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おじさん、女子高生になる  作者: 一宮 沙耶
第1章 若返り

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8/25

8話 裏金強奪

組織から次の仕事の指示が届く。

私はどんどん若返っていく。もう18歳ぐらいだと思う。

でも、組織は私の現状を知らないし、若返ってるなんて考えてもいないと思う。


今度は、衆議院議員から、裏金をいただくという指示だった。

三角 耕三という52歳の男性。専門分野は農業らしい。奥様とお嬢様がいる。

ターゲットと近い年齢の女性として私を選んだのだと思う。


そんなことできるのか不安だった。

でも、裏金は盗まれても表に出せないという。

男性だから女性には気を許すに違いないと言う。

不安でもやってみることにした。


まず、その議員が行きつけの赤坂にあるバーに行くことにする。

毎週、水曜日の夜にそのバーに来るらしい。

だから、来る少し前にカウンターで1人で飲んでいた。


シックで高級感あふれるカクテルバー。

ジャズの音が静かに流れる。

上品なワイシャツとベストを身に纏う高齢のマスターがミキシングカップを振る。


お客は、それなりの地位がある雰囲気の人ばかり。

若い女性1人でというのは浮いてしまう。

でも、議員にはすぐに目に留まるはず。


しかも、スリットが入った真っ赤なタイトドレスを着てきた。

スリットからは、スリムな私の素足が見える。

今日は真っ赤なハイヒールを履いている。

その議員も背が高いと聞いていたから、背を高く見せることに配慮はいらない。


カウンターでミモザを片手に、憂いを顔に滲ませる。

つい最近、失恋をして寂しいというように。

だれか、この心の穴を埋めて欲しいって。


そうすると、期待どおり、三角議員が声をかけてきた。


「お嬢さん、ご一緒していいですか?」

「ええ、どうぞ。でも、どうして私なんですか?」

「おきれいな女性が1人で寂しそうにしているのを放っておけないでしょう。大学生ですか? では、私のお酒もきたし、出会いに乾杯。」


私の肌を見て未成年ではないかと警戒する。

国会議員が未成年の女性と飲んでいたと悪い評判が立つのを恐れているのだと思う。

そんなリスクはないと、大卒の新入社員だと言っておこう。

店内は暗いし、メイクをしているから、すぐにはバレないはず。


「乾杯。私は、今年、大学を卒業して商社で新入社員をしています。おじさんは、何をされている方なんですか?」

「衆議院議員をしているんです。この赤坂は永田町が近くてよく来るんですよ。」

「お名前は?」

「三角 耕三といいます。」

「え〜っと、あ、先鋭議員とネットに出てますね。すごーい。議員さんて、初めて会うから何やっているかわかりませんけど、大変なんでしょうね。」

「そうなんですよ。世の中を良くするために、日々、活動しているというか・・・。」

「優秀なんですね。でも、奥様もいるんでしょう。こんなところで、私と一緒にいていいですか?」


少しいじめるような目つきで見上げる。

そのぐらいのアクセントがいい。


「大丈夫。別に、話しをしているだけでしょう。問題なんてないですよ。」

「ふ〜ん。英雄、色を好むって言いますしね。聞いてくれます? 私、最近まで社内恋愛していたんですけど、二股かけられていて、それで別の彼女の方を選ぶってふられちゃって、寂しいんです。」

「そりゃ、ひどいやつだね。」

「そうでしょう。本当にひどいやつなんです。まず、二股かけていたこと自体は許せないですよ。しかも、別の人を選ぶなんて。まあ、こちらを選んでも、二股かけていた段階で、お断りなんですけど。」

「あなたのような美しい人を選ばないなんて、信じられないけど。」


その議員がトイレで席を外したときに、眠り薬をお酒にいれておいた。

そして、帰ってきて、大いに盛り上がったと思ったときに、彼は眠ってしまう。


「先生、飲み過ぎですって。起きてくださいよ。だめみたい。マスター、お勘定で。」


お店の人にサポートもしてもらい、彼を一緒にタクシーに乗せた。

そして、一緒にホテルに向かう。


車の窓からは、光が煌々と見えるビル街を通り過ぎる。

下を見ると、私のスカートの上で議員が眠ってる。

可愛い坊やねと、頭を撫でる。


タクシーのドライバーはどう見てるのかしら。

浮気相手とホテルに向かう途中? 水商売の女性とのアフター?

まあ、どうでもいい。


新宿の高層ビルの光が見えてきた。

働き方改革なんて言われているけど、まだ、大勢がこんな深夜でも仕事を続ける。

そして、目の前に高級ホテルの車寄せが見えてくる。


車寄せでは、闇バイトの男性2人が待っている。

部屋を予約し、国会議員を部屋に入れるために。

部屋に入ると、闇バイトの男性には帰ってもらい、私は、バスローブに着替えた。


裸姿で寝てる彼の横で、ベットで寝ながら自撮りをする。

写真は、もちろん何かあった時に脅す材料として。

そして、ベットで眠りにつく。


朝日がホテルの窓から漏れてくる。

私は、まだ寝ている彼の顔を横で見守っていた。


「あ、起きたのね。昨日さ、先生、酔っちゃって、あんなに積極的に誘われたのは初めて。ホテルに私が来ないと死ぬとか言うんだもの。帰れなかったわ。でも、素敵な夜を過ごせた。先生、とてもお上手なんだもの。まだ、お若いのね。」

「私は、全く記憶がないが・・・。」

「そうなんですか。いやだ。あんなに積極的だったのに。また、会ってくださいね。朝ご飯、一緒に食べに行きますか?」

「いや、朝から会合があるから、これで失礼するよ。連絡先は、昨晩、聞いたね。また、連絡する。」

「待ってるわね。じゃあ。」


少し、失敗したという顔で出ていく。

でも、もう逃さない。


1週間後、深夜のバーカウンターには彼と私が座っていた。

私は真紅のカクテル、彼は、ロックのバーボン。


「今度は、コンドームを付けてね。子供ができて、奥様と泥沼なんて嫌だから。」

「それって、割り切った関係でいいということかな?」

「そうね。まだ結婚とか考える年齢でもないし、子供とかできても困る。時々、素敵な男性に抱かれて、それ以外は1人で自由きままに過ごすのが一番、楽でいい。また、先生みたいに、かっこよくて、夜もお上手な男性だったら、大満足だもの。」

「じゃあ、これからホテルに行こう。」

「行きましょう。楽しみだわ。」


今回の仕事を受けるときにピルで避妊することも考えた。

生理も楽になると聞いているし。

でも、それがどういう結果になるかわからない。


若返りが止まるかもしれない。

また、卵巣の機能が停止するかもしれない。

不安が大きくて、ピルを飲む勇気はなかった。


しかも、せっかく貰った卵巣と子宮。

その機能を止めるようなことは罰当たりのような気もした。

だから、コンドームでエッチしようと彼には伝えたの。


未だに男性に抱かれるのは嫌悪感を感じる。でも、これは仕事だし、少し慣れた気もする。

ただ、騙している男性との子供は避けなければという拒否感は残る。

彼も、家庭を壊すことは政治家としてダメージなのか、コンドームを付ける。


そういえば、男性の頃も女性とエッチすることにはあまり興味がなかった。

男性の頃は、精巣と卵巣が反発し合っていたのかも。

それで、異性への欲求を打ち消してエッチに興味がなかったのかもしれない。


私は、全く感じていないけど、大袈裟にあえぎ声を出してのけぞる。

そして、彼に抱きついてキスをし、耳元で囁く。


「ねえ、先生。最近は、どんな仕事しているの?」

「最近は、民自党の幹事長のもとで、パーティー券で獲得したお金の使い道を整理して、お金を配っているのが一番大変かな。エッチのすぐ後に、こんな固い会話でいいのか?」

「いいのよ。エッチするときも、こんなすごい仕事している人に抱かれているって思うだけで燃えるじゃない。」

「そんなもんかな。」

「そうなの。でも、パーティー券って、今、TVとかで騒がれている裏金とかいうやつよね。捕まらないでね。」

「大丈夫さ。総理も含めて、みんなが共犯なんだから捕まらない。警視総監もその金を使っているんだし。」


男性はおだてていればご機嫌で、なんでも話す。

議員でも、手のひらで転がすなんて簡単。


「そうなの? すごい世界ね。で、そのお金って、パーティーで集めたとすると現金なの? さすがに銀行振込とかだと、足がつくしね。」

「そう、現金が、議員会館の金庫に隠されている。足元暗しとは、よく言ったものだ。また、議員会館の方が渡しやすいし。海外視察したいと言われたら、その場で、ぽんと300万円を渡すという感じかな。」

「どのぐらいの金額があるの?」

「だいたい100億円ぐらいだと思う。」

「すごいわね。先生が盗んじゃおうなんて考えることはないの?」

「盗むことができないかというと、できるとは思うけど、そんな気はないよ。これは民自党が今後も続いていくために必要な経費だからね。」


いかに自分が大物なのかを自慢する。

そんな話しをしながら、目線は私のバストに向かう。


「そうなんだ。でも、さっき、盗めるといっていたけど、金庫の鍵とかは先生が持っているのよね。」

「そうだ。選挙のときに有権者に配るお金とか、野党を黙らせるための交渉時のお金とか、政治家が金を使う場面は日々あるから、しょっちゅう、そこから現金を出し、若手議員とかに私から配っているんだ。」

「100億円の管理をしているのか。すごいわ。私、すごい人と出会えて良かった。もう1回、これからしない?」

「そうだね。朝からする罪悪感というか、楽しいな。」


なんとなく分かっていたけど、政治家は本当に汚い。

私達の税金を不明瞭に使って、やりたい放題。

そんなやつは懲らしめるべきだし、お金は盗むんじゃなくて、返してもらっているだけ。


こんなやつを騙しても、何も悪いことはない。

前回の彼とは大違い。

むしろ、世の中のために貢献している。


さあ、大体の仕組みはわかった。

そして、その後の付き合いを通じて、オフィスに入るカード、鍵のありかもわかった。

今夜は、裏金を盗む。


組織とは、盗んだお金の1割を貰える約束。

でも、現金だと、重くてそんなに簡単に運べない。

せいぜい、キャリーケースを使うとして3億円ぐらいかしら。

なくなっても、すぐには気づかない程度。


私は、彼をホテルに誘い、お酒に睡眠薬を混ぜた。

いつもの通り楽しげな彼は、お酒を飲んで眠りにつく。

さあ、決行ね。


黒いジャージに着替え、キャリーケースとともにオフィスに侵入する。

外見から古びているかと思ったら、よくあるオフィスビル。

周りは暗く、廊下の下にある非常灯が不気味に光る。


政治家って、夜は料亭で会食とかしているのかしら。

この階には誰もいないみたい。


カードがあるので、予定通り金庫まで到着できた。

そして、鍵を使えば、金庫は難なく開くことができる。

さあ、現金をキャリーケースに詰めて早く退散しよう。

警備員が来る前に。


私は、オフィスの外に出て組織が用意したワゴン車に乗り込む。

そして、車の中で3,000万円を受け取り、それ以外のお金を引き渡した。

この子達もバイトで、自分が何をしているのかわからないのだと思う。


3,000万円、それでも重い。3Kgだもの。

大きめのカバンに入れてホテルに戻った。

眠っているうちに、カードと鍵を彼のカバンに戻さないと。


部屋に入った時、違和感を感じた。

なんだろう。そう、彼がソファーにいない。


その時だった。後ろから、手を掴まれ、壁に押し付けられる。

壁に強く押し付けられた頬が痛い。

後ろにひねられた腕は折れそう。


後ろから、これまで聞いたことがない、狂気に満ちた彼の声が聞こえた。

こんなに悪どい男性だったのかしら。紳士のように振る舞っていたのに。

まあ、私も人のことは言えないけど。


「なんか、おかしいと思っていたんだよな。裏金のことばかり聞くし。でも、今日、分かったよ。だいたい、お酒に薬を入れるなんて想定の範囲だ。眠ったふりをしていたんだよ。そうしたら、俺のカバンからカードと鍵を取り出し、部屋から出ていくじゃないか。裏金を盗んだんだろう。いくら盗んだんだ。」

「そんなことない。」

「嘘が下手だな。」


振り向かされた途端、私の頬は、いきなりすごい力でたたかれる。

その力で、床に叩きつけられる。口から血も出ている。

床にぶつかった頭は、強い痛みを感じる。


「まあ、持ち出す事ができる範囲だから3億円ぐらいか。」


さすがに、よく分かっている。


「その金はどうした。俺によこせ。俺も金が必要だったんだよ。だから、騙されたふりして、お前に盗ませたんだ。俺でも盗めるが、俺がやったとすぐにバレちゃうだろう。その金はおまえが盗み、捕まるが、金の行方はわからないまま。いいシナリオだろう。さあ、金を出せ。」

「もう、組織の人に渡したから、持っていないの。」


口の中で血が出てしゃべりにくい。

彼の目はギラつき、口元は目から想像ができない程にやけている。


「だったら、組織に連絡しろ。金を渡さなければ、警視庁とともに、お前の組織を壊滅させるからなって。」

「そんなことしたら、私、組織に殺される。」

「いいじゃないか。犯人は殺されて、お金の行方はわからない。よくできたシナリオだ。」


床に横たわる私のお腹は、勢いよく蹴飛ばされる。

女性ホルモンで筋肉も落ち、昔のように抵抗する力はない。

痛い。もう動けない。


「さあ、連絡しろ。次、お前を蹴っ飛ばしたら、お前は生きてられるか分からないぞ。こんなに血がでてるし。」


その時だった。部屋のドアが開き、警察官が突入してきた。


「婦女暴行の現行犯で逮捕する。」

「手を離せ。俺を誰だと思っているんだ。国会議員だぞ。」

「話しは後で聞く。仮に国会議員でも、婦女暴行の現行犯だ。署に来い。」

「お嬢さん、大丈夫ですか。救急車を呼びますね。」

「いえ、こんな姿は見られたくないので、救急車はいいです。なんとか1人で帰れます。」

「本当に大丈夫ですか? 血だらけじゃないですか。」

「ええ。そういえば、あの警察官の方、さっきからここの映像を取っていますけど、公開されるんですか。私が性暴行を受けたなんて公表されたくないんですが・・・。」

「大丈夫です。これは証拠として使うだけで、一般の方に公開とかしませんので。」

「わかりました。」


遅いじゃないの。

こんなこともあろうかと、組織に、警察が突入できるように頼んでいた。

私が、このボタンを押したらすぐに。


ああ、痛い。

でも、さすがに、病院にはいけない。

戸籍がみつかり、62歳とか言われても困るし。


女性になって、男性の力には敵わないことを実感する。

女性になり、何でもできると思い上がっていたけど、デメリットもあった。

これから、慎重に行動し、自分の体を守らないと。

いえ、どちらかというと、男性を見ると恐怖を感じている自分がいる。


服は黒いジャージだから目立たないけど、血も多く出た。

まずは整形手術をした先生のところに行こう。

そして、しばらくは静養しないと。せっかく貰ったこの体だから。


真っ青になった頬を手で隠しながら、暗闇に消えていった。

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