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 「んぐうッッ……!がアッ……たす!……アッ………!!っ………!!……ひぃッッてぇ………!!」



 痛いクッソ痛いナンダコレふざけんな!

 誰だよこんな所に崖置いた奴マジで!しかもなんだよあの怪物すげぇ怖ぇえし痛いしなんなんだよぁあ!落ちた?崖から?

 なんでいきなり崖あるんだよ死ぬかと思った。本気で死ぬかと思った。……ぁあ痛い。





 痛みに悶絶しながら頭の中で呪詛を吐く。


 あの化け物がまだ上に居るかと思うと、痛みで叫びたくても大声を出すことも出来ない。



 「ふっ……ぐぅ……!か……ぁッ…………。」


 必死に声を抑えながら、じっとうごかず崖の下から上の様子を見ていたが、化け物は追って来ていないようだ。



 「ぐぅっ………!!っ痛ぅ!これ……絶対折れてるよなぁ……ぅう。」



 おっかなびっくり激痛の続く両の足を見てみると、あり得ない方向に曲がっていた。


 「うわぁ……。」



 ひん曲がっている自分の足とか、あまり見たくはない。

 

 

「ぅうっ痛ッてぇ……と言うか左腕もイってるかなコレは……。」




 上をみると結構な高さがある。

 あんな所から落ちたのか……。

 よく死ななかったな。


 途中で何回かバウンドしたしなぁと、段々冷静になってきた頭で考える。


 とにかく身体中が痛い。


 それに、現状はどう考えてもお先真っ暗だ。


 何処とも知らぬ森だか山のなかで両足骨折。


 おまけに一つ目の化け物が彷徨い歩いており、大声を出して助けを呼ぶことも出来ない。


 食べられそうな物を探して採ることも出来なければ、水場を探しに行く事も出来ない。


 この絶望をどう捉えるべきなのか。



 「これは……流石に詰んだんじゃないか……?落ちた時に死んでた方がマシだった……か……。」



 泣いた。もう25歳だとか構わすに普通に泣いた。

 だって誰がこんな最後を予想するよ? 


 「ぐっ……ちくしょう……俺が何したて言うんだよ……。」



 いや、何もしてなかったからか?

 真面目に働いてれば、こんな事にはならなかったのか?

 でも真面目に働いても良いこともなかったじゃねぇか。


 なんだよこれ……本当にどうすんだよ。なんも出来ねぇじゃん。


 そんな事を考えながら自分が落ちた崖を見ていると、崖の中程が崩れ何か光る物が落ちて来くるのが見えた。



 丁度、自分がバウンドしてぶつかった辺りだろうか?


 

 ゴッと言う鈍い音と共に衝撃が走り視界が揺れる。



 「あ痛ッで!ッ!」



 俺の頭に直撃した。

 動けないので落ちてくるそれを避ける事もできない。


 「ぐぅ……くっ。」


 本当に!いい加減に、しろよ!何したってんだ!そんなに俺が憎いか!



 頭を右手で押さえつけ、先程より若干短めの呪詛を頭の中で巡らせながら、落ちてきたソレに目を向ける。




 「これは……宝石?」


 


 表面に血が付いてしまっている。頭にぶつかった時に付着したのだろうか?


 手に取ってみたソレはダイヤの原石かとも思ったが、ダイヤだとしたらかなりデカイ。


 野球の球くらいの大きさはある。


 それに……反射によって光っているようにも見えるが、石自体が発光しているようにも見える。


 「売ったらかなり高そうなだな。」


 なんだよ。少しは良い事も起こるじゃないか。

 宝石の事なんて良くは知らないが、100万よりは高そうである。



 しかし今現在の自分の状態を思い返し、



 「あぁ……、でも動けないから意味ないのか。」



 せっかく高そうな宝石を見つけても、売りに行くことすら望み薄だ。



 ……そうだ!さっきの化け物にコレ差し出したら助けてくれないだろうか。


 

 ……いや無理だろうな。そもそも話が通じるかどうかも分からない。


 もう……いいや。もうなんか疲れた。なんもかんも面倒だ。



 このまま此処で動けず、何も出来ずに死ぬんだろうか……餓死?餓死とかキツそうだな……。


 だったら獣かさっきの化け物にでも喰われて……うわぁ……それはそれで嫌だな……。




 「はぁ……。」




 立て続けに起こるトラブルにより、もう何もかもが嫌になってそんな事を考えていた。





 「あーあ!どうせ寝転がって死ぬんなら、こんな硬い地面でじゃなくて……せめてベッドの上で寝ながら死にてぇな……。」



 一度は静まった涙が、また溢れてくる。



 「あぁあ………死にたくねぇ。」



 頭のなかで自宅のベッドを思い浮かべながらそう呟いた瞬間だった。


 手に持っていた宝石が光を放ち、心地よい脱力感と共に、俺は意識を手放した。




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