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001



 目が覚めた時、森の中に倒れていた。



 実際は山なのか森の中なのかよく分からないが、取り敢えず大自然の中に寝転がっていたのだ。





 俺は実家の自分の部屋のベッドで寝ていたはずだ。



 いつも通り昼まで寝て、起きたらインスタントのラーメンでも食べて、その後、無課金を貫いているアプリでも嗜もうかと思っていた。



 一年前に仕事を辞めてからは、ずっとそんな生活が続いていた。


 激務の癖に薄給で、夜中でもお構い無く呼び出しなのに代休も無し。


 そんな仕事をしてるうちに、彼女にも振られる始末だ。


 忙しくてあまり会えないのに金が無い。

 

 そんな仕事だから彼女にも振られるんだと自分に言い聞かせていたけど、実際自分がダメだから振られたのも薄々気付いてはいた。


 いや、今はそんな過去の回想はどうでもいいとして、だ。





 目が覚めた時は周囲全てが木に囲まれた森の中。

 


 

 訳が分からない。25歳にもなって泣きそうになった。


 自分がどうしてこんな場所にいるのか、何一つ見当が付かなかった。



 着ているのは部屋着にしていたロンTとスウェットのズボン。部屋で寝ていたことから、スマホも財布も何一つ持っていない。

 



 最初は親が俺を山に捨てたのかと考えた。

 仕事をやめてから、働きもせずだらだらと食っちゃ寝してゲームばかりしている俺。

 そんな駄目な息子に、とうとう堪忍袋の尾が切れて寝てる間に山に捨てたのかと。


 姥捨山ならぬニート捨て山である。


 ならばここは取り敢えず、動かずに待ったほうが良いかも知れない。


 親の頭が冷えた頃、やっぱり心配になって迎えに来てくれる可能性がもある。


 でも、もし親じゃなかったら? なら誘拐か? 俺を拐ってなんの得が?


 だが世の中には損得関係なく犯罪を犯すサイコパスなんて奴も居る。

 だとしたらそんな奴は、きっとまともじゃない。


 そもそも寝ている人間を全く起こさずにこんな森の中に運び出すのは可能なのか?


 複数犯の可能性もあるのか。

 

 しかし辺りを見回しても、俺を拐って来たヤツの姿が見当たらなかった。


 複数犯なら見張りの一人くらい置きそうな気もするが……。



 俺がまだ目を覚まさないと踏んで俺のそばから離れたのだろうか?

 ならば見張りがいない今のうちに逃げるべきだとも思う。

 

 突然の出来事による、混乱と恐怖で頭が回らない。


 結局どうして良いかも分からないまま、その場にとどまって体感で半日ほど過ぎた頃、ようやく俺は決心してその場から移動する事にした。




 靴がないので石などを踏まないように、慎重に歩きながら草木を掻き分けゆっくり進んでいく。


 気をつけて歩いてはいるものの、靴が無いと矢張り足が痛い。


 「寝る時に靴下履くタイプで良かった。」


 靴下だけでも十分足は痛いのだが、流石に素足よりはマシだろう。


 そんなことを考えながら、草と木しかない代わり映えしない森の中をある程度歩いていると、進行方向からもがさがさと草木を掻き分ける音が聞こえてきた。

 

 「ッ……。」



 突然の生き物の気配に心臓が跳び跳ねて、一瞬声が出そうになる。


 俺を拐った奴か? それとも熊?



 正直凄く怖い。



 しかし確認しないわけにも行かない。


 恐怖心を抑えながらそっと草を掻き分けて、覗いてみてゾッとした。


 見たこともないような怪物が前から歩いて来ているのだ。


 なんだあれ?!鬼?巨人?ビッグフット?

なんだか分からんがやべぇよ絶対やべぇよ……。



 熊のような巨大な体躯に頭から角がはえたソイツは、赤い大きな単眼で周囲をギョロギョロさせながらこちらに歩いて来ている。



 UMA?妖怪?マジで現実にあんなの居たの?アイツが俺を拐ったのか?いやいや家まで来て?本当にどーなってんだよ……。



 俺は混乱しながらも音をたてないように後退り、途中からなりふり構わず全力で走って逃げ出し______そして、



「あっ……え?」



________崖から落ちた。













単眼で角がはえててもザ〇ではないです。

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