転写してしまいました。申し訳ありません。召喚主であるタケルの状況が急を要する状態でしたので。〉
「あ……いやまぁ、そこらへんは別に気にしないよ。」
確かに俺は死にかけてたし仕方が無いだろう。
それに俺もベッドなんかに召喚してしまって申し訳ない気持ちもある。
「そもそも召喚時のルールとかよく分からない訳だし。」
〈召喚時に必要な物は召喚者の血液、願い、そしてイメージとなります。〉
「な、なるほど……ちょっとスマホ手に取って見てもいいか?」
〈どうぞ。〉
アムがそう返事をしたので宮台の上に右手を伸ばして取ろうとすると、スマホがフワフワと浮いて俺の右手に収まる。
「うぉ……これも魔力って奴?」
〈はい。厳密には私の体の一部なので、ある程度の範囲であれば自由に動かせます。〉
「ま、マジか……すげぇな魔力。」
魔法に驚きつつ、手に取ったスマホを見てみると、それは間違いなく俺が使っていた機種だった。
しかしアプリの数が元より少ないような気がする。いつもやっていたゲームとアラーム、limeとブラウザとguurgurメール位である。
まぁそれくらいしか使ってなかったしな。
「そう言えばアムは召喚獣として、どんな力があるんだ?」
〈どんな力、ですか。では、スマホという形状を取っているのでタケルが理解しやすい形で表現します。〉
そうアムが告げるとゲームアプリのアイコンが枕の形をしたアイコンに変化していく。
アイコンの下には安眠アプリと書いてあった。
「あぁっ……無課金で頑張ってきたゲームが……」
〈表示されていただけで、実際ゲームができる訳ではありませんので……新しく表示されたアイコンをタップしてみて下さい。〉
アムに言われるがままに枕の形をしたアイコンをタップする。
すると今寝ているベッドをそのまま3Dにしたような画像が出てきた。
さらに下にスクロールして行くとステータスが表示されていた。
++召喚獣++
アム
++形式++
騎獣
++能力++
形状変化
性質吸収
伸縮
吸魔
吸魂
治療
安眠
++魔法++
水魔法
火魔法
雷魔法
闇魔法
睡眠魔法