004
「異世界って……嘘だろ……。」
いや、情報は理解出来る。しかし、与えられた知識とそれを信じることはまた別だ。
いきなり「貴方は異世界に来ました!」と言われても、「そうか!ここは異世界に違いない!」なんて思う奴はそうそう居ないだろう。
〈アムも、タケルの知識の一部を共有しているので推測が可能です。世界の名称の不一致や魔力が存在しない事から、タケルが居た場所はこの世界とは違う世界と推測できます。〉
あり得ない話だ。あり得ない話だけど、アムが与えてくれた情報によって、信じられないが理解出来てしまう。
これはドッキリや何かの話ではない、現実の話なのだ。
取り敢えず、アムから与えられた知識を頭の中で反芻してみる。
この世界はロウナードと言うらしい。
実際、大昔の人が大地と世界を区別出来ていなかったように、星と世界。宇宙と世界。をどう区別しているのかは分からないが、ロウナードという世界。
そして、驚くことにロウナードには魔法という現象が存在し、その現象を起こす源が魔力、魔素、マナ、など様々な呼ばれ方をしている。
また、ロウナードは元居た世界と同じく、人類が支配している世界だ。
人類は三種類に分類される。
厳密には三種族の中でさらに民族、氏族に別れているらしいが、大まかに分類されるのはこの三種族らしい。
一つ目はヒューマ。
ロウナードの中ではもっとも代表的であり、もっとも数が多い種族。身体的特徴はあまりなく、力も魔力も強い訳ではないが手先が器用で、大勢で集まって群を形成し暮らしている種族だ。
多分、俺が知っている人類に一番近いのはこれなのだろう。
二つ目はビーステューマ。
体の一部に獣のような身体的特徴を持ち、特技もその特徴ごとに違うらしい。大抵のビーステューマはヒューマよりも力は強いとされていて、ヒューマのように大規模では無いものの、小規模な氏族ごとに群れを形成して暮らしている場合が多く、統率力に優れている。
三つ目はエルビューマ。
情報はほとんど無いが、他の種族より魔力量が高く耳が長いのが特徴らしい。
それから、この世界には獣の他にモンスターと呼ばれる存在が居る。
地域によっては魔獣とも呼ばれていて、魔力による突然変異で生まれてきたもの、魔力によって獣が形状変化、存在変化したもの等がいて、体内に魔素を溜め込み結晶化している。
また、人が魔的な要因で形状変化、存在変化したものを魔人と言うらしい。
最後に召喚獣。
召喚石によって、完全に魔力から産み出された存在。大体は精霊や聖霊と言った概念生命体らしいが、アムもこの分類だそうだ……。
なんと言うか、まるでファンタジーだ。
ニートをしていた時に、web小説やアニメで同じような状況に陥る物語は、何度か読んだり見た記憶がある。
異世界に突然召喚されて冒険したり、英雄になったりしていくストーリーが大半だった。けどそれは創作物だからこそ楽しめるのであって、いざ自分がとなると話は別だ。
こんなの何処ぞともわからぬ外国に、突然放り出されたのと同じじゃないか。
信じられない、あり得ない。その言葉がぐるぐるぐるぐるあたまに浮かぶ。
いや、実際は信じたく無いだけのかも知れない。
平和な日本で、なに不自由なく怠惰に暮らして来た俺が、こんな場所で生きて行けるのか? だが……俺の最後の砦である実家の部屋は、この世界には存在しない……。
「こんな事……あるのかよ……。」
〈確かにタケルにとって信じられないことなのでしょう。 現状、アムも召喚石に蓄積された情報で判断する事しか出来ません。ならば、共にこの世界を見て回れば真実が見えてくるのでは、と提案します。〉
しかし、この世界が本当に異世界だとして、俺はどうすればいいんだ?
いや、どうするもなにも、現状で頼れれるのはアムしか居ないのだ。
ならばアムが言ったように、世界を見て回れば真実が見えてくるのだろうか。
そう、世界を見てまわ……ん?
……俺、動けないんですが……。
操作を間違って書きかけが消えてしまう事が多いです。
やはりスマホじゃダメなのか……。